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第134話
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「良く分かっているな。エルフィン殿下は」
「貴方が現役時代、誰が一番、振り回されたと
思っていらっしゃるんですか?」
ため息を付きながら、答えるエルフィン殿下を見たマルク殿下は、はーーーっとため息を付いてから
「分かりましたよ。やれるだけ、やってみます」
と言ってくださった。
「お願いしますね。
せめて、立ち上がるのは、足首に肉が付いてからにしてください」
「足首・・・ですか?」
「はい。大きな筋肉は、目に見えてしっかりしますが、足首や膝などは
使わなかったことにより、動かしづらくなっています。
それを、無理矢理動かすことは、絶対にやめてください。
立つなんてことをすれば、そう言う場所に負荷がかかります。
それだけは、避けてください」
「では今は、何をすれば・・・」
「動くことより、体に栄養を注ぐこと。
そして、ゆっくりと、手足の曲げ伸ばしをすることですね」
「曲げ伸ばし位なら、今でも・・・あ?あれ?動かん」
「だから、さっきから言っています。
機械でも、動かさなければ錆び付きます。
アルゴ様の体は、今そう言う状態なのです。
くっついたものを、ゆっくりと剥がしていかなければ、動きませんよ」
「か、体が、錆び付いているのか?」
「そうです。
アルゴ様の体は、油切れで滑らかに動くことも出来ず、体でさえ
栄養が足りていない状態なのです。
ですのでこれから、体に栄養をいれ、油をいれてから、動かさなければ
いけないと、さっきから言っているではありませんか」
私は、一生懸命説明した。
力を付けるだけしか考えてこなかった方に、事細かに説明し、理解してもらうことが、こんなに大変だったとは・・・
この時はじめて知った。
「あ、あの、カサンドラ様」
突然リズ様から声をかけられ、私はビクッとしてそちらを向く。
「あ、ぁぁ、ごめんなさい。どうかされましたか?」
「あの、カサンドラ様も、お読みになられていますよね?
体の構造が、分かる本」
「えぇ。私は薬も作るので、一通りは読んでいるし、正妃だった頃に
医師に頼んで、解剖も見せてもらったわ」
「「「「「えっ!?」」」」」
私の言葉に、部屋のなかにいる全員が驚く。
「カサンドラ様・・・解剖とは?」
エルフィン殿下が、意を決したように聞いてくる。
「解剖は解剖ですわ。人の体を開いて、中の臓器を見るの」
「そ、それは、許可されたものですか?」
マルク殿下が、恐る恐る聞く。
「はい。死因がはっきりせず、医局の方が、国王陛下に許可を
いただき、どこが悪かったのかを、はっきりさせるために行ったものですわ」
「ち、父上が・・・」
「確かに兄上は、あやふやなものは、はっきりさせたがるからな」
そう言ったエルフィン様は、何かを思い出したような顔をしていた。
「貴方が現役時代、誰が一番、振り回されたと
思っていらっしゃるんですか?」
ため息を付きながら、答えるエルフィン殿下を見たマルク殿下は、はーーーっとため息を付いてから
「分かりましたよ。やれるだけ、やってみます」
と言ってくださった。
「お願いしますね。
せめて、立ち上がるのは、足首に肉が付いてからにしてください」
「足首・・・ですか?」
「はい。大きな筋肉は、目に見えてしっかりしますが、足首や膝などは
使わなかったことにより、動かしづらくなっています。
それを、無理矢理動かすことは、絶対にやめてください。
立つなんてことをすれば、そう言う場所に負荷がかかります。
それだけは、避けてください」
「では今は、何をすれば・・・」
「動くことより、体に栄養を注ぐこと。
そして、ゆっくりと、手足の曲げ伸ばしをすることですね」
「曲げ伸ばし位なら、今でも・・・あ?あれ?動かん」
「だから、さっきから言っています。
機械でも、動かさなければ錆び付きます。
アルゴ様の体は、今そう言う状態なのです。
くっついたものを、ゆっくりと剥がしていかなければ、動きませんよ」
「か、体が、錆び付いているのか?」
「そうです。
アルゴ様の体は、油切れで滑らかに動くことも出来ず、体でさえ
栄養が足りていない状態なのです。
ですのでこれから、体に栄養をいれ、油をいれてから、動かさなければ
いけないと、さっきから言っているではありませんか」
私は、一生懸命説明した。
力を付けるだけしか考えてこなかった方に、事細かに説明し、理解してもらうことが、こんなに大変だったとは・・・
この時はじめて知った。
「あ、あの、カサンドラ様」
突然リズ様から声をかけられ、私はビクッとしてそちらを向く。
「あ、ぁぁ、ごめんなさい。どうかされましたか?」
「あの、カサンドラ様も、お読みになられていますよね?
体の構造が、分かる本」
「えぇ。私は薬も作るので、一通りは読んでいるし、正妃だった頃に
医師に頼んで、解剖も見せてもらったわ」
「「「「「えっ!?」」」」」
私の言葉に、部屋のなかにいる全員が驚く。
「カサンドラ様・・・解剖とは?」
エルフィン殿下が、意を決したように聞いてくる。
「解剖は解剖ですわ。人の体を開いて、中の臓器を見るの」
「そ、それは、許可されたものですか?」
マルク殿下が、恐る恐る聞く。
「はい。死因がはっきりせず、医局の方が、国王陛下に許可を
いただき、どこが悪かったのかを、はっきりさせるために行ったものですわ」
「ち、父上が・・・」
「確かに兄上は、あやふやなものは、はっきりさせたがるからな」
そう言ったエルフィン様は、何かを思い出したような顔をしていた。
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