私の夢

戒月冷音

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第8話

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その日の帰りには、カンツェ侯爵が呼び出され封筒のこと、偽造のこと全てを自白剤で喋らされ、牢に入れられた。
カンツェ侯爵は
「ここから出せっ!私は侯爵で王妃の弟だぞ!私が言えば王妃はお前達など…」
などと、最初は威勢が良かったが、王妃が
「お前のような馬鹿者など、弟ではないわっ!
 偽造なんてことして、陛下の顔に泥を塗るなんてなんて馬鹿なの。
 それにリーベルトを不幸にする輩など、私にはいらないわ」
と言った瞬間、
「姉上、ごめんなさい。すみません。
 マチルダ嬢に、リーベルト殿下が婿入りすれば公爵位をもらえると思ったのです。
 全て、リーベルト殿下のため…」
と言い訳を始めたが、王妃はそれにも腹が立ち
「リーベルトに、爵位など不要なの。それに、爵位は血統でついでいくもの。
 そんな事もわかないお前が、侯爵位を持っていること自体おかしいわ。
 すぐにクラウスに譲って、隠居しなさい」
そう言われ、がっくりと頭を垂れた。

その後、侯爵位ををクラウスに譲った。
そして、帰らぬ人となった。
言葉を発さなくなった体の横には、手紙がありこう記してあった。
【今回のことは、自分が発案し領民を脅しやったことでございます、
 私の命と引換えに、関わった者達の減刑を望みます。】


「本当に、誰がそそのかしたのでしょうね」
私はそう考えていた。
リーベルト殿下のことを知っているのは、公爵以上。
カンツェ侯爵も知らなかったということは、その相手も知らない者の可能性は高い。
しかし…
「まぁ、私には関係ないことですわね。
 今回は私を使おうとしたから始末いたしましたが、そうでなければ興味もないわ」


そうして私は、女侯爵として動き始めた。
リーンクリフ公爵領は、お父様が静養に行かれるのでお任せする。
大きな事業や公共のことは私も関わるが、簡単な承認などはお父様でも出来る。
お父様からも
「俺が仕事をせず、彼女につきっきりで居れば、逆に心配をかけてしまう。
 それでは休みに来た意味がないので、俺に仕事をくれ」
と言われた。

まぁ、その方が私は助かる。
私は、ここ王都の屋敷の維持と国の政務全般。
宰相閣下の指示を受け、王宮の文官たちを取りまとめ、仕事を進めていく。
それがリーンクリフ公爵家の役割だ。

「エルフィン」
「はい」
「各部署への通達は終わっているから、貴男が繋ぎ、お願いね」
「えっ…私が、ですか?」
「そうよ」
「で、ですが…私は…」
「エルフィン。私の前で身分とか言わないでね。私はそう言うの嫌だから」
「嫌と言われましても、
 文官の方達のほうが、騎士よりも身分にこだわるものが多く…」
「だから?」
「えっと…」
「明日、王宮の執務室に行きます。貴男も一緒に来るように」
「…」
「いいわね」
「…はい」
エルフィンは渋々了承した。
自分の身分のせいで、私に反発する人が増えることを危惧しているのだろうが、私はそれを許すことはない。

貴男を迎えることが、私の夢であり願い…
その願いを遮る風習や、思い込みは早めに消しておくに限る。
そんなものに囚われたまま、使い物にならないものを雇うほど、国の財政は潤っていないのだ。
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