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2章
27話
しおりを挟む「大丈夫かな……雪霧さん」
霧本は緑原公園に広がる木々の陰から、烏丸と共にベンチに座る雪霧を見守る。
共に女が言っていた妖怪を待つという選択肢もあったのだが、彼女の意思もあり、少し離れた物陰から観察する事になった。相手に警戒心を与えない為と残りの命が少ない者に、複数人で尋ねるのは、体力的な懸念があったからだ。雪霧自身見た目は、肌は白いものの、健康的な容姿をしている。だが、ベンチに座るまでとても辛そうにしていた。体調の急変は無い、と言っていたものの、いつ倒れてもおかしくない程に疲弊しきっている。
「奴が決めた事だ。我らが指図するものではない」
人間の姿をした烏丸が、雪霧を見て、心無い言葉を放つ。彼女の事より、彼女について行ったコロの事が気になっているのか、手持ち無沙汰といった様子で苛立たしげに木に触れている手の指で、何度も叩く。
「いくらなんでも、冷たくない?」
雪霧から烏丸へと視線を移し、口を尖らせる。
烏丸の雪霧に対する態度がきつすぎると思う。人間の姿に近いからこそ、そのような態度になっていると聞いたが、以前は人間と行動を共にしていたとも言っていた。彼には、人間や妖怪の垣根を越える特別な存在が居たのだろう。
「ふんっ……雪女だからこそ、という訳ではない。奴の顔が気に入らん」
「それって、綺麗だから?」
「…………」
何も言わず、こちらを見据え、情けないと言わんばかりに首を左右に振る。
「え、なに……?」
「これだから子供は嫌いなのだ」
「えぇぇ……」
「我が奴を気に入らんのは――」
視線を外し、雪霧の方へ目を向けたところで、言葉が切れる。
怪訝な面持ちで目を細めさせ、それには驚愕の色さえ窺えた。
「どうしたの?」
「いつの間に来ていたのだ……?」
子供達が楽しんでいる姿を見るのはとても楽しく、幸せな気持ちにさせてくれる。だが、今となっては、それが途轍もない不安に駆られてしまう要因ともなってしまっている。
飢えに苦しんでいた子供達の生死。
最早、知る事も叶わない。あの時、陰陽道の者が自分を封印さえしなければ、この手で救う事が出来たのだ。邪魔をした陰陽道の者を許せない。自分があの場所で赴く事が出来なかった為に、死なせてしまっていたのなら、尚更封印した者を許せる筈がない。
思考を巡らせるにつれ、憤りが募らせていく。
すると、コロが『う……うー……』と苦しそうな声を上げる。
どうやら、無意識に腕に力を込めてしまっていたようで、彼女の体を酷く圧迫させてしまっていた。
「す、すまないっ!」
雪霧は慌てて込めていた力を緩め、彼女に謝罪する。
コロは小さく咳き込み、こちらを見上げた後、心配そうに腕を擦ってきた。
もう、諦めなければならないのだろう。封印された日から、この時代に降り立った日からその決意は、必然と訪れるものだったのだ。時の流れ程、覆す事も出来ない大きな問題だ。
「……諦めるのは辛いな」
言葉に出すと、思い詰める以上に心臓を握り潰されるのでないかと思う程に、酷く痛んだ。
諦めたくない。そう言いたいが、抗う事は最初から出来ない。
変えようのない、事実だ。
「すまない……佐吉、薫、史郎……」
「うー……」
コロが動かないという決まりを破り、こちらを振り返ると、胸に顔を埋めては体を震わせる。どうやら泣いている様だ。
――お前が泣く必要はないではないか。口に出そうとするが、喉を通らず、開閉させる事しか出来なかった。胸に張り詰めたものが、全身を浸食していき、どうしようもなく泣きたくなってしまった。
子供の前で泣いてはいけない。成人した者は、泣いた子供を導いてやらなければならないのだ。泣くな。泣いてしまっては、コロを慰める事が出来ない。
新たに圧し掛かるものに堪えられず、目から涙が溢れてきた。
「なにか、悲しい事があったか?」
突然、座っていたベンチの隣からしゃがれた老人の声が聞こえてきた。
頬を伝いそうになった涙を拭い、雪霧は慌てて隣に視線を向ける。
雪の様に染まった白髪をし、杖をついた老人。
「あ、あなたは……?」
すぐ傍に居たのに全く気付かなかった。妖怪の独特な気配が彼から感じない。ましてや、人間の気配すら感じない異質なものだった。まるで、この世の者ではないかの様な危うい存在だ。もしかすると、女が言っていた妖怪というのは彼の事なのだろうか。
「確認するという事は、気付かなかったようだな」
弛んだ瞼を引き上げ、こちらを横目に見てくる。その目は、どこか懐かしさを感じ、また一つ取っ掛かりが出来てしまった。
「あ、あぁ……」
「ふむ。もう一度聞こう。何か悲しい事があったか?」
先程問うてきた質問を、もう一度してくる妖怪に雪霧は俯き、泣き続けるコロの頭を撫でる。
「以前、仲良くしていた子供達が居たのだが、ある事が原因で会う事が出来なくなった……。子供達の安否を知りたいと願うが、それはもう叶わない。会う事すら出来ない今、諦めるしか――」
「佐吉、薫、小助、天次郎、ねめ……だろう?」
雪霧の言葉を遮り、妖怪は淡々とした様子で子供達の名を挙げていく。
最初の三人は口に出していたので仕方ない。だが、残りの二人の名は挙げていない。何故、彼は子供達の名を知っているのだ。子供達の名を知っているのは、村の者と山に住んでいた他の妖怪くらいだ。
「やはり、お前は……」
目を見開き、落としていた視線を再び彼に向ける。すると、妖怪は呆れた様子でため息を吐き、目を合わせてきた。その目は、呆れと僅かな怒りの二色に染まっていた。
「あれ程聞かされれば、嫌でも覚える。何処に行っていた、雪霧」
自分の名さえも言い当てる彼に眉を潜めさせる。
自分が知っている妖怪なのか? しかし、妖怪の気配を漂わせない妖怪を知り合いには居なかった。現代の妖怪の気配は薄いが、感じないという事はなかった。数百年の妖怪ならば、薄いという事はまず有り得ない筈。一体、どういう事なのだ。
「お前は……誰だ?」
「忘れたか、若い癖に忘れ癖か? ……山童だ」
「山童、なのか……? なんと……」
山童。河童が変異した妖怪と言われ、春先は再び河童に戻るという二面性を有している。集団で行動する事が多く、その通り道をオサキと呼ばれる。その道に家を建てると、彼らは怒りに病魔を住まわせると言われている。山中での怪異は天狗などの仕業とされているが、地方によっては、殆ど彼らが行っているとも言われている。
山の妖怪の中でも、良く会話していた妖怪の中の一体で、村であった事を彼に隅々まで話していた。話を聞いてはくれるが、興味を持った様子は見受けられず、空返事するのみ。人里に近い山に住んでいても、人間に対する関心は皆無に近かった。他の妖怪達は人間の、特に子供達の話を毎回楽しみにしてくれていたのだが、彼だけはそうはいかなかった。
「そんなお前が、何故ここにいる?」
「それはこっちの台詞だ。何故、あれから帰らなかった。それに、最後に見た時と変わらないのは何故だ。何があった」
「それは――」
雪霧が山に降りていた途中に陰陽道の者に遭遇し、封印されてしまった旨を伝えると、山童は顔を顰めさせ、小さく舌打ちした。
「お前も妖怪狩りにあったのか、間が悪い時に降りたな」
「妖怪狩り?」
「主に天狗を狙ったものだがな。お前が帰って来なくなった日から、あらゆる土地で天狗を含めた妖怪が姿を消したのだ。そうか……封印されていたのか」
顎に手を当て、苛立たし気に呟く。その様子を見る限り、自分達が知っている妖怪にも危害が及んだとみていいのかもしれない。仲が良かった妖怪が多かった為、そんな事があったとなれば、自分よりも彼は酷く傷付いただろう。
そして、一人になってしまった。
「……お前は、子供達がどうなったのか知っているのか?」
「あぁ、知っている」
「本当かっ!?」
諦めようとしていた時、一つの兆しが見つかった。知る術がないと思っていた。諦めなければならないと思っていた。それが、老いた古き友が知っているという奇跡が、目の前に。
雪霧は身を乗り出し、山童の両肩を力強く掴み、顔を近づけさせる。
「あの子達はどうなったのだっ!? 無事だったのかっ!? まさか、死んでしまったのでは……」
口から言葉が発せられる度に手に込められた力が強くなっていく。子供達の悲しい死を否定するが如く、山童の肩をきつく締めていく。それに彼は『ぐっ……』と小さな呻き声を上げた後、萎れた腕を振り、無理矢理雪霧の掴んでいた手を放させた。
「老いぼれに何をするんだ貴様はっ」
手を立て、勢いよく雪霧の脳天に振り下ろされ、鈍い音が頭の中心から響いた。
「うっ……。す、すまない……」
鈍い痛みを逃がすように叩かれた箇所を摩り、彼に謝罪すると、再び問い掛ける。
「どうなったのだ……教えてくれ」
山童は呆れた様子で息を吐くと、公園で小さな玉を父親らしき男性と投げ合っている少年へと目を向けた。父親の傍には、四歳程の少女が指をくわえてそのやりとりをぼうっと眺めていたが、すぐに飽きて近くのベンチに座っている母親である女性に駆け寄っていく。
「あの家族に、見覚えはあるか?」
雪霧も山童が見る家族に目をやる。しかし、今日初めて見る家族を知っている筈が無い。
「ある訳がないだろう。初めて見たぞ」
「もっと良く見るんだな。では、あの子供はどうだ?」
彼は次に、滑り台を滑る少女に指を差した。
髪を両端に括った可愛らしい少女が、楽しげな声を上げる。砂浜に降り立つと、額に流れる汗を振り撒いては、再び階段を駆け上がっていく。
どこにでも居る普通の少女だと思った。しかし、どこかで見たような感覚に襲われ、眉を潜めさせる。
どこで会ったのだろうか。
少女の顔を見て、記憶を辿っていく。自分が知っている人間は、村の者と現代で出会った数少ない者だけ。思い出すのにはそう時間は掛からなかったが、現代の人間の中では、あの様な少女と出会った記憶は無かった。
「……あ」
そうだ、あの子だ。
女なのにも関わらず、木の枝を持って侍の様に立ち振る舞う、元気な子だった。男である佐吉達と良く喧嘩はするがとても仲の良く、優しく、男気に溢れていても、淡い恋心を持った一人の乙女である彼女。
「……ねめ?」
――では、あの親子は? 雪霧は再び親子の方に視線を戻し、目を凝らす。
大きな瞳をした少女が、母親の膝枕で気持ちよさそうにしてうたた寝を始める。一方で、小さな球を投げ合っている少年の目は少し細く、仕切りに見せる八重歯が沈み始めた太陽によって僅かに光った。
その二人に、思わずあの子達の名を洩らす。
「佐吉……薫……」
父親と母親も見覚えがあった。彼らが大きくなったら、あの様な顔つきになっていたのだろうか。そう思えるほどに、佐吉と薫に似ていた。
「似ているだろう? 佐吉の子孫と薫の子孫が、子を作ったのだ。面白いな。数百年経って――どうした?」
呆然と彼らを眺めていたのを疑問に思った山童が、そう問いかけてくる。
「……生きていたのか? あの子達は、生きていたのか?」
「ワシらに感謝するんだな。お前が帰って来ないと思って、山に降りてみれば、何も変わっていない惨状。ワシらが食べ物を与えなければ死んでいたぞ」
決して人里に下りずにいた妖怪達が人間である彼らの救ったという事に、驚きを隠せなかった。特に、山童は一度たりとも人間と会った事もなく、山に来た人間でさえ近づこうとすらしなかった妖怪だ。そんな彼が、人間にそのような事をしたとはとても信じがたいものだった。
「私が居ない間、ずっとか……?」
「他の子供達も、離れてはいるがちゃんと生きている。そやつらも、仲間がずっと見守っている。薫の代を見守る奴は居たが、佐吉の子孫と一緒になってしばらくして逝ってしまいおった。全く、面倒事を増やしおって」
山童はそう毒づくが、嫌な感情を一つも感じない。それどころか、人間に対して愛おしさすら感じた。自分が存在しなかった数百年という時が、彼を大いに変えてしまったのだろう。
どうして、そこまでしてくれたのだろう。相手が人間ならば、妖怪である自分達にとって一番と言ってもいい程、どうでもいい存在の筈だ。話を聞いてくれていても、そこまでしてくれるとは思っていなかった。
「何故、そこまでしてくれたのだ?」
顔を見、問い掛けるが、彼は呆れた様子で顔を顰めさせるだけで、こちらを見ず、遊ぶ子供達を眺めて返答してきた。
「お前の好きな者達を失わせたくなかったからだ。だから、皆は必死になって、後世に残そうとした。お前が帰ってきた時に、全てが途絶えてしまっていないようにな」
「そうか……そうか……ありがとう」
雪霧は再び、佐吉、馨、めめの子孫に目を向け、深く息を吐いた。
それと同時に、安堵と共にどこからともなく涙が零れてしまう。抑える余地もなく、自然と流れてしまった事に驚き、慌てて涙を拭う。拭いきれなかった涙は頬を伝い、同じく泣いているコロの頭に落ちる。
「子供の前では泣いてはいけないのにな……」
「小娘が何をぬかす。泣きたければ泣け。誰も止めはせんし、茶化しもしない」
「……よかった。本当に……良かった……」
やめよう。もう泣かないという努力をやめよう。こんなに嬉しいのだ。嬉し泣きならば、持っていた信念を崩れても許してくれるだろうか。
雪霧は両手で顔を覆い、声を殺して泣いた。
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