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第76話
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昼休み。
僕は食堂で、兄さん達と合流した。
理由のわからない噂はまだ続いていて、収まりを見せない。
ただ、当事者の僕達はそれを気にせず、過ごそうとした。過ごそうとはしたんだ。
だが
「ジョージ様。お話しがあります」
1人の令嬢が、座っている僕に背中から話しかけてきた。たしか彼女はアマルダ・ライド公爵令嬢の取り巻きに居た…ムルシア公爵の遠縁の子だ。
僕は振り向くことなく
「ここで話せないことですか?」
と声をかけた。
「えぇ…」
「では、その話は僕にとって必要ありません」
「…何故ですか?」
「逆にこっちが聞きたいです。
なぜ俺の家族がその話を聞けないんですか?当事者ですよ?ここいる人全て。
どうせその内容は、ムスタファの公爵の死刑判決ぐらいでしょうか」
僕がそう言うと令嬢は青ざめた。
やっぱり死刑だったか。僕の予想通りだった。多分死刑された公爵ははガルド・ミルファ。人の心を無視して自分の意志を無理矢理通した奴には当たり前の刑だ。
「もう、結果が出たのか?」
「結果というか、判決でしょうね。
お祖父様が出向いてますし、ジョーの話だと魔石を扱うムスタファは
刑の決定に厳しいそうです」
「あの国は魔石に頼りすぎてるからね。
ルールを守れないものは使っちゃ駄目だけど、1度使ったらやめられないから。
一生使えなくしたほうが、安全なんだ」
ルーカス様の問いに、兄さんと僕が答えるとコラルニア伯爵令嬢が両腕を抱える。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ」
「すみません。少し物騒すぎましたか」
「ジュリア様、今は耐える必要はありませんわ」
「リリーベル様…ですが少なくとも私達も関わっております。
そのうえで死刑判決を受ける方がいるというのは」
「たしかに辛いですし、怖くもありますわ。
ですが、わたくし達はそうしたものに関わることになる立場にいるのです。
それに今から耐える事に慣れてしまえば、私達が裁く時、
逆に耐えてしまったら、正しい判断できなくなります。それでは駄目なのです」
「では、怖いものは怖いと言ってしまって良いのですか?」
コラルニア伯爵令嬢の引っ掛かりはそこか。
僕達貴族は、あらゆる事柄に慎重に対処するため、感情に流されてはいけないと教えられる。
感情のままに判断をすると、今回の王子殿下のようになってしまう。
駄目なものは、駄目。
まずそれがはっきり言えることが第一。駄目だけどキミが好きだから許す…は身を滅ぼすきっかけとなる。
だから今の場合、コラルニア伯爵令嬢は怖いことが苦手なようで、それを怖いと思わないように耐えようとした。
しかし、僕達の話しを聞き、自分も関わった事で恐怖を覚え、些細な事も怖くなってしまった。
けれどそれを口に出さすに耐えてしまったら、逆にココロが持たない。
だからマルガス公爵令嬢は耐えるなと言った。耐えて心に傷をつけては駄目だから…と
僕は食堂で、兄さん達と合流した。
理由のわからない噂はまだ続いていて、収まりを見せない。
ただ、当事者の僕達はそれを気にせず、過ごそうとした。過ごそうとはしたんだ。
だが
「ジョージ様。お話しがあります」
1人の令嬢が、座っている僕に背中から話しかけてきた。たしか彼女はアマルダ・ライド公爵令嬢の取り巻きに居た…ムルシア公爵の遠縁の子だ。
僕は振り向くことなく
「ここで話せないことですか?」
と声をかけた。
「えぇ…」
「では、その話は僕にとって必要ありません」
「…何故ですか?」
「逆にこっちが聞きたいです。
なぜ俺の家族がその話を聞けないんですか?当事者ですよ?ここいる人全て。
どうせその内容は、ムスタファの公爵の死刑判決ぐらいでしょうか」
僕がそう言うと令嬢は青ざめた。
やっぱり死刑だったか。僕の予想通りだった。多分死刑された公爵ははガルド・ミルファ。人の心を無視して自分の意志を無理矢理通した奴には当たり前の刑だ。
「もう、結果が出たのか?」
「結果というか、判決でしょうね。
お祖父様が出向いてますし、ジョーの話だと魔石を扱うムスタファは
刑の決定に厳しいそうです」
「あの国は魔石に頼りすぎてるからね。
ルールを守れないものは使っちゃ駄目だけど、1度使ったらやめられないから。
一生使えなくしたほうが、安全なんだ」
ルーカス様の問いに、兄さんと僕が答えるとコラルニア伯爵令嬢が両腕を抱える。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ」
「すみません。少し物騒すぎましたか」
「ジュリア様、今は耐える必要はありませんわ」
「リリーベル様…ですが少なくとも私達も関わっております。
そのうえで死刑判決を受ける方がいるというのは」
「たしかに辛いですし、怖くもありますわ。
ですが、わたくし達はそうしたものに関わることになる立場にいるのです。
それに今から耐える事に慣れてしまえば、私達が裁く時、
逆に耐えてしまったら、正しい判断できなくなります。それでは駄目なのです」
「では、怖いものは怖いと言ってしまって良いのですか?」
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まずそれがはっきり言えることが第一。駄目だけどキミが好きだから許す…は身を滅ぼすきっかけとなる。
だから今の場合、コラルニア伯爵令嬢は怖いことが苦手なようで、それを怖いと思わないように耐えようとした。
しかし、僕達の話しを聞き、自分も関わった事で恐怖を覚え、些細な事も怖くなってしまった。
けれどそれを口に出さすに耐えてしまったら、逆にココロが持たない。
だからマルガス公爵令嬢は耐えるなと言った。耐えて心に傷をつけては駄目だから…と
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