私の存在

戒月冷音

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第12話

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私は、15歳になった。前世で死んだ年である。
何かと自分の中で、複雑なことになった。

この世界に来てから15年。前世での15年。わたしには30年の記憶がある。
しかし、前の記憶は今の世界で出してはいけないものだと、7歳の時に理解した。
私が居た日本では、転生物の本やアニメがよく流れていた。
主人公が日本で死んで転生し、日本の知識を使って成り上がっていく。
そんな話だったと思う。
それに合わせ、7歳の時に自分はまだ小さいので手が出せない事を、大人にやってもらおうと思い、こんなのがあったら良いなぁと、いっただけだった。

それだけで先生は、今や賢者扱いになってしまった。
私は自分の欲を満たすために、家庭教師だったリカオン先生の生活を変えてしまったのだ。
だからもうこれ以上、人の人生を変えたくない。
そう思った私は、人と関わるのを辞め、自分で出来ることだけやっていこうと決めていたのだった。


「ミシェル。今良いかい?」
「お父様…どうぞ」
ある日の夕方、私の部屋にお父様がやってきた。
「何か、ありましたか?」
「来年は、デビュタントなのだが…」
「そうですね」
この国では、16歳が成人。

大人の世界にデビューするため、16歳になった男女は王宮でデビュタントと言う儀式を行う。
「アクイラスとハリエットは、婚約者とともに出席したが
 ミシェルはどうする?」
「私は……やっぱり、出席しなければいけませんか?」
「王家が決めたことだからなぁ。
 相当な理由がない限り、欠席することは出来ない」
そうしてしばらく話していると、廊下が少し騒がしくなる。

「父上が話しているなら、丁度いい」
コンコン…「失礼します。父上、こちらにおられますか?」
「ああ。だが今は、ミシェルと話しているのだが」
「ミシェルにも、関係あることでお話が…」
「分かった入りなさい。ミシェルも良いね?」
「はい。私に関係がある、ということでしたら…」
そう返すと、お兄様が入ってくる。

「突然で申し訳ございません。
 第2王子殿下からの伝言でしたので、すぐにお伝えしたほうが良いと
 判断いたしました」
「第2…側妃様の…」
「はい。ですが、お話を頂いたのは王妃様でして」
「何故?」
「今、側妃様は体調を崩しておられ、第2王子殿下は王妃様が見ておられます。
 そして御年15。ミシェルと同い年なのです」

なんか嫌な予感…

「まさか王妃様は…ミシェルを」
「マルクス様のお相手にどうかと、相談を受けました」
「しかし、一度も会ったことのない者を王子の婚約者になど…
 マルクス様は、なんと言っておられた?」
「王子殿下は、王妃の判断に任せるので、確認を…と」

私は、不思議に思った。
何故、一度しか社交にでていない。
しかもその時に、悪目立ちし表から消えた者を、わざわざ側妃の子に付けようとするのか…
もしかして、第一王子殿下から離そうとしているから、教養もなく常識もないと噂される私を、傍につけようとしているのだろうか…

この時私はふと、前世の姉が言ったことを思い出した。

「邪魔だと思ったら、自分より格下に見ればムカつくことも無くなるわ。
 何も知らない子だから、私が教えてあげればその通りにしてくれるしね」
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