私の存在

戒月冷音

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第121話

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マルクス様がそう言うと、クルマルク伯爵令嬢様か顔を真っ赤にして、回りを見回した後、人垣を掻き分けてどこかへと走り去っていった。

「ミシェル。大丈夫だった?」
「はい。クレア様とカサンドラ様が、来てくださいましたし、
 こうしてマルクス様も、来てくださいましたから」
「あらあら、私達はそんなに役に立っていませんわ。
 マルクス殿下のお手柄です」
そう言うクレア様は、扇で口許を隠しておられるが、笑っていらっしゃるようだ。
「カサンドラ様にも、ご迷惑をお掛けしました」
「いいえ。ミシェル様はきちんと、公爵家の令嬢としての振る舞いを
 されておりましたわ。
 私が出る幕もございませんでしたもの」
カサンドラ様も、笑っていらっしゃるようで口許を隠す。

「あのご令嬢は、自分がよければそれで良いの、典型的な方ですわね。
 これから先、お相手が見つかるかが、心配になりますわ。
 親御様も、さぞかし大変でしょうに」
クレア様の言葉に、ここに集まった者全てが頷く。

だがそれも、その日をもって終わりを見せた。
クルマルク伯爵は、ミリア様を修道院に入れ、ミラー伯爵は一人娘を嫁がせた。
メイシス伯爵は、問題を起こしたのは次女だったと言うことで、その娘を平民に嫁がせた。
そして、シルトバル伯爵は、長女を遠戚の次男に嫁がせ、そこで女性ではなく男性として扱われるようにしたらしい。
その家は武家で、男女ともに剣を取るのだと言う。
そこで女性騎士として、仕立てるのだとか・・・

まぁ皆、学園を中退して花嫁になったようだ。

私は、それを聞いて仕方ないと思った。
ミリア様は、第2王子を怒らせた。
普段怒らない人が怒ると、怖い。
その典型的な例、がお母様だ。
お母様とマルクス様は、どこか似ている。
何時もにこにこしていても、締めるところは締める。
やること・・・しなければならないこと、守らなければならないことは、しっかりと厳守する。
そして怒ると、とっても怖いのだ。


「マルクス様。お持ちしたプリン。いかがでした?」
あれから数日後。私はプリンを作って、マルクス様を訪ねた。
「美味しい。懐かしい。作り方が違うのか?しっかりしたプリンだ」
「プリンには二種類あって、蒸して固めるのと冷やして固めるものがあります。  
 これは、蒸して固めたもので、卵と牛乳・・・間違えました。
 ランと乳と糖を混ぜたものを、糖と水を混ぜて焦がしたキャラメルの上に入れ、
 蒸したものになります。
 しっかりとランが固まったので、固めのプリンになりました」
「冷やす方は?」
「そちらも、ランと乳と糖が基本ですが、そこにゼラチン・・・
 こちらではゼラウムでした。
 ゼラウムを溶かし入れて、よく混ぜてから、氷冷器に入れて固めます」
「そうなのか」
話をしながらマルクス様はプリンを3つ、ペロリと平らげた。
そして、にっこりと笑うと
「ミシェルが婚約者になってくれて、本当に良かった」
と呟いた。
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