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恋心と検索
何となく話に区切りがついたタイミングで向井さんがお茶を持ってきてくれた。
こんな時の向井さんは本当にタイミングが絶妙だ。隠しカメラでもあるのかと疑いたくなるが、本人に言わせると〈長年のカン〉らしい。
「特に何も考えずにそろそろかな?と思った時に持って行ってるだけですよ。人間の心理は不思議な物で話してる最中なら〈ちょうど喉が渇いた頃だ〉と思うし、話が終わった時なら〈ちょうど良いタイミング〉ってなるだけですよ」
と言っていたが、それにしてもいつも絶妙なタイミングだ。これが〈プロ〉なのかもしれない。
向井さん特製スイーツも添えてくれてあったためお茶の時間を楽しむ。
今まであまり聞いたことのない賢志の彼女さんの話を聞いてみた。
賢志が高校1年の時に一目惚れしたこと。
どうやら入学式の時に新入生の案内をする係だったらしい。
相手は3年だからチャンスは1年だと押して押して押しまくったこと。
割と早い段階で賢志の事を認識してくれたこと。認識って、それまではどんな扱いだったんだ?!
テスト勉強を一緒にしたいとお願いした事。賢志の学力を知って、やっと〈賢志〉に興味を持ってくれた事。
向こうは夏は夏期講習だったため終わる頃にお迎えに行った事。頼まれたわけじゃないのに〈防犯のため〉と無理やりお迎えに行ったそうだ。ストーカー?!
塾のない日は図書館で一緒に勉強したこと。おかげで賢志の学力も上がって一石二鳥だったと笑う。
高校の文化祭のこと、体育祭のこと。
冬休みの過ごし方。
彼女の受験。
卒業。
大学に入学してからのこと。
付き合う事になった経緯。
賢志が大学に入ってからのこと。
本当に色々と聞いてしまった。
僕の知らない恋愛の形。
賢志の恋心。
彼女の恋心。
羨ましいな。
純粋にそう思った。
僕にもまた、そんな風に想える相手が見つかるのだろうか?
見つかると良いな…。
「結局さ、賢志は彼女さんのこと大好きなだけじゃん」
思わず言ってしまった。話を聞いているとそうとしか思えないのだ。
「誰も好きじゃないとは言ってないし…」
歯切れが悪い。
賢志なりに悩んでいたのだろうが、僕には惚気にしか聞こえない。
「光流はさ、卒業したらどうするの?」
賢志が聞いてくる。僕を悩ませる問題のひとつだ。
「それがさ、何して良いのわからないんだよね…。結局さ、小学生の頃からの夢が〈お嫁さん〉だったのと同じじゃない?だから〈旦那様〉を支えるためにはどうしたら良いかしか考えてなかったせいで卒業したらしたい事が思いつかないんだよ。
何がしたいのか、何が出来るのか、自分のやりたい事が思いつかないんだ。
結婚して家庭に入るものだと思ってたから憧れの職業とが無いし…」
言ってて情けなくなってくる。
本当に僕は今まで何をやっていたんだろう。
「じゃあ、これから見付けないどだな」
賢志がいい笑顔で笑う。
「光流はさ、好きなものって何?」
「…甘い物?」
子どもみたいな答えになってしまった。
「甘い物が好きだし、いい香りも好き。手触りの良い布も好きだし、綺麗な色のものも好き」
そう言う事じゃないんだろうな、と思いつつ答える。
「本も好きだし、絵を見るのも好きだよ。なかなか美術館とか行けないけど、画集とか写真集も好き」
「好きな物たくさんあるじゃん。
まずはその中からひとつの物を突き詰めるのも良いんじゃない?布とか布とか布とか」
「何が言いたいの?」
「別に~」
こんなに気安く賢志と言い合ったのは何時振りだろう?僕の事情を大まかには教えられていても詳しくは知らなかったのだろう。僕に気を遣いながら、言葉を選びながら、いろいろな思いを飲み込んで僕を守り続けてくれていたのだろう。
「賢志、なんか…色々とありがとね」
「うん」
「これからもよろしくね」
「当たり前だろ」
「とりあえずさ、検索の仕方教えてくれる?」
僕の言葉に賢志が大きく笑う。
ひとつずつ、少しずつ、自分でできる事を増やしていこう。そう思うとなんだか楽しくなってくるのだった。
こんな時の向井さんは本当にタイミングが絶妙だ。隠しカメラでもあるのかと疑いたくなるが、本人に言わせると〈長年のカン〉らしい。
「特に何も考えずにそろそろかな?と思った時に持って行ってるだけですよ。人間の心理は不思議な物で話してる最中なら〈ちょうど喉が渇いた頃だ〉と思うし、話が終わった時なら〈ちょうど良いタイミング〉ってなるだけですよ」
と言っていたが、それにしてもいつも絶妙なタイミングだ。これが〈プロ〉なのかもしれない。
向井さん特製スイーツも添えてくれてあったためお茶の時間を楽しむ。
今まであまり聞いたことのない賢志の彼女さんの話を聞いてみた。
賢志が高校1年の時に一目惚れしたこと。
どうやら入学式の時に新入生の案内をする係だったらしい。
相手は3年だからチャンスは1年だと押して押して押しまくったこと。
割と早い段階で賢志の事を認識してくれたこと。認識って、それまではどんな扱いだったんだ?!
テスト勉強を一緒にしたいとお願いした事。賢志の学力を知って、やっと〈賢志〉に興味を持ってくれた事。
向こうは夏は夏期講習だったため終わる頃にお迎えに行った事。頼まれたわけじゃないのに〈防犯のため〉と無理やりお迎えに行ったそうだ。ストーカー?!
塾のない日は図書館で一緒に勉強したこと。おかげで賢志の学力も上がって一石二鳥だったと笑う。
高校の文化祭のこと、体育祭のこと。
冬休みの過ごし方。
彼女の受験。
卒業。
大学に入学してからのこと。
付き合う事になった経緯。
賢志が大学に入ってからのこと。
本当に色々と聞いてしまった。
僕の知らない恋愛の形。
賢志の恋心。
彼女の恋心。
羨ましいな。
純粋にそう思った。
僕にもまた、そんな風に想える相手が見つかるのだろうか?
見つかると良いな…。
「結局さ、賢志は彼女さんのこと大好きなだけじゃん」
思わず言ってしまった。話を聞いているとそうとしか思えないのだ。
「誰も好きじゃないとは言ってないし…」
歯切れが悪い。
賢志なりに悩んでいたのだろうが、僕には惚気にしか聞こえない。
「光流はさ、卒業したらどうするの?」
賢志が聞いてくる。僕を悩ませる問題のひとつだ。
「それがさ、何して良いのわからないんだよね…。結局さ、小学生の頃からの夢が〈お嫁さん〉だったのと同じじゃない?だから〈旦那様〉を支えるためにはどうしたら良いかしか考えてなかったせいで卒業したらしたい事が思いつかないんだよ。
何がしたいのか、何が出来るのか、自分のやりたい事が思いつかないんだ。
結婚して家庭に入るものだと思ってたから憧れの職業とが無いし…」
言ってて情けなくなってくる。
本当に僕は今まで何をやっていたんだろう。
「じゃあ、これから見付けないどだな」
賢志がいい笑顔で笑う。
「光流はさ、好きなものって何?」
「…甘い物?」
子どもみたいな答えになってしまった。
「甘い物が好きだし、いい香りも好き。手触りの良い布も好きだし、綺麗な色のものも好き」
そう言う事じゃないんだろうな、と思いつつ答える。
「本も好きだし、絵を見るのも好きだよ。なかなか美術館とか行けないけど、画集とか写真集も好き」
「好きな物たくさんあるじゃん。
まずはその中からひとつの物を突き詰めるのも良いんじゃない?布とか布とか布とか」
「何が言いたいの?」
「別に~」
こんなに気安く賢志と言い合ったのは何時振りだろう?僕の事情を大まかには教えられていても詳しくは知らなかったのだろう。僕に気を遣いながら、言葉を選びながら、いろいろな思いを飲み込んで僕を守り続けてくれていたのだろう。
「賢志、なんか…色々とありがとね」
「うん」
「これからもよろしくね」
「当たり前だろ」
「とりあえずさ、検索の仕方教えてくれる?」
僕の言葉に賢志が大きく笑う。
ひとつずつ、少しずつ、自分でできる事を増やしていこう。そう思うとなんだか楽しくなってくるのだった。
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