私の夢

戒月冷音

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第9話

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その次の日、私はエルフィンを連れて王城に行った。

馬車を降り、エルフィンとともに長い廊下を歩いていると、一人の偉そうな文官に出くわした。
「おやおや、こんなお嬢様がこんな所に…何の御用ですかな?」
私は一言も発さず、扇で口元を隠す。
エルフィンはいつものように、私のすぐ後ろで礼を取っていた。
私を公爵だと知らず、この文官はべらべらと話しだした。

「用の内容も言えないご令嬢が、こんな忙しいところに来られては、
 私達は仕事ができません。
 早々に、お帰りになることをおすすめしますよ」
私は、見ているだけ…
「大体、こんな所に平民をお連れになるとはどういうことですかな?
 ここは、貴族階級の仕事場にございます。
 速やかにその平民を連れ出し、お嬢様のご用事をおすましになりませんと、
 皆が困ります」
そこまで聞いて、耐えられなくなった私は
「貴男の名前と所属は?」
と聞いた。

「あぁ、失礼いたしました。
 私は、教育専門の部署におります、モーリアス・シャリアにございます」
「そう…ではまず、道を開けなさい。貴方が邪魔で通れないわ」
「なっ!?なんて無礼な。親切に教えて「結構よ」
私は扇で隠したまま、強めに遮った。

するとその先の部屋から、数人の文官が姿を表し、バタバタと走ってくると
「申し訳ございません。シャリア伯爵令息がご迷惑をおかけしました」
と頭を下げた。
「良いのよ。この人は明日から、居なくなるからそのつもりで居て」
私の言葉にモーリアスは腹を立てる。
「貴様。何様のつもりだっ」
しかし
「私はこの度、公爵位を賜り貴方達の上官となったマチルダ・リーンクリフです。
 貴方…今日はもうかえって結構よ。
 今日中に強制退職していただくので、明日からはもう来なくていいわ」
その言葉にモーリアスは怯える。

「リ、リーンクリフ?女公爵様?えっ!?あ、あの…」
「今からでは遅いわね。私は身分を振りかざすものは嫌いなの。
 身分ではなく仕事で、自分の価値を証明できない人は、いらないわ」
そう言った瞬間、さっきの馬鹿男は、その場で崩れ落ちる。
「シャリア伯爵に連絡を。御子息を連れて返ってもらって」
「「畏まりました」」
数人から返事をもらうと同時に、私は執務室に向かう。
何故お父様はあんな男を、ここに置いていたのかしら?
そう思いながらも、仕事に取り掛かる。


急ぎの書類を終わらせ、エルフィンに仕事を頼もうとした頃、やっとシャリア伯爵が到着したと連絡があった。
「遅いわ。何をしていたの?」
「いえ…私には分かりかねます」
繋ぎで来た文官は、何故かカタカタと震える。
「どうしたの?何か…」
話を続けようとした時、ばたーん…と入口の扉から開き、年配の男性が入ってきた。
「どういうことですかな?我が家の息子が、退職とは?」
名も名乗らず、上司の部屋に許可なく入ってくるなど、常識どころではないわね。
エルフィンは何があっても守れるように、私の横まででてきてくれている。
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