私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
60 / 168

第64話

しおりを挟む
「私は、お兄様とお姉様が大好きです」
「「ミシェル~」」
お兄様とお姉様も、私を抱きしめてくれて、とっても嬉しかった。
これからも、二人を大切にしたいと思った。

けれどこれからは、大切なものが増える。
「お兄様、これからはマルクス様も、私の大切な方となります。
 あまり、意地悪しないでください」
「おっ、俺は意地悪してないぞ」
「お兄様。私、知ってましてよ」
「何を」
「マルクス様。お兄様は少し前から、マルクス様にミシェルを取られたと、
 よく悔しがっていたのですよ」
「ハリエット、お前…」
「アクイラスも、可愛いとこあるよね」
「マルクス、お前まで」

そんな、私達のやり取りを見ておられた国王様とマルガ様は、私達を見て笑っている。
「母上、俺もあんな家庭を作りたい」
「ヘンドリック。それはカサンドラと相談して…」
「でも、母上がすぐに横槍を入れるから、俺達は動けないんだ。
 実際、ミシェル嬢のことにも、カサンドラを巻き込んでるし」
「ま、巻き込んでいないわ。ただお茶会で…」

なんだかんだで、楽しいお話が国王陛下を交えたできたことは、私とマルクス様にとっては嬉しいことだった。
けれど、国王陛下が、転生の事を知っていたのはびっくりした。
後できちんとお話して、確認したほうが良いとこの時思っていた。


だが。

それが、出来なくなってしまった。
マルクス様と私婚約を、正式に発表する寸前になって、マルクス様に隣国の王女から…そして私には隣国の王子から婚姻の申し込みが来たのだ。
なぜ、こんなタイミングで?…と思っていたところ、すぐに犯人がわかった。

私とお父様はすぐに、王城に呼ばれ、説明を受けた。
すると、隣国に顔が利く王妃様が罰が悪そうに入ってこられたことで、すべてが分かってしまった。

「面を上げてくれ」
国王陛下の言葉に顔を上げると、王妃様が泣いておられた。
「どうなさったのですか?」
「いや、これはな…」
国王陛下が言葉を濁した瞬間、私達の後ろから
「母上には、愛想が尽きたと俺が言ったからです。
 だから、構う必要はありませんよ」
と、ヘンドリック様が教えてくださった。

「へ、ヘンドリック、そんな事言わないで~」
「もういい加減にしていただけますか?
 どうして、隣国なのですか?
 俺から、マルクスを離すおつもりですか?」
「いいえ。そう言うつもりでは…」
「では、どのようなおつもりで、
 マルクスに、ミシェル嬢以外の女性を、準備されたのですか?
「それは、その…ミシェル嬢が、私の侍女ななったらと思って…
 そしたら傍に、姪も居てほしいかなぁ~…なんて」
「あ゛ぁ゛、そうですか。オレの心の安寧はどうでも良いんですね」
「違う、違うのよ~」
王妃様は、ヘンドリック様にすがりながら泣いていた。
それを見た国王様は、大きなため息を付いて…どう見ても呆れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

処理中です...