私を必要とする世界

絢ねえ

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壊れた心

神様のおねがい

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目に、強烈な白い光を感じた。
ゆっくりと瞳を開く。
「まぶしぃ・・・」
目をぱちぱちと瞬く。だんだんと光に慣れてきた。
「ここ・・、どこ・・だ・・・ろ」
そこは、何にもない世界だった。いや、空間?
なんだ、この場所は。
「あっ、目が覚めた?」
えっ。
突然、全身に響くように声が聞こえた。
なになになに。何なのこれ。
「あー、大丈夫?心配しないで。ここは僕が作った場所なんだ」
意味が分からない。
「君、僕を呼んだろ。助けを求めてきただろ。だから、ここに喚んだんだ」
僕を呼んだ?助けを求めた?
「まぁ、いつもは無視するんだけどね。全部相手にしていたら僕が消滅しちゃうから。でも、君は死んでもいいってぐらいに追い詰められていたし、僕の言うことをなんでも聞いてくれるみたいだからね」
全く意味がわからない。
「これで分かったかな」
「わかんないわよっっ」
はぁはぁ。いきなり大きな声を出したからのどが痛んだ。
何なのこの声。
自分が誰なのかぐらいしっかり話しなさいよ。
「あー、ごめんごめん。伝わってなかったみたいだね。あんまりここで声を出さないほうがいいよ。君の体がここになじみすぎて世界に戻れなくなるからね」
どういう事?世界に戻れなくなる?
「一応、もしもに備えて君の喉を封印しておこう。僕は君の心が読めるからね。・・・よしっ」
は、喉を封印って何。って声が出ない。え、ええっ。
「ふふ、混乱してるね。でも、今君は話せないから無理に話そうとしない方がいいよ」
本当に何なんだこいつ。
「こいつってひどいな。君が呼んだんだよ。助けてってね。覚えてないのかな」
そういえば記憶がない。どういう事。思い出せるのが自分の名前だけなんだけど。
「ショックで一時的に記憶がとんだかな。・・・まぁいいや。じゃあ自己紹介、僕は神様だ」
・・・は。
「えーと、正確には名前はないから便宜上そう呼ばれている存在の一つだ。創造主とかにも当てはまるかな。僕は世界を管理するシステムで、生命を超越した存在だ。まぁ、それはどうでもいいけど。とりあえず神様って呼んで。君は神様を呼んだんだからね」
神様?
「そう。君はね、僕にお願いしたんだ。私を助けてって。まぁ、君は忘れちゃったみたいだけど。・・・でね、君はもう一つ僕に言ったんだ。なんでもいうことを聞くからって」
えっ。・・・なんでも。
「そーなんだよ。だから、僕は君の願いを叶える代わりに僕のお願いで働いてもらおうと思ったんだ。君のお願いと僕のお願いがいい感じにかみ合うんだよね」
・・・私のお願いってなんだっけ。
「君のお願いは無理して思い出さない方がいいよ。僕は嘘をつかない。ちゃんと君の願いはかなう」
何それ。
「いいから、いいから。じゃあ、僕のお願いを言うね」
神様の、お願い?・・・私の願いもかなうの?
「叶う、叶う。・・・僕のお願いはね。君に違う世界に旅立ってほしいんだ」
ち、違う世界?
「君にはね、その世界で僕の試練を与える。まぁ、厳密にいえば君の試練じゃないけど」
試練。
「そう、ある人をサポートしてもらう。だけど、君に教えるのは今はそれだけだ。ごめんね」
な、なんで謝るの。私になんか悪いことでもあんの。
「いや、たぶん大丈夫だけど。念のため。その時が来たらちゃんと君に伝えるよ」
その時とは?
「ちゃんとわかるから。君に行ってもらう世界は日本とは全然違う。その時までしっかり生き延びてほしい」
ええっ、そんなに危険なのっ。・・・ねぇ、日本って・・・何。
「知識まで消えちゃったの?うーん。あんまり君の記憶は思い出さない方がいいけど、知識はなー」
私の記憶・・・。
「君にいくつかプレゼントをあげる予定だったんだよね。だからその一つとして君の知識をもっと深くして授けてあげる。使い勝手がいいとは思えないけど・・・知識はないよりあった方がいいからね」
プレゼントに・・・知識?
「他のプレゼントは言語能力と・・・あとはお楽しみだよ」
ふーん。
「反応薄いね。面白くないなー。・・・あっ、もう時間が来た」
ん?時間・・・?
「ごめんね。もう君には別の世界に行ってもらわないといけない。また会おうねぇ」
私、・・・まだ返事してないよ。
「え、今更そんな事いう?もう行くしかないよ」
ただでさえも白くまぶしい世界がもっと明るくなっていく。
「ごめんね。本当はもっと言わなければいけないことがあるんだけど。まぁ、大丈夫でしょ、頑張って」
もう、光しか感じられない。
体の感覚が失われていく。
「あっ、声を戻すの忘れてた」
はぁっ。

意識が黒く染められた。
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