二世帯住宅から冒険の旅へ

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第100話 お散歩クラブ

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「結構宿の質はいいな。清潔だしベッドも快適だし」

「オニナパの宿は別として、こういう宿で普通たいした食事なんて出ないけどここはちゃんとした夕食だったね」

「まともなもんが食べられそうでひと安心やわ」

「見た目は似てるけど体の構造が違ったりして、異世界人が普通に食べてるものでも俺たちに消化できなかったり毒だったりしたらヤバいからな」

「クマモトでさんざん食べといていまさら」

「あっちは虎彦が普通に食べてたからな」

「オレは異世界人のハーフだけど」

「……もしかして体の構造が違ったりするのか?」

「食事はキゥミュィァマェントゥ王国やサテュイムァヌ王国とあまり変わらないですよね」

「不思議じゃのう。なんでこんなに似とるんじゃ?」

「建物はちょっと変わってたよね」

「細かいところは確かに違いますよね。あの屋根の上の飾りとかおもしろいですね」

「わしはドアの取っ手が気になるのう」

「人や物のサイズが全然違うってこともなさそうだし」

「目がちょっと大きめかも」

「髪は向こうで見たことない色ですね」

「朱色と黄緑色が多かったな」

「あと爪が髪の色と同じだった」

「あれマニキュアじゃないのか」

「みんな同じだから天然じゃない?」

「服装も独特でしたね。向こうでも流行るかもしれません」

「ほとんど白に近い毛皮みたいなやつな」

「なんか毛皮じゃなくて細い糸で作ってるよね」

「そういえば地面に引きずるくらい長い毛のやつもいたな」

「なにかの動物の真似なんかのう? サツマでもワイバーンの羽根をつけるのが流行ってた時期もあったのう」

「本物のワイバーンの羽根?」

「本物を入手する金があればそうじゃろうが、大抵はつくりものじゃったよ。当時サツマじゅうでワイバーンを狩ったせいでいまはあの小さな割れ目にちょっと生き残ってるだけじゃ」

「割れ目じゃなくて桃太郎の破壊跡な」

「むかしのサツマ人が渓谷ワイバーンを狩りつくしたってこと?」

「そうじゃ。見つけ次第狩ってたのう」

「それっておもに桃太郎のせいじゃ?」

「いやわしだけじゃなくみんな狩っとったんじゃい」

「そう言われると確かにクマモトではワイバーン肉があったけどサツマで見かけたことないな」

「王国内で獲れるのは渓谷ワイバーンとはちょっと違う種類ですけどね」

「この世界にはいないのかな?」

「そもそも魔物がいるのかどうか」

「ちょっと探検に行ってみよう」

「わてはこの部屋にど○○○○ア設置しとくわ」

「わしは魔王の護衛でもするかのう」

「護衛とかいるの?」

「ゴロゴロしたいだけだろ」

「みやげ待っとるぞ」

「お二人が仲良くなってひと安心です」

「魔王と四天王の仲を心配する暗黒騎士団長」

「タツ様も暗黒騎士になりませんか?」

「とうとう開き直って勧誘しはじめた」

「目が本気で怖い」

「あ、暗黒騎士団長! ちーっす」

「エドさんが崩れ落ちた」

「予期しない方向からの攻撃には弱いらしい」

「影の人に聞いたんすけど、探検に行くならお散歩クラブに入るといっすよ」

「この短時間で影を掌握してるしさらについさっき決めた行動まで漏れてて先回りされてる?!」

「あとオレも暗黒騎士になりたいっす!」

「うっ」

「めっちゃキラキラした目で見てるぞ」

「エドさんがうろたえてる」

「わ、わかりました。暗黒騎士の件はあとでじっくりと話すことにしましょう。それでそのお散歩クラブというのはなんでしょう?」

「町のそとに出て活動するときはいろいろと保障がつくからオトクっす」

「なんか妙なこと言いはじめたな」

「そとは危険っすからね」

「ちなみにどんな危険があるの?」

「鳥が飛んでたりウサギがじゃれてきたりっす」

「……危険?」

「まあいいや。とりあえずそのお散歩クラブっていうのはどうしたらいいんだ?」

「門番のブラリサンに言えばいっす」

「行ってきまーす」

「っす」

「……あいつ本当に信用できるのかね?」

「信用もなにも全部バレてるからうまく取り込まないと破綻しますね」

「それで影の人たちの情報収集はどうなってるの?」

「あまり有力な情報が集まらないようです。もうしわけありません」

「めずらしいな。サツマやオニナパでさえなんとかなってたのに」

「さいわい言葉の壁はないのですが、どうも微妙になにか隠されているというかなにか前提が食い違うような違和感があるんだそうです」

「異世界だし常識が違ってもおかしくはないよな」

「お、そとに行くのかあ? お散歩かあ?」

「あ、お散歩クラブってのがあるって聞いたんだけど」

「お散歩クラブに入るのかあ?」

「まずお散歩クラブの説明をしてくれ」

「そうだなあ。お散歩するときに登録しておくとなあ、なにか危険があったときに助けに行ってやるぞお」

「その危険ってのはどうやってわかるの?」

「この発信機を持ってってなあ、助けてほしいときにこのボタンを押すとビービービー!ほらビービービー!わかるようにビービービー!なってるぞお」

「わかったから止めろ!」

「しばらくビービービー!止まらないんだあビービービー!」

「すごい音だね」

「ほかにはなにかあるのか?」

「お、止まったなあ。ほかにはそうだなあ、お散歩コースの案内とかするぞお」

「ガイドか」

「その対価はなんでしょうか?」

「なんだあ? 対価? なんのことだあ?」

「助けるのに費用とかかかるだろ?」

「かからないぞお? 俺が助けに行くだけだからなあ」

「なんで助けてくれるんだ?」

「危ないからじゃないかあ?」

「いや、門番さんが大変なんじゃない?」

「お散歩する人が危険だといやだろお?」

「え?」

「んん?」

「つまりお散歩クラブに登録すると、外出するときにはその発信機を貸してくれて、ボタンを押すと助けに来てくれて、案内もしてくれて、全部無料ってこと?」

「うん、そうだなあ」

「でもそのあいだ門番がいなくならないか?」

「ここに門番なんて必要かあ?」

「自分で言うか」
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