夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
91 / 100
第2章

第29話 獣人の目的地

しおりを挟む
幌馬車に向かって歩きながら、狼の人ウルフェン達に何となく話をしてみた。

「今更かも知れないが、あんたら獣人って街に普通に入れるものなのか?」

「我は…郷から…出たことは…ない…」
「我も…これが…初めてだ…」

そりゃそうか…兎の人ラビディア達は、村ごと襲われて連れてこられたみたいだし、そんな彼女達が違法奴隷として流通しているくらいだ。
人種以外には、この国は住みづらいだろうことは想像出来てしまう…

「それなら、行く当てはあるのか?」

「無い…だが…冒険者になるため…ギルドに行ってみようと…思う。」
「我も…兄者と…同じ。」

彼らの言葉に、最初にあったような戸惑いや悲壮感は感じられ無かった。
…今更彼等のやる気に水を差すのは、流石にためらわれるから、これ以上聞かないほうがよさそうだ…

(ナビさん。獣人が暮らしやすい国ってないのか?)

『回答提示。ここから西に、住民のほとんどが獣人種や亜人種で構成された国、[ヒースロード]があります。』

このままだと暗くなりそうだったので、ナビさんに獣人の国がないかを聞いてみたのだが、普通にあるらしい。

「あのさ、ヒースロードって国は知ってるか?」

「…知らぬ…」
「我も…知らぬ…」

狼の人ウルフェン達はお互いの顔を見合わせて、知らないと言った。
村に引きこもって居たみたいだから、世界のことを知らなくてもおかしなことじゃないが、そんなことでこの先大丈夫なのか心配になる。

「ここから西、向こうの方角にある国なんだけど、獣人達の国らしくてな…知ってたらと思ったんだが…」

「…そのような…誠なのか?」
「獣人の…国…」

(ナビさん。その国まで、どの位かかるんだ?)

『回答提示。マスターの歩行速度を基準に算出すると、2か月から3ヶ月程度かかります。』

随分遠い…のか?
徒歩でだから想像つかないけど、3ヶ月歩きで旅するとか、俺には無理だな…

「少し遠いみたいだし、別の国に行くことになるけど、目的地がないなら、行ってみたらどうかと思ったんだけど…」

この国にいても、また奴隷にされるかも知れないし、差別されているなら何をされるか分かったものじゃないしな、自分達の仲間?がいる国に行った方がいいだろう。

「…であるか…我は…そこに行く。」
「我も…行く。」

狼の人ウルフェン達は、あまり考えた風もなく、俺の提案を飲んだ。
少しは疑った方がいいと思うが、それは余計なお世話なんだろうな。

(ナビさん。ヒースロードって国までこいつらが行くには、何が必要だ?)

俺の提案だしね、少しは助けてあげないとって考えて、ナビさんに必要なものを聞く。
渡せるものなら渡してあげるつもりだ。

『情報提示。途中で野営するための結界石。魔物モンスターに対抗するための武器防具。最寄りの集落までの食糧。道中の集落で食糧を買うための金子。これらが必要と判断します。』

ふむ…結界石ってのは知らないが、他は多分大丈夫だな。

「そういえば、剣とか槍とか、得意な武器ってあるのか?」

何か得意な武器があるなら、それに近いものの方がいいだろうから聞いてみた。
ちらっとみただけだけど、幌馬車の中には剣なんかの武具もあったと思うから、ある程度は聞けるだろうしね。

「我は…この牙と爪が…武器だ。」
「我も…そうだ。」

そりゃ狼だからな。
でも、そうじゃない…

「いや、剣とかは?使えないのか?」

「郷では…物を持つのは…弱者だと…教えられた…」
「我らは…弱者では…ない…」

(ナビさん。こんなこと言ってるが、本当に武器が必要なのか?)

『情報提示。脅威度C未満であれば、各個体の身体能力のみで対処可能ですが、それ以上の相手に対処するには不十分です。』

(何を持たせればいいんだ?多分剣も槍も使ったことがないぞ?)

『情報提示。狼獣人ウルフェンに適した装備として、鋼鉄製の牙、鉄爪、狼靴等があります。これらであれば、問題なく扱えると判断します。』

そう都合よくあるのかね…?
ま、あったら渡すくらいでいいかな…

そんなことをナビさんと話しているうちに、幌馬車の側に辿り着いてしまった。
そもそもそんなに遠くないから当たり前なのだが、もう少し時間が欲しかったかも知れない。

「それじゃ荷物を出すから、少しの間ここで待っててくれ。」

「「承知した。」」

狼の人ウルフェン達を外で待たせて、俺は幌馬車の中に乗り込む。
そこでは、先に戻っていた優子マメが荷物を開けながら確認していた。

「あ、ぼん。…え?なんでびしょ濡れになってんの?」

俺に気がついた優子マメが、なんで濡れているのか聞いてきた。

「エルフが魔法使って雨を降らせたんだよ…それで、何か目ぼしいものはあった?」

着替えるために、ストレージリングから乾いた服とバスタオルを取り出し、幌馬車の中で着替えながら、何かあったか聞いてみる。

どうせ俺も見るから分かるんだけど、一応ね。

「今のところ特にはないかな。食べ物は保存食ばっかりだったし…あ、剣とか鎧とかもあったけど、ぼん使う?」

濡れた体を拭きながら、優子マメと会話していると、思った通り武具も積んでいたことが分かった。

目当てのものがあるかは分からないけどね…

そんな時、荷物の奥からシーホが顔を出した。

「に…ちょ、なんで脱いでるんですか!?」

いつの間にか、シーホやぬいぐるみ達も合流して幌馬車の中を見ていたようで、奥から顔を出したシーホに裸を見られた上に怒られてしまった。

これに関しては俺は悪くない。
いるならもっと早くに声をかけてくれよ…
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...