有って無き者

戒月冷音

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第133話

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「お父様」
「義父上」
リズ様とマルク様は、顔を真っ赤にしながらも、このままお父様の願いを叶えそうな雰囲気のまま、手を握りあっている。

「まぁ・・・そんな雰囲気は置いといて。アルゴ様のこれからですが・・・」
「はい」
返事したのはアルゴ様。
「薬は、指示通りでお願いします」
「変わりませんか?」
「多分、このまま行けば、明後日くらいには同じものが、
 食べれるようになると思います。
 そうなれば、数日中にベッドから動けるようになってくるので・・・」
「動けるんですか?」
「はい。ですが、いきなり立たないでくださいね」
「立ってはいけないのですか?」

アルゴ様は、元騎士だったことはエルフィン様から聞いていた。
が、ちょっと脳筋よりだとは聞いてない。
「いけません。
 筋肉が落ちてしまっている足で突然立てば、骨に影響が出てしまいます」
「筋肉?骨?」
奥様が、首をかしげる。
すると、リズ様が
「お母様、骨と言うのは体の固い部分のことで、折れると
 動けなくなります。
 筋肉とは、その骨を支えている肉のことです」
と、奥さまに分かるように、説明していた。
「そうなのね」
「俺は分かるぞ。剣を振るときに使っていたのが、筋肉だろ?」
「はいそうですが。今その筋肉は、ありますか?」
と聞くと、腕をゆっくりとあげて、骨皮になった腕を見て
「ない・・・な」
と寂しそうに答えた。
「ご飯をしっかり食べるようになって、少しづつ
 体を動かしていくと、戻ってきますのでそれまでは、
 曲げ伸ばしを、ゆっくりしたりするくらいの行動で、お願いします」
「そうか・・・そうだよな。
 ここ数年、寝たきりだったんだ。
 落ちた体力の前に、自分の体の機能を取り戻していくのが先だな」
「そうです」

私は、そう答えながらほっとしていた。
元気だった頃のように今、動かれでもしたら、骨がボキボキになってしまう。
そうなったら二度と、立てなくなること間違いなしだ。
それだけは、阻止しなければ・・・
そう思った私は、マルク殿下を見る。
「殿下、お願いしますね」
「えっ!?何が?」
「アルゴ様が、激しい動きをしようとした時は、殿下が止めてください」
「俺が?」
「この中で、殿下以外誰が止めるのですか?リズ様ですか?」
「リズはダメだ」
「では、奥様ですか?」
「義母上は、義父上に敵うはずがない」
「ですから、殿下にお願いしたのですが?」
私が念を押すように言うと、エルフィン殿下が
「マルク。アルゴ殿は、現役の時は俺と同格だった。
 そこまで戻せとは言わないが、多分それ近くまで、
 戻そうとされるだろうから、気を抜くなよ」
と忠告した。
「義父上、そこまでは・・・」
と良いながら、マルク殿下が振り向くと、アルゴ様は良い笑顔で笑っていた。
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