私の存在

戒月冷音

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第117話

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お庭のガゼボに人が集まり、何やらキャーキャーと騒いでいる。
私はそう言う空気が苦手なので、出来るだけ関わらないように、静かに通りすぎようとしていた。

すると突然
「あっ!?あの方ですわ。あの方が、私を突き飛ばしましたのっ」
そう言って私に指を指すのは、ミリア・クルマルク伯爵令嬢。
何を言っているののかしら?私は今、部屋から出てきたばかりなのだけれど。
そう思ったと同時に
「わーーーん・・・」
と、泣き始めた。
そのミリア様の傍に駆け寄り、膝をつくと
「まぁ、おかわいそうなミリア様。
 マルクス様の婚約者候補であったミリア様が、何をしたと言うの?」
と大きな声で叫び、周囲の人達の注目を集めていたのは、メイシス伯爵令嬢。
その近くに立って、こちらを見ているのはミラー伯爵令嬢とシルトバル伯爵令嬢。

はぁ・・・まだ付き合うの?
そう思いながらまた、扇を開き口許を隠す。

「そうやってまた、黙りを決め込むおつもりね」
ミラー伯爵令嬢、もう少し回りをご覧ください。
貴方達以外、皆様呆れておられますわ。
「先程と言い、今と言い、貴方は、ミリア様に嫉妬でも
 しておられるのかしら?」
何故、私が嫉妬を?
「違いますわ。
 ミリア様がお綺麗だから、嫌がらせをしておられるのよっ」
綺麗だとは思いますが、うそ泣きがばれるほど、にたりと笑ってはいけませんわ。
心の汚さがばれてます。

「貴女方は、何がなさりたいの?」
私はその場に留まったまま、声をかける。
回りには文官に騎士、それに、王城に仕事に来ていたであろう貴族達に、侍女や女官まで、ありとあらゆる職種の来てが集まっていた。
もちろん、先ほどまで私に講義をしておられた先生も、見に出てきていた。

「貴方が、ミリア様にぶつかったのでしょっ!」
「これだけ離れていて、どうやって?」
「ぶ、ぶつかってから、そちらに行かれたのですわ」
「私は、そこの扉から出てきたのですが?」
そう言って、自分の後ろに有る扉を指す。
「それは嘘ですわ。私、こちらから来たのを「嘘ではありませんよ」
即座に、先生が否定する。

「どうしてですの?」
「ミシェル様は先ほどまで、私とクレア・コーラル公爵夫人と共に
 王子妃教育を受けておられましたから」
先生の言葉に、周りがざわつく。

クレア・コーラル公爵夫人は、カサンドラ・コーラル侯爵令嬢のお母様で、学園の教師でありながら、マナーの鬼と言われるほど、マナーに対して厳しい方であると、皆様が知っている。
その方に教育を受けている人が、わざわざこんな事をするはずがないと、周りは思い始めた。
その時
「あら?ミシェル様。まだ帰っていらっしゃらないの?」
とクレア様が、カサンドラ様と一緒に現れた。

「クレア・コーラル公爵夫人、カサンドラ・コーラル公爵令嬢。
 何処かに、行かれるところでしょうか?」
私はすぐに扇を閉じて、カーテシーで挨拶をする。
クレア様は周りを見て状況を把握した後、何かを察したように扇を開き、口許を隠すと、カサンドラ様も同じように行動した。
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