私の夢

戒月冷音

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第4話

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それから数日後、ランドクリフ殿下をはからずも長時間独占していた女性から謝罪と感謝の手紙が届いた。
あの日、ランドクリフ殿下に手を取られた当たりからぽーっとしてしまい、音楽も何も頭に入らなくなったのだそうだ。
そして私の声を聞いた時、邪魔をするなと思ってしまった。
それまで沢山の男性が、自分をランドクリフ殿下から離そうと声をかけた。
しかし彼女には、私を手に入れたい男性が、私をランドクリフから奪おうとしているのだと勘違いして…
私は罪深い女なのだと、今の自分では考えられない程の思い違いをした…と書かれていた。

「本当に…おめでたい頭ですこと」

あのまま踊り続けけていれば間違いなく、ランドクリフ殿下と王家にご迷惑をかけ、殿下の婚約者に申し訳が立たなくなるところだった。
リーンクリフ公爵令嬢には、あのような形で教えて頂きありがとうございました。
その様な事が書かれていた。


「まぁ…私が会場に行くまでに買った嫉妬や妬みは、私には関係ないことですわね」
手紙をしまいながらそう口にすると、横から紅茶を差し出しながら
「そう言いながらまた、お助けになるのですよね」
エルフィンが言った。
「そう思う?」
「はい。お嬢様は、お優しいですから…」
そう答える彼の手を引き、私のとなりに座らせると、私は彼の膝に倒れ込む。
「あ、あの…お嬢様っ」
「しっ…」
唇の前に人差し指を立ててそう言うと、エルフィンは手で口を塞いだ。

部屋の窓が空いているのでそよそよと風が入る中、私はエルフィンの膝枕で休息を取る。
「か、固くはございませんか?」
「ん~…ちょうどいいわ。」
「では、このままご報告させていただいても、よろし良いでしょうか?」
「えぇ」
私は目を閉じたままエルフィンの報告を聞いていく。

彼は私が幼い時からの侍従で、公爵領の騎士団で鍛えられてからは護衛騎士も兼ねている。
生まれは、お父様の護衛騎士の息子。
私より10ほど年上で、お母様によく似たようで脳筋ではなかった。
彼のお母様は宮仕えの文官で、研究員でもある。
そこに似た彼は、頭の回転が良く、私のお父様が侍従に引き立てたのが始まりだった。
私が生まれ、妹が生まれた頃には、仕事を任せられるほどになっており。娘が2人ということもあり、エルフィンが私付きになった。
私は、早い話が初恋だ。
お父様とお母様に信頼され、テキパキと仕事をこなしていくエルフィン。
そんな姿を5歳くらいから見ていたから、惚れても仕方ないでしょ。

「…ということですが。いかが致しますか?」
私が色々思い出している間に、エルフィンの報告が終わった。
エルフィンは、私の侍従だが、それ以外に影の情報を纏める任もおっている、出来る男なのだ。
「ランドクリフ様は、自分の影でなんとかなさるでしょうから、大丈夫。
 リーンベル様は、ドリウス様がいらっしゃるわ」
「では、動く必要はないと?」
「一応、マリカ様とダイアナ様に、2人づつ付けて。
 何か動きがあったら連絡を」
「畏まりました」
私の上で頭を下げるエルフィンの顔が、私に近づく。
私が彼の頬に指を這わせると、頭のしたがぴくんっと反応した。
「…申し訳「黙っていればいいのよ」
私はゆっくりと体を起こし、唇が唇に当たるギリギリの状態でそう言った。

エルフィンに、私の息がかかる。
彼はきゅっと目を閉じ、何かに耐えているようだった。
そこから位置をすらして起き上がると、エルフィンはすぐに立ち上がり
「先程の指示を出してまいります」
と言って部屋をで出ていく。
私はその背を見送った後、一人で自分を慰めた。

エルフィン…エルフィン…
私の妄想の中に、私に欲情するエルフィンが現れる。
私の体を触り、愛で、愛撫していく。
ピチャピチャと音が響く中、私の体を堪能していく…
そして私を絶頂へと導き、私の中で彼が果てた…

そんな妄想をして、自分を慰めていると、
「お嬢様、入ります」
とエルフィンが戻ってきた。
「まっ…ガチャ
私が待てと言う前に、扉を開けてしまったエルフィンは、私の姿を見て固まった。
私はたくし上げていたドレスを戻し、そのまま顔を伏せる。
「も、申し訳ございません」
私に弁明のしようがない。

ただ救いとしては、彼の名を叫んでいなかったこと…それだけだった。
「いいの…気にしないで」
私はソファから立ち上がりドレスを治すと、仕事用の席に座る。
「それで、準備できたの?」
「は、はい。指示してまいりました」

その後私達は、ギクシャクしながらも仕事を終えた。
そしてそのまま私は夕食を取り、自分の寝室にはいる。
この部屋は、私以外入れない場所。
「あ~…私の馬鹿っ!何であんな場所で…」
ここでやれば、あんなことなならなかった。
絶対エルフィンは、私に好きな方が居ると勘違いした。
あんな…ソファの上で足を開き、秘部を触っている姿を見られるなんて…

その日私は、眠れなかった。
あの時のエルフィンの顔が、忘れられなかったからだ。
驚きに目を見開いた後、何か妄執めいたものが見えた気がした。
その始めて見た顔を思い出しながら、私はまた、自分の欲を満たすのだった。
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