私の夢

戒月冷音

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第13話

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その日から数日後、無事にヴェルテ公爵との面会で気に入られ、次男として公爵の養子になった。
エルフィンはその日から平民ではなくなり、エルフィン・ヴェルテ公爵令息となる。


その日から一週間、エルフィンは私の傍にいることはなく、ヴェルテ公爵邸で、貴族の振る舞いを徹底的に教え込まれていた。
そこに、コリン様も参加し、エルフィンを煽ったようだ。
「すごいですよ。エルフィン公爵令息」
「何が?」
「2日で立ち居振る舞いを習得して、貴族名鑑は記憶済み。
 一人たりとも外さないそうです。コリン様が悔しがってました」
「ふふっ、そう」

私はリーベルト殿下の影の一人から、その報告を受けていた。
影の貸出は、ランドクリフ様からのお礼だそう。
あの時のダンスが、こんなに役立つとは思わなかった。

「それで、いつ終わりそうかしら?」
「早くて後3日、遅くて5日かな」
「そう、分かったわ。
 それじゃあこれを、ヴェルテ公と王子様2人に渡してくれる?」
私はそう言うと準備していた招待状を、影に渡した。
「はぁ!?まさか、もう作ってた?」
「当たり前でしょ。早く会いたいからもう私の仕事は終わってるの」
「こわ…」
「何か言ったかしら?」
ニッコリと微笑んで言うと3歩後ずさりされた。

「いいえ。では、これを運んできます」
「お願いね。その後はまたエルフィンの様子を…」
「了解です」
その返事とともに姿を消した。

私は一人で執務室にいる。
今まではエルフィンがいて、私を支えてくれたから平気だったが、一人になると心細い。
「頑張って…エルフィン」
私はそう口にしながら、寂しさを紛らわし、なんとか3日間を過ごした。


「まだなの?エルフィン…」
執務室に一人、呟くと、
コンコンコンコン…
扉を連打される。
「マチルダ様、いらっしゃいますか?」
「エルフィン?」
「はい」
「入って…」
ガチャ…「失礼…」
エルフィンの声に、待ちきれなかった私は、すぐに立ち上がって入口まで走る。
走る姿を見たエルフィンは、挨拶もそこそこに、両手を広げて私を迎え入れてくれた。

「マチルダ様」
「エルフィン。会いたかった」
「俺もです」
久しぶりの抱擁に、ほうっ…とさっきまでの緊張が解ける。
「終わったの?」
「はい。終わりました」
「じゃあこれからは、ずっと一緒?」
「確か明日、父上と兄上が、マチルダ様のお父上に
 お会いになると聞いてます。俺はその後です」
「それじゃあ今は、何故ここに?」
そう言って、彼の胸元から顔を上げると、彼の後ろにヴェルテ公の姿が見えた。

「えっ!?も、申し訳ございません。私…」
「あぁー…良い良い。馬に蹴られたくない」
「そんな事ありませんわ。とりあえず中にお入りください」
その後私は、執務室で今後の予定を聞いた。

これで、私の夢が叶う。
エルフィンが旦那様になる…それを想像した私は安心したのか、ヴェルテ公の話半ばでその場で眠ってしまった。
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