夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
98 / 100
第2章

第36話 新たな主人

しおりを挟む
「儂には…儂には無理じゃ…」

ドワーフは青い顔をして後退りしてしまう。
まぁ、これは予想通りの反応だから別にいいんだけどね。

ま、予想通り過ぎて面白くもないけど…

「そうか。ならそこでジッとしていろ。まだ文句を言うつもりなら、お前にも首輪をはめる…分かったな?」

顔色がさらに悪くなったドワーフは、焦った様に首を縦に振っている。
どこまでも面白みのない…

毒蔦で簀巻きになっているエルフ達に視線を移すと、どうにか逃げようとしているのか、全員体を捩ってモゾモゾと動いていた。

そんなことをしても、棘が刺さって余計に怪我するだけなんだから、無駄なことはやめておけばいいのにね…

解錠され左右に開いた全ての首輪から、はまったままになっていた鍵を抜き取り、最初にはめる首輪を1つ、適当に選んだ。
見た目は変わらないからどれでも変わらないからね。

そして、それをエルフにはめようと近づいて行って、ようやくあることに気がついた…

毒蔦の上から首輪を…無理なんじゃないか?

実際、目の前のエルフを見ても、蔦の隙間から金髪が覗いているからエルフだと分かるけど、見た目だけじゃ中に何が居るのかなんて分からない。

(ナビさん。首元だけ毒蔦を外すって出来るのか?)

『回答提示。可能です。収納箇所の範囲指定を行いますか?』

(そうだな、3人共に範囲指定をしてもらえるか?)

どうしようかとナビさんに相談してみると、簡単に出来ると言われてしまう。
つくづく万能だなと思うと同時に、頼りきりにならない様に気をつけようとも思った。
あまり頼りすぎると、何かあった時に、自分だけじゃ何もできなくなってしまうからね…

『完了報告。範囲指定が完了しました。』

ナビさんの万能感はさて置き、準備ができた様なので順番に毒蔦を引き剥がして、露出した首元に首輪を嵌めていく。

エルフもドワーフも、若干抵抗しようと暴れたが、簀巻き状態じゃ何も出来ないのと変わらない。
無事、全員の首に隷属の首輪スレイリングをはめ終え、暴れるものがやっといなくなった。

全員が大人しくなったことを確認し、毒蔦の拘束を解いていくのだが、全員全身に棘が刺さった傷だらけになっていて、少し気味が悪い…

「大人しくしとけって言ったのに…言うことを聞かないから怪我するんだぞ…?
まぁいいや…うさ耳達、ガル達を呼んできてもらえるか?」

「わ、分かった。」
「あ、ウチも行く。」

兎獣人ラビディア達が、馬車の方に走っていくのを見送って、改めてエルフ達に視線を移す。

「お前らは、自分の仕出かした事を少しは後悔するといい。」

「こ!ギャ!」

傷だらけのエルフがこちらを睨み、何かを言おうとした様だが、首輪の効果が発動し、バチっと放電した様な音と共に悲鳴を上げると、そのまま仰け反って倒れてしまう。

「言ったそばから…馬鹿なのか?」

一度解放された事で、気持ちが緩んでいるのだろう…
自分からその自由を手放したんだから、俺の知った事じゃないけどな。

「強き者よ…よ…これは?」

「エンキ!草の民よ、どうし…」

「森の者…ダメだ…気を失っている…」

奴隷エルフが気絶した直後、兎獣人ラビディア達が呼んだガル達がやって来るのだが、外したはずの首輪をつけたエルフ達を見て、質問してきた。
そして、後ろからついてきていたもう1人のエルフは、気絶する奴隷エルフを見て、崩れ落ちる様に気絶してしまった。
騒がれるよりは全然いいから、そのまま放置しておこう。

「出発する準備は出来たか?」

俺が聞くと、ガル達は顔を見合わせてから首を縦に降る。

「積み込みは…終わった。」
「いつでも…出れる。」

「そうか。それは結構なことだ。」

ガル達は、手早く作業を完了していた様で、いつでも出れると言ってくれる。
これは好都合だ。

「見ての通り、こいつらには一度外した隷属の首輪スレイリングをはめて、もう一度奴隷に落ちてもらった。
なんでとかどうしてとかって、時間の無駄でしかない質問はなしにしてくれ。」

「しかし…」

「おっと、やめてくれって言ったろ?」

俺がそう言うと、何か言いたげだったガル達も、それ以上口を開くことはなかった。
エルフ達と違い、やっぱり素直で好感が持てる。

「それでいい。で、こいつらなんだが、お前らに任せようと思ってるんだ。」

俺の言葉に、ガルとギルが首を傾げる。

「我等に…任せる?」
「強き者よ…どういう…」

「そのままの意味だ、この奴隷達3人は、煮るなり焼くなり、お前達の好きにしてくれ。」

「我等…森の民や…山の民の肉は…食わぬ…」

ガルが困惑気味に声を上げる。
食べて良いってことじゃないんだが、こちらにはそう言う言い回しは無いのかな?

「食えってことじゃ無いよ。言いたいのは、奴隷としてこき使うのも、どこかの街で売り捌くのも、好きに使って良いってことでだな…」

「ならば、強き者が…」

「俺はいらん。邪魔にしかならないからな。ほら。」

俺は、まだ困惑しているガルに向かって隷属の首輪スレイリングの鍵を投げる。
バラバラに飛んでしまった鍵を、器用に受け取っていくガルに、心の中で賞賛を送る。
この鍵を持っているものが、隷属の首輪スレイリングの操作権を持てる様なので、これでガルが奴隷達の主人になったということだ。

「これで、お前がこいつらの主人だ。返品はしてくれるなよ?」

俺が言うと、ガルの手の中に収まった鍵をギルも覗き込み、2人共が息を飲む。

俺からすると、これ以上考えるのが面倒だから、責任を押し付けただけなんだけどね…
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...