無翼龍闇Ⅰ ～出会編～ 改

第2章 龍牙と従兄弟

第65話

「これは、紫煙で決まっている処罰だ。
　あのチームは、表と裏の顔を持つ。
　だから、掟を破った者への制裁は、一番厳しい。
　後、2,3回はやるはずだ」

事務所の入口に立ち、タバコに火をつけた友也さんがそう言う。
“2,3回？ってことは多くて3本･･･あと2本･･･”
そう考えた瞬間、私は走り出した。

「淋ちゃん!?」
「淋!!」
「止まれっ！」

みんなが止めるのも聞かず、階段を下り、全力で走った。




『どいてっ!』


私は、円の中心めがけて走りながら叫ぶ。
幹部のみんなに見えないように、そして、2階から見つからないように･･･
群集は、道をあけてくれる。

そして、真次が見える辺りまで来ると、敦也さんの動きを確認する。

“やっぱり･･･
　次のタバコに火をつけ、真次の意識が戻るのを、待ってる。”


あの制裁は、意識がないと意味がない。
意識があるから、痛みをダイレクトに受ける。
意識がなければ、ただ焼かれ、目覚めるだけ･･･
何とか近くまでいくと、真次がうっすら目をあけるのが見えた。

“やばい･･･目を開けてしまったら、次が来る”

咄嗟に私は向きを変え、真っ直ぐ真次のいる場所を目指した。

「おいっ!?白龍っ！淋を止めろ!!」

私とは逆位置にいた亮さんがそれに気付き、咄嗟に叫ぶ。

「「えっ？淋!?」」

“間に合えっ･･･”

次の瞬間、敦也さんが真次に向けたタバコを、私は右手で握りつぶした。






「淋!おいっ！大丈夫か」
亮さんが心配してくれてるけど、それどころじゃない。
私はタバコを握りつぶしたまま、真次の前に立ちはだかった。