この生の理

戒月冷音

文字の大きさ
76 / 330

第76話

しおりを挟む
昼休み。

僕は食堂で、兄さん達と合流した。
理由のわからない噂はまだ続いていて、収まりを見せない。
ただ、当事者の僕達はそれを気にせず、過ごそうとした。過ごそうとはしたんだ。

だが
「ジョージ様。お話しがあります」
1人の令嬢が、座っている僕に背中から話しかけてきた。たしか彼女はアマルダ・ライド公爵令嬢の取り巻きに居た…ムルシア公爵の遠縁の子だ。
僕は振り向くことなく
「ここで話せないことですか?」
と声をかけた。
「えぇ…」
「では、その話は僕にとって必要ありません」
「…何故ですか?」
「逆にこっちが聞きたいです。
 なぜ俺の家族がその話を聞けないんですか?当事者ですよ?ここいる人全て。
 どうせその内容は、ムスタファの公爵の死刑判決ぐらいでしょうか」
僕がそう言うと令嬢は青ざめた。

やっぱり死刑だったか。僕の予想通りだった。多分死刑された公爵ははガルド・ミルファ。人の心を無視して自分の意志を無理矢理通した奴には当たり前の刑だ。
「もう、結果が出たのか?」
「結果というか、判決でしょうね。
 お祖父様が出向いてますし、ジョーの話だと魔石を扱うムスタファは
 刑の決定に厳しいそうです」
「あの国は魔石に頼りすぎてるからね。
 ルールを守れないものは使っちゃ駄目だけど、1度使ったらやめられないから。
 一生使えなくしたほうが、安全なんだ」
ルーカス様の問いに、兄さんと僕が答えるとコラルニア伯爵令嬢が両腕を抱える。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ」
「すみません。少し物騒すぎましたか」
「ジュリア様、今は耐える必要はありませんわ」
「リリーベル様…ですが少なくとも私達も関わっております。
 そのうえで死刑判決を受ける方がいるというのは」
「たしかに辛いですし、怖くもありますわ。
 ですが、わたくし達はそうしたものに関わることになる立場にいるのです。
 それに今から耐える事に慣れてしまえば、私達が裁く時、
 逆に耐えてしまったら、正しい判断できなくなります。それでは駄目なのです」

「では、怖いものは怖いと言ってしまって良いのですか?」
コラルニア伯爵令嬢の引っ掛かりはそこか。
僕達貴族は、あらゆる事柄に慎重に対処するため、感情に流されてはいけないと教えられる。
感情のままに判断をすると、今回の王子殿下のようになってしまう。

駄目なものは、駄目。

まずそれがはっきり言えることが第一。駄目だけどキミが好きだから許す…は身を滅ぼすきっかけとなる。
だから今の場合、コラルニア伯爵令嬢は怖いことが苦手なようで、それを怖いと思わないように耐えようとした。
しかし、僕達の話しを聞き、自分も関わった事で恐怖を覚え、些細な事も怖くなってしまった。
けれどそれを口に出さすに耐えてしまったら、逆にココロが持たない。
だからマルガス公爵令嬢は耐えるなと言った。耐えて心に傷をつけては駄目だから…と
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...