夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第36話 新たな主人

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「儂には…儂には無理じゃ…」

ドワーフは青い顔をして後退りしてしまう。
まぁ、これは予想通りの反応だから別にいいんだけどね。

ま、予想通り過ぎて面白くもないけど…

「そうか。ならそこでジッとしていろ。まだ文句を言うつもりなら、お前にも首輪をはめる…分かったな?」

顔色がさらに悪くなったドワーフは、焦った様に首を縦に振っている。
どこまでも面白みのない…

毒蔦で簀巻きになっているエルフ達に視線を移すと、どうにか逃げようとしているのか、全員体を捩ってモゾモゾと動いていた。

そんなことをしても、棘が刺さって余計に怪我するだけなんだから、無駄なことはやめておけばいいのにね…

解錠され左右に開いた全ての首輪から、はまったままになっていた鍵を抜き取り、最初にはめる首輪を1つ、適当に選んだ。
見た目は変わらないからどれでも変わらないからね。

そして、それをエルフにはめようと近づいて行って、ようやくあることに気がついた…

毒蔦の上から首輪を…無理なんじゃないか?

実際、目の前のエルフを見ても、蔦の隙間から金髪が覗いているからエルフだと分かるけど、見た目だけじゃ中に何が居るのかなんて分からない。

(ナビさん。首元だけ毒蔦を外すって出来るのか?)

『回答提示。可能です。収納箇所の範囲指定を行いますか?』

(そうだな、3人共に範囲指定をしてもらえるか?)

どうしようかとナビさんに相談してみると、簡単に出来ると言われてしまう。
つくづく万能だなと思うと同時に、頼りきりにならない様に気をつけようとも思った。
あまり頼りすぎると、何かあった時に、自分だけじゃ何もできなくなってしまうからね…

『完了報告。範囲指定が完了しました。』

ナビさんの万能感はさて置き、準備ができた様なので順番に毒蔦を引き剥がして、露出した首元に首輪を嵌めていく。

エルフもドワーフも、若干抵抗しようと暴れたが、簀巻き状態じゃ何も出来ないのと変わらない。
無事、全員の首に隷属の首輪スレイリングをはめ終え、暴れるものがやっといなくなった。

全員が大人しくなったことを確認し、毒蔦の拘束を解いていくのだが、全員全身に棘が刺さった傷だらけになっていて、少し気味が悪い…

「大人しくしとけって言ったのに…言うことを聞かないから怪我するんだぞ…?
まぁいいや…うさ耳達、ガル達を呼んできてもらえるか?」

「わ、分かった。」
「あ、ウチも行く。」

兎獣人ラビディア達が、馬車の方に走っていくのを見送って、改めてエルフ達に視線を移す。

「お前らは、自分の仕出かした事を少しは後悔するといい。」

「こ!ギャ!」

傷だらけのエルフがこちらを睨み、何かを言おうとした様だが、首輪の効果が発動し、バチっと放電した様な音と共に悲鳴を上げると、そのまま仰け反って倒れてしまう。

「言ったそばから…馬鹿なのか?」

一度解放された事で、気持ちが緩んでいるのだろう…
自分からその自由を手放したんだから、俺の知った事じゃないけどな。

「強き者よ…よ…これは?」

「エンキ!草の民よ、どうし…」

「森の者…ダメだ…気を失っている…」

奴隷エルフが気絶した直後、兎獣人ラビディア達が呼んだガル達がやって来るのだが、外したはずの首輪をつけたエルフ達を見て、質問してきた。
そして、後ろからついてきていたもう1人のエルフは、気絶する奴隷エルフを見て、崩れ落ちる様に気絶してしまった。
騒がれるよりは全然いいから、そのまま放置しておこう。

「出発する準備は出来たか?」

俺が聞くと、ガル達は顔を見合わせてから首を縦に降る。

「積み込みは…終わった。」
「いつでも…出れる。」

「そうか。それは結構なことだ。」

ガル達は、手早く作業を完了していた様で、いつでも出れると言ってくれる。
これは好都合だ。

「見ての通り、こいつらには一度外した隷属の首輪スレイリングをはめて、もう一度奴隷に落ちてもらった。
なんでとかどうしてとかって、時間の無駄でしかない質問はなしにしてくれ。」

「しかし…」

「おっと、やめてくれって言ったろ?」

俺がそう言うと、何か言いたげだったガル達も、それ以上口を開くことはなかった。
エルフ達と違い、やっぱり素直で好感が持てる。

「それでいい。で、こいつらなんだが、お前らに任せようと思ってるんだ。」

俺の言葉に、ガルとギルが首を傾げる。

「我等に…任せる?」
「強き者よ…どういう…」

「そのままの意味だ、この奴隷達3人は、煮るなり焼くなり、お前達の好きにしてくれ。」

「我等…森の民や…山の民の肉は…食わぬ…」

ガルが困惑気味に声を上げる。
食べて良いってことじゃないんだが、こちらにはそう言う言い回しは無いのかな?

「食えってことじゃ無いよ。言いたいのは、奴隷としてこき使うのも、どこかの街で売り捌くのも、好きに使って良いってことでだな…」

「ならば、強き者が…」

「俺はいらん。邪魔にしかならないからな。ほら。」

俺は、まだ困惑しているガルに向かって隷属の首輪スレイリングの鍵を投げる。
バラバラに飛んでしまった鍵を、器用に受け取っていくガルに、心の中で賞賛を送る。
この鍵を持っているものが、隷属の首輪スレイリングの操作権を持てる様なので、これでガルが奴隷達の主人になったということだ。

「これで、お前がこいつらの主人だ。返品はしてくれるなよ?」

俺が言うと、ガルの手の中に収まった鍵をギルも覗き込み、2人共が息を飲む。

俺からすると、これ以上考えるのが面倒だから、責任を押し付けただけなんだけどね…
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