この生の理

戒月冷音

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第83話

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「何をびっくりしているんですか?」
僕が声を掛けるとアーサー殿下はビクッとした後、僕の後ろにいる女性とを気にした。
「声をかけますか?
 彼女に話しかけられた時、挙動不審だったので声をかけたのですが」
「あ、た、助かった。有り難う」
「いえ」
「それで、彼女はなぜ泣いているのだろうか?」
そう、僕の言葉に震え出した彼女は、今僕の後ろで泣いている。

多分、殿下に礼を取らなかったことを思い出し、どうすることも出来なくなった状態で放置したため、涙が溢れ出したのだろう。
本当に女って泣いても様になるから男より得だよな。
「殿下に挨拶も名乗りもしていない事に、さっき気がついたようで」
「あぁー」
「それで感情が、溢れてしまったのかと」
「それを放っておくのか?」
「どうするのですか?僕は固まった殿下を優先しただけですが」
「すまん。いや、済まない」
「それで殿下は、彼女をどうしますか?」

僕は身体の向きを変え、殿下に彼女が見えるようにする。すると殿下はビクッとして身構える。
やっぱりこういう行動は苦手になったのか。
殿下はゆっくりと彼女に近づき
「君には申し訳ないが、今遊び呆ける事はできない」
「ひっ、いえ。わっ、私の、方こそ…申し訳ございません。無神経でした」
彼女はそう言うと慌てて涙を拭いて、頭を下げた後教室を出ていった。

「すみませんが」
僕はさっきの彼女と、よく一緒にいる女性に声をかけ
「彼女にコレを渡してくださいませんか?」
と言ってハンカチと、小さな飴が数個入った小袋を渡す。
「それから、きついことを言って申し訳ないとお伝え願えませんか?」
と頼んだ。
女性はハンカチなどを受け取り
「分かりました。必ず渡してお伝えします」
と言って追いかけていった。

殿下の所に戻ると
「ああするのが、正解なのか?」
と聞いてきた。
「何が正解かは僕にも分かりません。
 ただ、さっきは殿下を優先してきつく言ってしまったので、
 それで萎縮してしまったら、彼女らしさはなくなってしまいますから…
 誤りたかったんです」
「そうなのか…」
殿下は色々なことを知っていこうとしているように見える。

僕が最初にあった殿下は思い込みが激しく、頭でっかちで、自分本位のことしか言わないと言う感じで、できれば関わりたくない種類の性格だった。
だけど今の殿下は、理解らないこと、知らないことを、知ろうとしている。
自分の考え…妄想込み…でねじ伏せ、聞かなければ権力を使っていた人とは、思えない変わりっぶりだった。

だから聞いてみた。
「殿下は、王位を継ぐ…そのお気持ちをまだ持って居られますか?」と。
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