私の存在

戒月冷音

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第119話

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「クレア様。それは私を馬鹿にしておられますか?」
「馬鹿にはしておりませんが、あきれてはおりますわね」
ミリア様はもっと顔を赤くする。
「顔だけを見て、中身を見ない男性は、あなたに正しい評価をしていません。
 そのような方をお相手するあなたの価値も下がります」
「価値なんて・・・私は、マルクス様が良いのです」

「では、マルクス様のどこが良いのですか?」
私はミリア様に聞いた。すると
「えっ?顔ですが・・・」
と、スルッと答えた。
その言葉に、唖然とした。
この女は、マルクス様の顔しか見ていない。
幼いときに前世を思いだし、沢山の事を葛藤しながら我慢し、王子として耐えてきた彼の人生を、顔が良いだけだと言うのか・・・

「あなたは、人の人生を、顔だけで判断するのですか?」
「だって、これから先ずっと見ていくのは顔ですわ。
 自分好みの顔であれば、何があろうと見ていられますわ」
はあーーーーー、この人は、自分の事だけですね。
相手の事など、考えても居ない。
「では、顔がマルクス様で、中身が幼女趣味の自虐男でも、
 あなたは耐えられますのね」
私がそう言うと、ミリア様は
「嫌ですわ」
と言った。

「その理由は?」
「それでは、私を見てくださいません」
「ですが先程、あなたは顔が良ければいいと言われました。
 それは、そう言うことではないのですか?」
「この方は何を言っているの?
 マルクス様は、私とお話ししてくださいます。
 私を好いていてくださるから、話してくださるのです」
「それは違います」
「違わないわ」
「マルクス様は、誰にでも声をかけてくださるお方です。
 貴族でも平民でも。
 相手がスラムの住民でも、お話ししてくださいます。
 それを勝手に、自分に好意があると決めつけ、自分だけを見てくださると
 思う方がおかしいのです」
「おか、しい?」
「えぇ。マルクス様がお話ししてくださるのは、沢山の事を知るためです。
 女性の事、男性の事、貴族の事。平民の事・・・話すことで情報を得て、
 それを元に対策を練る」
「対、策・・・」
「女性の事にしても、私と貴女とでは全く違う。
 マルクス様は、それだけでも考える方です。
 私に対する態度と、貴女に対する態度、それを同じにすると
 必ず貴女が誤解する。
 だからおそらく今、貴女には出来るだけ接触を避けていませんか?」
「それは、私に好意を持っていらして、会えばわたしをあい「興味もないな」
突然聞こえた声に、私とミリア様は振り返る。

「マルクス様」
「マルクス様~」
姿を見たとたん立ち上がり、マルクス様に向かって走り出すミリア様。
「そこで止まってくれないか」
その言葉に、急ブレーキをかける。
「私に、会いに来てくださったのですね」
「違う」
「私はいつでも、マルクス様を受け入れますわ」
「人の話を聞いてくれ」
「私は、あなた様だけの、ミリアですわ~」

そこで
「いいかげんにしてくれっ!」
マルクス様は大声で叫んだ。
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