私の夢

戒月冷音

文字の大きさ
7 / 17

第7話

しおりを挟む
王宮に着いて、廊下を歩く。
お父様のエスコートは、久しぶり。
「お父様のエスコートは、これが最後でしょうか…」
「馬鹿を言え、婚姻式の時がある」
「ふふっ…そうでしたわね」
「…お前の願いは、あの時から変わらんのか?」
「変わりませんわ」
「そうか…では、そのための準備を始めておくぞ」
私は嬉しくなって、お父様にしがみつき
「ありがとうございます、お父様」
と、お礼を言った。

「一体誰に、似たのやら」
「お父様ですわ。お母様一筋ですものね」
「当たり前だっ」
「私も、一筋ですわ」
「ふぅ~…分かったよ」
お父様は呆れたような声を出し、天を仰ぐ。

そんなお父様に、微笑みながら顔を近づけ、小声で伝える。
「お父様、先程から後をつけている者がおりますが…」
「ん?あぁ、あれはカンツェ侯の子飼だ」
「やはり…カンツェ侯でしたか」
「ん?何かあったか?」
「実は、私宛に、王家の蝋印を押した手紙が届きまして…」
「何だと?」
「内容は、王妃様が第二王子の相手に私を…というものでした」
「そいつは馬鹿か?妻帯者に相手を見つけてどうする」
「さぁ?私にも理解しかねます」
「そうだなぁ」
「取り敢えず今日、その封筒を持ってきております」
「中身は?」
「腹立たしかったので、燃やしました」
「……お前らしいな」
そんな話をしている間に、国王陛下と宰相閣下の待つ部屋につく。
「先程のことは、手続きが済み次第、お伝えしなさい」
「畏まりました」
そして私達はノックをし、部屋に入った。


手続きはつつがなく終わり…

「ではこれで、終了となります。公爵閣下、お疲れ様でした」
「色々ご迷惑をおかけした私を、面倒見てくださりありがとうございました。
 これからは娘を、よろしくお願いします」
「マチルダ嬢は、君よりしっかりしている。大丈夫だ」
「そうですね。
 いつぞやの夜会でも、ランドクリフ王太子殿下を助けておられた」
「そうだ。ランドが礼を言っておったぞ」
「もったいないお言葉でございます。
 あの…国王陛下」
「何だ?」
「時間の方はございますでしょうか?」
「何か相談でもあるのか?」
「はい。数日前、私宛にこのようなものが届きまして…」
私は封筒を裏返し、蝋印を見えるようにした状態で宰相閣下にお渡しした。

「これは?」
「私宛に届いた、手紙の封筒でございます。その印をご確認ください」
「王家の…いや、これは違う。似て非なるものだ」
「偽造か?」
「のようでございます」
さすが宰相。見ただけで判別できるとは…
「手紙の中身は、あまりにもバカバカしい内容でしたので、火にくべました」
「覚えているだけ話せ」
「リーベルト第二王子殿下のお相手に、王妃様が望んでおられる…と」
「何だと!」
国王陛下が立ち上がり、怒りをあらわにする。

「誰だ?」
「すぐに調べましたところ、カンツェ侯爵に繋がりました」
「王妃の弟か。分かった。トール」
「はっ。すくに確認し、対処いたします」
「王妃の立場を使うなど、あってはならん。
 それにしても、リーベルトの予想が当たったな」
「そうでございますね」

その後の話で、リーベルト第二王子の婚姻を隠していた理由がこれだったと知った。
リーベルト殿下は、絶対いつか兄上を脅す材料に使われると考え、自分の愛する人を守る為にも、結婚した事自体を隠すと決めた。
その方が一石二鳥で、犯人も捕まえやすいとの判断だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

それは確かに真実の愛

宝月 蓮
恋愛
レルヒェンフェルト伯爵令嬢ルーツィエには悩みがあった。それは幼馴染であるビューロウ侯爵令息ヤーコブが髪質のことを散々いじってくること。やめて欲しいと伝えても全くやめてくれないのである。いつも「冗談だから」で済まされてしまうのだ。おまけに嫌がったらこちらが悪者にされてしまう。 そんなある日、ルーツィエは君主の家系であるリヒネットシュタイン公家の第三公子クラウスと出会う。クラウスはルーツィエの髪型を素敵だと褒めてくれた。彼はヤーコブとは違い、ルーツィエの嫌がることは全くしない。そしてルーツィエとクラウスは交流をしていくうちにお互い惹かれ合っていた。 そんな中、ルーツィエとヤーコブの婚約が決まってしまう。ヤーコブなんかとは絶対に結婚したくないルーツィエはクラウスに助けを求めた。 そしてクラウスがある行動を起こすのであるが、果たしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

たのしい わたしの おそうしき

syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。 彩りあざやかな花をたくさん。 髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。 きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。 辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。 けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。 だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。 沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。 ーーーーーーーーーーーー 物語が始まらなかった物語。 ざまぁもハッピーエンドも無いです。 唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*) こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄) 19日13時に最終話です。 ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)
恋愛
伯爵令嬢と平民娘の純粋だった友情は次第に歪み始めて…… 大ぼら吹きの男と虚言癖がひどい女の末路 (よくある話です) *久しぶりにHOTランキグに入りました。読んでくださった皆様ありがとうございます。 メガホン応援に感謝です。

【完】真実の愛

酒酔拳
恋愛
シャーロットは、3歳のときに、父親を亡くす。父親は優秀な騎士団長。父親を亡くしたシャーロットは、母と家を守るために、自ら騎士団へと入隊する。彼女は強い意志と人並外れた反射神経と素早さを持っている。 シャーロットは、幼き時からの婚約者がいた。昔からのシャーロットの幼馴染。しかし、婚約者のアルフレッドは、シャーロットのような強い女性を好まなかった。王宮にやってきた歌劇団のアーニャの虜になってしまい、シャーロットは婚約を破棄される。

処理中です...