私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
17 / 168

第17話

しおりを挟む
とりあえず仕事に行く父を朝送り出し、私達は王城の離宮に行く準備を始める。
私のドレスはいつも通り、お姉様に選んでもらったが、あまり派手にならないものを、選んでもらう。
「どうして大人しめなの?」
「あまり目立ちたくありません。離宮と言っても、沢山の人が居るでしょうから」
「まぁ、たくさんいるでしょうね。側妃様と第二王子殿下の、お住まいだから」
「ですよね」
「分かった。任せて。でも、ミシェルの魅力は引き出してあげる」
「張り切らなくていいから」
そんな話をしながら準備を始め、出発の数分前に準備ができた。


「ミシェル。時間になるけど…」
お母様が心配して、声をかけてくれる。
「お母様。ミシェルの準備完了よ」
「まぁ…落ち着いた雰囲気も、いいわねぇ」
と何故か見入っている。
「お母様。どうですか?」
「良いと思うわ。王妃様が、気に入りそうな気もするけど…」

私は少し…いや、絶対に王妃様には、気に入られたくないと思っていた。
王妃様を見たのは、去年家族で呼ばれた時に一瞬だけ、私の居た場所から見えただけだったが、割と影がありそうな人に見えた。
人はだれでも、影を持っているものだが、それを表に出すか出さないかで、印象はガラッと変わる。
多分王妃様は、表に出さない人だと思う。
何時もニコニコしている印象しかなく、何度かあったことのあるお兄様に印象を聞いても
「優しい方で、皆のことを心配して下さる方だよ」
と返ってきた。

多分、自分に有益をもたらす人と、そうでない人との差があるような気がする。

「どうしたの?ミシェル」
「何かまた、悩み始めたのか?」

ん?さっきより低い声が聞こえた…と思ったらお兄様だった。

「ミシェル。時間に遅れては駄目だから、考えるなら馬車の中にしなさい」
兄さんにそう言われ、お姉様のお留守番を羨ましく思いながら、私は馬車に乗った。


1時間ほどかかって、王城に着いた。
けれどまだ降りることはなく、馬車に乗ったまま王城の庭を走っていく。
「うわぁ~、こんな所があったんですね」
「ここは、一般の方が使われるお庭よ。
 文官さんの休憩や、メイド達の憩いの場になってるわ」
「お母様も、王宮に詳しいのですか?」
「あら、言ってなかったかしら。私は前王妃様の、侍女だったのよ」
「そうだったのですか」

だから、そんじょそこらの令嬢より、所作が綺麗なのか。

「父上が言ってました。
 母上はたくさんいた侍女の中で、一番動きが綺麗だったと」
「あの人はそんな事を…」
お母様は、ポポポポッ…と顔赤くしたが、すぐ扇で隠す。
そんな所作も優美です。
そんな父の、惚気話を聞いていたら、離宮に到着した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

処理中です...