私の夢

戒月冷音

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第12話

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その日の帰り道、馬車の中で私はエルフィンに詰め寄られることになった。

「それで、あの時の話は、何だったのでしょうか?」
「あの時?」
「リーベルト殿下の、お話です」
「あぁ、あれは貴方の話よ」
「は?」
「私はね、貴男に箔をつけてほしいの」
「何故ですか?」
「とりあえず、私の話を聞いてくれる?これから、貴男の通る道筋を話すから」
私は、興奮しそうになるエルフィンにそう言う。
するとエルフィンは、グッと黙り込み、聞く体制になった。

私はこれから、自分の夢を話して、それを受け入れてもらえるのか…
その不安だけが残ったまま、話し始めた。
「エルフィンは、私が婚約破棄されてから、次の婚約者を決めていないのは
 知っているわね」
エルフィンはコクンと頷く。
「それには理由があってね。私は決めた人としか、一緒になる気はないの。
 でもその人は、私のように爵位も持っていなければ、自分に自信もない。
 だから私は、今のままではその方と、一緒になることは出来ない」

私の話を聞き、エルフィンは悲しそうな顔をする。
そんな顔をするのなら何故、昔私を守ると言ってくれた時のように、力強く言ってくれないのだろう。
「…マチルダ様は、その方と生涯を共にされるのですか?」
「したいわ。一生…彼の傍に居たい」
私はまっすぐ彼を見てそう言った。

「では俺は、その方が現れたら、今の立場をお返しし、騎士団に戻ります」
「どうして?」
「えっ!?」
「どうして貴男が、私から離れるの?」
「ど、どうしてって、それが普通でしょう。
 婚約者の男性がいるのに、俺がマチルダ様の傍にはいてはいけない」
「ん?
 どうして貴男の頭に中には、私の婚約者と貴男が別々になっているの?」
「だってそうでしょう。貴女の横に立つのは貴族の令息です。
 俺は騎士団長の子ですが平民です。
 だから俺は、貴女の隣りにいるために、今の場所を手に入れたのですからっ…」
エルフィンは慌てて口を塞ぐ。

しかし、出てしまった言葉は取り消せない。
「私の隣に…いる、ため?」
ブンブンブン…
「その場所に、来てくれたの?」
ブンブン…
「エルフィン…私は嬉しいわ」
ブ…
私が話す度に、違うとばかりに首を横に振っていたが、最後には降るのをやめ下を向いてしまった。

私は今がチャンスとばかりに、種明かしに入る。
「あのね、エルフィン。
 私は、貴男にずっと傍に居てほしいから、頑張って女公爵になったの」
私の言葉に、ピクッとしたエルフィンは顔を上げる。
「お父様との約束で、女侯爵になったら
 私の一番大好きな人を、私の旦那様にしてくれると言ってくれた。
 だから頑張った。
 女公爵になった時、お父様は準備をすると言ってくださったわ。
 それが、リーベルト殿下が言っていたこと…」
「えっ!?」
「だから、貴方の話だと言ったの。
 貴男はこれから、ヴェルテ公爵の養子になる」
「俺は…マチルダ様に、必要無くなるのだと思っておりました」
「何を言ってるの?まだまだずーっと必要だから、準備したのよ」
「必要…ですか?」
エルフィンは、捨てられた子犬みたいな顔をして、今にもクーンと鳴きそうだ。
「ふふっ、そんなに怯えなくてもいいわ。
 貴男は、ヴェルテ公爵令息になって私のもとに嫁ぐの。
 養子は、その前段階」
「あ、あの…」
「エルフィン。貴男は、私の旦那様になるの」
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