私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
10 / 168

第10話

しおりを挟む
「ミシェル。おはよう」
「お姉様。おはようございます」
あれから5年経ち、私は7歳になった。

言葉もきれいに話せるようになり、今はマナーに力を入れている。
「今日はどうする?」
「出来ればあまり、可愛いのは…」
「そう…ミシェルは可愛いから飾りたいと思うけど、貴女がそう言うなら
 辞めておこうかしら」
「嬉しい、お姉様。ありがとう」
「あら、お礼を言うのは私の方よ。今でも私に、服を選ばせてくれるのですもの」
「私はあまり気にならないので、お姉様が選んでくださって助かっているのですよ」

「それは良かったわ。今日はお母様がお茶会を開く予定だから私達も参加みたい」
「お茶会…」
「大丈夫よ。私とお兄様が、守るから」
「ご迷惑を、おかけします」


私のお茶会デビューは、散々だった。
お兄様とお姉様と一緒に、5歳の時に参加した当家主催のお茶会で、私は傲慢な男の餌食になった。
会場に行くと、お姉様とお兄様は友達や異性に囲まれていた。
だから私は隅に居て、母達が出てくるのを待っていた。

その時
「おい。そこのお前。俺の相手をしろ」
と言う声の方を向くと、一人の男の子が私を見ていた。
「聞いているのか、お前だ、お前」
「申し訳ございません。私はメイドではありません」
「メイドなんて要らん。お前が俺の、相手すれば良い」

それを聞いた瞬間、私は怖くて仕方なかった。
どうして私が、この人の相手をしなくてはいけないのだろう?
どうしてこの人は、私に命令してくるのだろう?
どうして、どうして、どうして…
そう考えてしまうと、体がこわばってしまった。

そこへ
「お前!伯爵令息だな。何故、俺の妹に命令している?」
「貴男が私の妹に何をしたか…しっかりと見ていたわ。
 お父様に言って、家から抗議をしていただくわ」
「えっ!?貴方がたは…」
「オーギュスト公爵家嫡男、アクイラス」
「同じく長女、ハリエット。
 そして…貴男が見下していた相手は、私達の妹、ミシェルよ」
「警備。ウィルス伯爵令息を連れて行け。
 俺の妹に暴言を吐き、不快な思いをさせた」
「はい。了解しました」
「それと父上に、後で話があると伝えておいてくれ」

警備の人は頷くと、そのままその男の子を連れて行った。
私はその時の記憶が強く残ったらしく、しばらくはお茶会と聞いただけでからだが強張るようになってしまった。
父と母はウィルス伯爵家に抗議をし、嫡男は伯爵を継げなくなり、次男にその役が回った。
その嫡男は、気になる子をいじめたくなる性格だったらしく、私のことが気にいったらしい。
私にきつい言葉を掛け、泣き出したら良いなと思った。
そして泣いたら、自分が励ましお近づきになる…それを狙った行為だと本人が両親に言ったようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

処理中です...