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第120話
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やはりミリア様はマルクス様の言葉を聞いていない。
自分に酔い、自分の思う通りにことが進んでいると勝手に理解し話している。
こんなの。会話でも、話しでもない。
一方的に、気持ちを言っているだけ。
それを、相手も同じだと思い込み、自分が愛されていると妄想しているだけ。
逆にそれに巻き込まれているマルクス様が辛い。
自分の気持ちは伝わらず、言葉にしても無視される。
離れても勝手に妄想されて自分が恋をしていると決めつけられ、すれ違っただけで照れていると思われる・・・
本当に勝手で、自分本意な思いだ。
マルクス様の目の前でキョトンとしているミリア様。
何故、大きな声を出されたのか分かっていない様子でマルクス様を見ていた。
「私はクルマルク伯爵令嬢と話をしたことはない」
「いつも通りミリアと呼んでくださいませ」
「呼んだことはないっ」
ミリア様は大声に、ビクッとする。
「私は名を呼んだことも、あなたと話したこともないのに、
どうしてそんなことが言えるのだ」
マルクス様は苦しそうに、そう告げる。
「あの時マルクス様は、私を助けてくださいました」
「いつ?」
「王家の、夜会の時でございます」
「あれは、キリアンが困っていたから、助けただけだ」
「その後でございます。
私が倒れそうになった時、支えてくださいました」
「それは転ければ、痛いだろうから・・・」
「えっ!?それだけ?」
「それだけだ。他になにがある?」
「私を好いておられるから・・・」
「何故、そう思うのかがもう分からない。俺はキリアンを助けただけだ。なのに、
そのような気持ちを持つのは気持ち悪い」
「き、気持ち、悪い?」
「今まで話しもしたこともない異性に、支えて貰っただけで好きになるとか
気持ち悪いだろ。
何にも知らないんだ。相手の事」
「で、ですが、私は、マルクス様の事はいつも見ています」
「なに、を?」
マルクス様は恐る恐る聞いた。
「それはお顔とか、朝の鍛練の後、お着替えになる時とか・・・」
「は?きも・・・」
「き、きも?」
マルクス様は、ミリア様から距離をとる。
「それって、俺の事をずっと、監視してるってことだろ。
影から見て、自分の欲求を満たしているだけ」
「ではありませんわ。マルクス様も私に会いたいはず」
「貴方の事など、興味もない」
「は?」
「俺は、貴方が誰かも今、の今まで知らなかった。
キリアンを追い回した女で、今はミシェルを貶めようとしている女としか
認識してない」
そう言われた瞬間ミリア様は、ポロポロと泣き始める。
「どうして、そのようなことを、言われるのですか?」
「あんたに、興味がないから」
「あんなに優しくしてくださったのに?」
「たった、転けるのを止めただけで、そこまで妄想するのは
ある意味すごいと思う」
「・・・」
「俺は今さっきまで、貴方の名前も知らなかった。
なのに、知らない女がミシェルを嵌めようとしていることに腹が立った。
それをやめさせようと声をかけたら、何故かあんたが飛んできた。
俺にとってはただ、それだけだ」
自分に酔い、自分の思う通りにことが進んでいると勝手に理解し話している。
こんなの。会話でも、話しでもない。
一方的に、気持ちを言っているだけ。
それを、相手も同じだと思い込み、自分が愛されていると妄想しているだけ。
逆にそれに巻き込まれているマルクス様が辛い。
自分の気持ちは伝わらず、言葉にしても無視される。
離れても勝手に妄想されて自分が恋をしていると決めつけられ、すれ違っただけで照れていると思われる・・・
本当に勝手で、自分本意な思いだ。
マルクス様の目の前でキョトンとしているミリア様。
何故、大きな声を出されたのか分かっていない様子でマルクス様を見ていた。
「私はクルマルク伯爵令嬢と話をしたことはない」
「いつも通りミリアと呼んでくださいませ」
「呼んだことはないっ」
ミリア様は大声に、ビクッとする。
「私は名を呼んだことも、あなたと話したこともないのに、
どうしてそんなことが言えるのだ」
マルクス様は苦しそうに、そう告げる。
「あの時マルクス様は、私を助けてくださいました」
「いつ?」
「王家の、夜会の時でございます」
「あれは、キリアンが困っていたから、助けただけだ」
「その後でございます。
私が倒れそうになった時、支えてくださいました」
「それは転ければ、痛いだろうから・・・」
「えっ!?それだけ?」
「それだけだ。他になにがある?」
「私を好いておられるから・・・」
「何故、そう思うのかがもう分からない。俺はキリアンを助けただけだ。なのに、
そのような気持ちを持つのは気持ち悪い」
「き、気持ち、悪い?」
「今まで話しもしたこともない異性に、支えて貰っただけで好きになるとか
気持ち悪いだろ。
何にも知らないんだ。相手の事」
「で、ですが、私は、マルクス様の事はいつも見ています」
「なに、を?」
マルクス様は恐る恐る聞いた。
「それはお顔とか、朝の鍛練の後、お着替えになる時とか・・・」
「は?きも・・・」
「き、きも?」
マルクス様は、ミリア様から距離をとる。
「それって、俺の事をずっと、監視してるってことだろ。
影から見て、自分の欲求を満たしているだけ」
「ではありませんわ。マルクス様も私に会いたいはず」
「貴方の事など、興味もない」
「は?」
「俺は、貴方が誰かも今、の今まで知らなかった。
キリアンを追い回した女で、今はミシェルを貶めようとしている女としか
認識してない」
そう言われた瞬間ミリア様は、ポロポロと泣き始める。
「どうして、そのようなことを、言われるのですか?」
「あんたに、興味がないから」
「あんなに優しくしてくださったのに?」
「たった、転けるのを止めただけで、そこまで妄想するのは
ある意味すごいと思う」
「・・・」
「俺は今さっきまで、貴方の名前も知らなかった。
なのに、知らない女がミシェルを嵌めようとしていることに腹が立った。
それをやめさせようと声をかけたら、何故かあんたが飛んできた。
俺にとってはただ、それだけだ」
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