有って無き者

戒月冷音

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第135話

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「何か、思い出されましたか?」
「・・・あぁ。少し前に、兄上が楽しそうに話していた。
 息子の正妃に、面白い子がいると。
 それが、カサンドラ様だったのかと」
「そう言えばあの時、国王陛下の従者の方も参加されていましたね。
 そこから、流れたのですね。
 いったい、どのように報告されたのかは、気になりますが・・・」
「兄上は、解剖の席に女性がいたと、報告を受けたと」

「ほ、本当に、その場にいたと言うことですか?」
マルク殿下が訪ねる。
「兄上がそう言っていたんだ。だからそれで、間違いはない」
「あ。あの場所で・・・あれを、見たんですか?
カタカタと震えながら聞くマルク様の横で、目をキラキラさせている人がいる。

「リズ様。もしかして参加してみたいとか、そう言う感じですか?」
「えっ!?リズ?」
「だ、だって、解剖なんて絶対に見れないじゃないですか。
 良いなぁ~と、思ってしまって・・・」
「リズ様。その言い方は危ない方ですわ」
「そ、そうですか?」
「解剖は、見ない方が良いかと」
「と、どうしてですか?」
今ここで、あの時の事を話せば、多分マルク殿下が倒れそうだ。

だから私は、リズ様をおいでおいでと私の横に呼んだ後、リズ様だけに聞こえるように耳打ちした。
「リズ様、この国での解剖は・・・・・・なのです」
「えっ・・・」
「あの・・・場所ですから、・・・大変なのですよ」
「そ、それは、ご遠慮した方が良さそうですね」
私の説明に、恐怖をやっと覚えたのか、リズ様はそう言って、すすすっとマルク殿下のもとへ帰っていった。
「リズ 、大丈夫?」
「だ、大丈夫・・・だけど、あそこまでとは思っていなくて・・・」
「カサンドラ様、あれを説明したんだすか?」
「マルク殿下は、あそこをご存じなのですね?」
私がそう聞くと、エルフィン殿下とアルゴ様が吹き出した。

「どうされたのですか?お二人揃って」
「いや・・・昔を、思い出してな」
「そうですね。
 アルゴ殿とよく、迎えに行きましたね。泣きべそ三兄弟を」
「あぁ、そうだった」
アルゴ様と交流があったエルフィン様は、よく一緒に行動していたのか、思い出がたくさん被っているようだ。
「泣きべそ・・・ですか?」
「義父上と叔父上は、黙っていたくださいっ」
慌てて2人を止めるマルク殿下を見て、私とリズ様が笑う。

「な、なんで笑ってるんだ?」
「だって、想像はつきますもの。ねぇ、リズ様」
「はい。カサンドラ様。
 私の前では落ち着きを払っていたけれど、子供の時には
 兄弟3人で悪さでもして・・・
 あら?でもどうして、解剖のお部屋に関係が?」
「あら、リズ様は、お分かりにならなかったのね」
そう言った私は、分かった。
いたずら三兄弟は、お仕置きとしてあの部屋に入れられたのでしょう。
解剖に使う専用の部屋は、今までの作業で失敗した血の痕やら、色々な痕が残っている。
だからお仕置きに使われ、そこに入れられた3人は泣きべそで助けられたと言うことでしょう。
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