この生の理

戒月冷音

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第81話

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作業を終えて僕達は帰路につく。
「終わったー。先輩方のおかげで、今日は早く帰れます。有難うございます」
「そうですね。私達だけではうまく回らなかったでしょうから」
まだ残っていた文官さんが頷きながら話す。
先輩達は複雑な顔をしているが、あんな事があった後も手を貸してくれることには感謝している。

するとルーカス様が
「礼を言うのは我々の方だ」
と言い出した。
「そうです。
 殿下を助けていただいたばかりか、この様に仕事までしていただいていますし」
「わたくしもですわ。ルーカスを助けていただいただけでなく、
 わたくし達の仲も良好にしていただきました。大変感謝しております」
「そこは俺も感謝だ。
 ジュリアと破棄することなく、こうしていられるのはジョージ殿のおかげ。
 本当に感謝している」
「俺は…「兄さんの謝罪と感謝は、屋敷で十分すぎるくらいもらったからもう良いよ」
「えー、言いたい~」
「もういい」
駄々っ子になった兄さんをなだめながら考える。

今まで、こんなに感謝されたことってあったか?
いや、無いな。
そう思った瞬間、なんだかむず痒く感じた。
自分はただコー爺にココに行って役立ってこいと言って出されただけだったが、辺境の生活で教えられた事を守って手を貸すぐらいの考えで動いただけだった。
最初は。
でも…自分の立ち位置を知り責任について教えられ王子教育という国単位の教育をされてから考えが変わったように思う。
色々考えているとなんか顔が熱くなったように感じた。

「ジョー、照れてる?」
突然覗き込むようにして、兄さんがそう言う。
「熱ではないよな?」
とルーカス様も何やら気にかけてくる。
まさか…僕は慌てて顔を隠し
「熱は有りませんし、何でもないので気にしないで下さい」
と言った後
「先輩方が…お礼なんて言うから、照れただけです」
と小声で言った。

その後、僕は兄さんを置いて馬車まで走る。
「ルーカス先輩お先に失礼します。レディ方もお気をつけて。それでは…
 ジョー!待っててばー」
挨拶もそこそこに僕を追ってくる兄さん。
「ジョージ様は、案外可愛い方ですのね」
「ジュリア様。可愛くてもしっかりした方ですわ」
「ジュリア、リリーベル嬢。男に可愛いはないと思うが…」
「ルーカス。貴方だって可愛いところはありましてよ」
「は?」
「ルーカス様。男性が皆、力強く男らしい訳では有りませんわ。
 全体が可愛らしい容姿の方もいれば、がっしりした方でも
 可愛いものや綺麗なものが、お好きな方もいらっしゃいます。
 男だからとすべてを決めては、その人の個性はなくなってしまいますよ」
「確かに…リリーベル嬢、俺の思い込みでした。すみません」

僕は走って逃げてしまったから知らなかったが、こんなやり取りを先輩方がしていたと後から文官さんに聞いた時は穴があったら入りたいと心から思った。
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