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第82話
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第一王子殿下が療養という名の謹慎に入ったことで、予定されていた夜会が延期が決定した。
その後2ヶ月は何事もなく過ぎ、日々授業と執務をこなしていく日々となった。
その間に、ムスタファからコー爺が帰ってきたり、元ドラード子爵令嬢と元レリンシュラ候爵令息が平民となりムスタファに送られたりと色々あった。
帰って来たコー爺から、ムスタファ国王が僕を覚えていたことを聞かされた時はついて行って殴ってやればよかったと思ったが、どうやらコー爺が近衛師団の訓練に参加したついでに引きずり込んで死なない程度にしごいて来たと言った時には何やら気持ちがスッキリした。
そしてその1ヶ月後…
「本日より、アーサー第一王子殿下が授業に参加されます」
その日の朝、僕の教室の担任教師が朝礼で言った。
僕のクラス?と思っていると
「殿下は魔石の影響で1学年までの記憶がはっきりとありますが、2学年以降はあやふやです。ご自身の判断でこの学年からとお決めになられました。皆さんお願いします」
と先生が説明した。
そして、一番後ろの席に姿を表したアーサー第一王子殿下。ゆっくりと礼をして席についた。
少し頬がコケ、疲れているように見える。その殿下とともに授業が始まった
その日1日殿下は後ろの席で静かに授業を受けた。
全ての授業が終わり、僕は席を立ちアーサー殿下に近づこうとした。
すると僕の横をすり抜け、女性の1人が勢いよく声をかけた。
「アーサー殿下にご挨拶申し上げます」
「あ、あぁ」
気のない返事。
「あの私、アーサー殿下に憧れておりまして、一度で良いのです。
一緒に帰ったり話したりしてみたいのですが、よろしいでしょうか?」
この女は、何を言っているんだろう?
殿下はそう言う女に騙されて、魔石の餌食になって、やっとここまで戻ってこれたところだと言うのに。
なんでこんな人気持ちを汲み取れない人が、殿下のような地位が上の人に好かれると思うのだろう。
と考えはしたが今は、殿下を救わなければ。
今の言葉を聞いて青い顔をしてしまっている。
思い出したのかもしれない。あの女と会った時を…
殿下を心配した僕は、何食わぬ顔でその二人の間に入り
「君、家ごと全部失いたいのかなぁ?」
と声をかけた。
「え?私ただ殿下とお話したいだけで…」
「なんで話したいの?」
「えっ!?あの…」
「親に言われた?今日から通学だからつながりを持てって」
「い、いえ。あの」
彼女はドンドン顔色が悪くなる。
「僕は同じクラスだから、君の名も家も知ってる」
「……」
「僕は君がしたいことなんか別に興味はない。
ただ、殿下と交流する前に、名も名乗らず挨拶もせず自分のしたいことだけ、
言いたいことだけ主張する…その礼儀のなさに呆れるよ」
僕がそう言うと、はっと今気がついたように顔を上げ、ガグガクとと震えだす彼女。
いちばん大事な礼を重んじることを忘れていたことに気が付いたのだろう。
だから、それ以上声はかけず後ろを振り返ると、今度はアーサー殿下が僕を見ていてびっくりした顔で固まっていた。
その後2ヶ月は何事もなく過ぎ、日々授業と執務をこなしていく日々となった。
その間に、ムスタファからコー爺が帰ってきたり、元ドラード子爵令嬢と元レリンシュラ候爵令息が平民となりムスタファに送られたりと色々あった。
帰って来たコー爺から、ムスタファ国王が僕を覚えていたことを聞かされた時はついて行って殴ってやればよかったと思ったが、どうやらコー爺が近衛師団の訓練に参加したついでに引きずり込んで死なない程度にしごいて来たと言った時には何やら気持ちがスッキリした。
そしてその1ヶ月後…
「本日より、アーサー第一王子殿下が授業に参加されます」
その日の朝、僕の教室の担任教師が朝礼で言った。
僕のクラス?と思っていると
「殿下は魔石の影響で1学年までの記憶がはっきりとありますが、2学年以降はあやふやです。ご自身の判断でこの学年からとお決めになられました。皆さんお願いします」
と先生が説明した。
そして、一番後ろの席に姿を表したアーサー第一王子殿下。ゆっくりと礼をして席についた。
少し頬がコケ、疲れているように見える。その殿下とともに授業が始まった
その日1日殿下は後ろの席で静かに授業を受けた。
全ての授業が終わり、僕は席を立ちアーサー殿下に近づこうとした。
すると僕の横をすり抜け、女性の1人が勢いよく声をかけた。
「アーサー殿下にご挨拶申し上げます」
「あ、あぁ」
気のない返事。
「あの私、アーサー殿下に憧れておりまして、一度で良いのです。
一緒に帰ったり話したりしてみたいのですが、よろしいでしょうか?」
この女は、何を言っているんだろう?
殿下はそう言う女に騙されて、魔石の餌食になって、やっとここまで戻ってこれたところだと言うのに。
なんでこんな人気持ちを汲み取れない人が、殿下のような地位が上の人に好かれると思うのだろう。
と考えはしたが今は、殿下を救わなければ。
今の言葉を聞いて青い顔をしてしまっている。
思い出したのかもしれない。あの女と会った時を…
殿下を心配した僕は、何食わぬ顔でその二人の間に入り
「君、家ごと全部失いたいのかなぁ?」
と声をかけた。
「え?私ただ殿下とお話したいだけで…」
「なんで話したいの?」
「えっ!?あの…」
「親に言われた?今日から通学だからつながりを持てって」
「い、いえ。あの」
彼女はドンドン顔色が悪くなる。
「僕は同じクラスだから、君の名も家も知ってる」
「……」
「僕は君がしたいことなんか別に興味はない。
ただ、殿下と交流する前に、名も名乗らず挨拶もせず自分のしたいことだけ、
言いたいことだけ主張する…その礼儀のなさに呆れるよ」
僕がそう言うと、はっと今気がついたように顔を上げ、ガグガクとと震えだす彼女。
いちばん大事な礼を重んじることを忘れていたことに気が付いたのだろう。
だから、それ以上声はかけず後ろを振り返ると、今度はアーサー殿下が僕を見ていてびっくりした顔で固まっていた。
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