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第6話
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私が公爵位を継承することが決まってから、今まで妹に多く来ていた釣書が、私に届くようになった。
しかし私は、全く興味を持たず、届いた釣書を開くまもなく暖炉に投げ込んだ。
「お嬢様。せめて見て下さい」
「アルバート。見る必要はないわ。
この人達今まで、私になんと言っていたと思う?」
「いいえ。知りませんが…」
「マーカスに捨てられた女。堅物。鋼鉄の魔女…未だあるわよ」
「もう、結構でございます」
「では、見なくていいわよね」
「はい。必要ございません」
「よろしい。では、仕事をしましょう。エルフィンを呼んできて」
「畏まりました」
私がこんな話をできるのは、食事の時間だけとなっていたため、今日は朝イチでこんな遣り取りをした。
私はエルフィンが来るまでゆっくりと朝食を取り、デザートに手を伸ばしたその時だった。
「マチルダ様」
「どうしたの?エルフィン。そんなに慌てて…」
「あの、王宮から連絡が…」
エルフィンの手には、王家の蝋印が押された手紙がある。
なんか嫌な予感がした。
「持ちたくないわ。貴方が開けて」
「駄目です。これはご自身で…」
「…開けなさい。そして読んで」
「……畏まりました」
エルフィンがそう答えるのを見越したように、アルバートがペーパナイフを差し出す。
ピリピリ…ピッ、と音が響き、手紙を開いたエルフィンは、ぴくっと反応した後、息を吐き出してから読み始めた。
「マチルダ・リーンクリフ殿。
この度の公爵位継承、お慶び申し上げます。
王妃陛下より、女侯爵になられた時のパートナーに、リーベルト殿下を
推薦したいとのお話があり、お手紙をお送りした次第です」
そこまで読み上げた時、私は立ち上がりエルフィンの前まで行くと、持っている手紙をピッ…と掠め取った。
「エルフィン以外外に出てくれる」
私がそう言うと、アルバートか指示を出し、数人のメイドと共に部屋を出た。
「マチルダ様…」
心配そうな声で聞いてくるエルフィンを横目に、私は持っている手紙を暖炉に投げ込んだ。
「マチルダ様、何を…」
「エルフィン。落ち着きなさい。これは王家からのものではないわ」
「ですが、王家の紋章をかたどった蝋印が、押されております」
「そうですわね。
ですが、王家の員を勝手に使った…宰相あたりのものでしょうね。
だから、中身はいらない」
「ですがもし、そうであれば証拠が…」
「証拠は、封筒があれば十分よ。
大体何でリーベルト殿下が、私のパートナーなんて…
フフフッ、笑うしかないわね」
「どういう、ことなのですか?」
「エルフィン。ココだけの話よ」
「はい」
「リーベルト殿下は、もうお相手がしらっしゃるの」
「えぇっ!?いらっしゃると言うことは、婚約者が…ということですね」
「いいえ。周りに見つからないように、早いうちからお囲いになり、
お子様までいらっしゃるわ」
「お囲い…」
「お子様は、奥様に似たお嬢様で、それはそれは可愛がっておられるわ」
エルフィンはポカンと私を見ている。
「早急に、コリン様に確認を取りましょう。
宰相閣下であればまだ良いのですが、偽造したものですと厄介なことなますわ」
エルフィンはすぐに確認するため、影を動かす。
私の伝令だという証拠と、手紙をもたせ、コリン・ヴェルデ様に渡してもらうよう頼んだ。
「畏まりました。今日中に返事をいただけるようにいたします」
「お願いね」
その後、いつものように自分の仕事をこなし、昼前には公爵領に関する書類を片付ける。
そして休憩を挟んで、お父様から頼まれた書類を片付けようとした時、エルフィンが返事を持って現れた。
「マチルダ様、届きました」
「ご苦労さま。それで、結果は?」
「宰相閣下ではなく、第二王子派です」
「未だいるの?」
「はっきりしていませんが、これを作ったのは王妃様の弟の、
領地に居る技術屋です」
「王妃様の弟…マリカ様のお父上?」
「そうです」
「そう言う事…そう言えばマリカ様は、婚約者がいらっしゃるのかしら?」
「確か数年前に、同じ侯爵の嫡男と婚約されたはずです」
「マリカ様のお姉様は?」
「嫁いでおられます」
「そう…それじゃあどうして?」
私は何故今頃、こんな事を言いだしたのかが気になった。
この国の皇太子は第一王子に決まっている。
そして、リーベルト殿下は妻帯者であり、補佐としての立場も確立している。
その状態で第二王子を持ち上げる意味がわからない。
そして数日が過ぎ、あの日の手紙(封筒)を持って王宮に行く日が来た。
今日はお父様と一緒に、叙爵のための手続きを行う。
お父様は、体調を崩したお母様のために、私に爵位を譲って二人で療養先に行くのだそうだ。
「お父様、準備は終わりましたの?」
「あぁ、大体終わった。後は彼女を連れて行くだけだ」
お父様は、いくつになってもお母様にメロメロで、他の人が名前を呼ぶのも許さない。
呼んで良いのは、私と妹だけだった。
「体調は、大丈夫ですか?」
「様子を見ながら、休み休み行くよ」
そんな話を馬車の中でしながら、私とお父様は王宮へと向かった。
しかし私は、全く興味を持たず、届いた釣書を開くまもなく暖炉に投げ込んだ。
「お嬢様。せめて見て下さい」
「アルバート。見る必要はないわ。
この人達今まで、私になんと言っていたと思う?」
「いいえ。知りませんが…」
「マーカスに捨てられた女。堅物。鋼鉄の魔女…未だあるわよ」
「もう、結構でございます」
「では、見なくていいわよね」
「はい。必要ございません」
「よろしい。では、仕事をしましょう。エルフィンを呼んできて」
「畏まりました」
私がこんな話をできるのは、食事の時間だけとなっていたため、今日は朝イチでこんな遣り取りをした。
私はエルフィンが来るまでゆっくりと朝食を取り、デザートに手を伸ばしたその時だった。
「マチルダ様」
「どうしたの?エルフィン。そんなに慌てて…」
「あの、王宮から連絡が…」
エルフィンの手には、王家の蝋印が押された手紙がある。
なんか嫌な予感がした。
「持ちたくないわ。貴方が開けて」
「駄目です。これはご自身で…」
「…開けなさい。そして読んで」
「……畏まりました」
エルフィンがそう答えるのを見越したように、アルバートがペーパナイフを差し出す。
ピリピリ…ピッ、と音が響き、手紙を開いたエルフィンは、ぴくっと反応した後、息を吐き出してから読み始めた。
「マチルダ・リーンクリフ殿。
この度の公爵位継承、お慶び申し上げます。
王妃陛下より、女侯爵になられた時のパートナーに、リーベルト殿下を
推薦したいとのお話があり、お手紙をお送りした次第です」
そこまで読み上げた時、私は立ち上がりエルフィンの前まで行くと、持っている手紙をピッ…と掠め取った。
「エルフィン以外外に出てくれる」
私がそう言うと、アルバートか指示を出し、数人のメイドと共に部屋を出た。
「マチルダ様…」
心配そうな声で聞いてくるエルフィンを横目に、私は持っている手紙を暖炉に投げ込んだ。
「マチルダ様、何を…」
「エルフィン。落ち着きなさい。これは王家からのものではないわ」
「ですが、王家の紋章をかたどった蝋印が、押されております」
「そうですわね。
ですが、王家の員を勝手に使った…宰相あたりのものでしょうね。
だから、中身はいらない」
「ですがもし、そうであれば証拠が…」
「証拠は、封筒があれば十分よ。
大体何でリーベルト殿下が、私のパートナーなんて…
フフフッ、笑うしかないわね」
「どういう、ことなのですか?」
「エルフィン。ココだけの話よ」
「はい」
「リーベルト殿下は、もうお相手がしらっしゃるの」
「えぇっ!?いらっしゃると言うことは、婚約者が…ということですね」
「いいえ。周りに見つからないように、早いうちからお囲いになり、
お子様までいらっしゃるわ」
「お囲い…」
「お子様は、奥様に似たお嬢様で、それはそれは可愛がっておられるわ」
エルフィンはポカンと私を見ている。
「早急に、コリン様に確認を取りましょう。
宰相閣下であればまだ良いのですが、偽造したものですと厄介なことなますわ」
エルフィンはすぐに確認するため、影を動かす。
私の伝令だという証拠と、手紙をもたせ、コリン・ヴェルデ様に渡してもらうよう頼んだ。
「畏まりました。今日中に返事をいただけるようにいたします」
「お願いね」
その後、いつものように自分の仕事をこなし、昼前には公爵領に関する書類を片付ける。
そして休憩を挟んで、お父様から頼まれた書類を片付けようとした時、エルフィンが返事を持って現れた。
「マチルダ様、届きました」
「ご苦労さま。それで、結果は?」
「宰相閣下ではなく、第二王子派です」
「未だいるの?」
「はっきりしていませんが、これを作ったのは王妃様の弟の、
領地に居る技術屋です」
「王妃様の弟…マリカ様のお父上?」
「そうです」
「そう言う事…そう言えばマリカ様は、婚約者がいらっしゃるのかしら?」
「確か数年前に、同じ侯爵の嫡男と婚約されたはずです」
「マリカ様のお姉様は?」
「嫁いでおられます」
「そう…それじゃあどうして?」
私は何故今頃、こんな事を言いだしたのかが気になった。
この国の皇太子は第一王子に決まっている。
そして、リーベルト殿下は妻帯者であり、補佐としての立場も確立している。
その状態で第二王子を持ち上げる意味がわからない。
そして数日が過ぎ、あの日の手紙(封筒)を持って王宮に行く日が来た。
今日はお父様と一緒に、叙爵のための手続きを行う。
お父様は、体調を崩したお母様のために、私に爵位を譲って二人で療養先に行くのだそうだ。
「お父様、準備は終わりましたの?」
「あぁ、大体終わった。後は彼女を連れて行くだけだ」
お父様は、いくつになってもお母様にメロメロで、他の人が名前を呼ぶのも許さない。
呼んで良いのは、私と妹だけだった。
「体調は、大丈夫ですか?」
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