私の存在

戒月冷音

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第63話

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「お話は、終わったのですか?」
マルクス様が、心配そうに聞く。
「フフッ…あぁ、終わったよ。
 ミシェル嬢は、お前のことをよく分かっているようだね」
国王様は、嬉しそうに言った。

「はい。俺にとっては、手放したくない人です」
「そのようだな」
「あの、婚約は…」
「この後、マルクスも交えて話したいことはあるが
 まずは、俺として反対することは無い。
 ミシェル嬢は自分の考えをしっかりと持っていて、彼女も
 それを望んでいる。それが分かっただけで今は十分だ」
「では…」
「マルガ」
「はい」
「お前も、この婚約に異論はないな」
「ありません。マルクスが喜ぶことなのですから」
「エリスは?」
国王陛下がそう聞いた瞬間、ここに居る全員が一斉に王妃を見た。
「わ、私に口を出す権利がありまして?マルクス様が選んだ方ですもの…」

「王家に入りましても、料理人として使わないでください」
「分かってるわよ。メリテッサ」
何故かお母様とエリス王妃が、親子のように見えた。
もちろん、お母様が親。

「では決定としようか。マルクス」
「はい」
「ミシェル嬢」
「はい」
「今日ここに、俺とエリス、そしてマルガを立会として婚約成立とする。
 今の幸せが、永遠に続くことを願う」
「「ありがとうございます」」
私とマルクス様の声が揃い、ここに婚約が成立した。

しかし、横を見るとお父様が泣いている。
「オーギュスト、泣くことはないだろ」
「国王陛下、私にとっては宝が一つ無くなってしまった状態です。
 泣きたくもなりますよ」
「お父様。マルクス様のとこへ行っても、お父様はずっと私のお父様です。
 それは、切れることはありません」
「ミシェルーーっ」
本気で泣き出してしまったお父様を、お母様が介抱し、お兄様とお姉様は呆れている。
マルガ様は、お父様の泣きっぷりを見て
「マルクス、もう少し後でもいいのではないかしら」
と言ってくださるが、
「マルガ様、主人を甘やかさないでください」
とお母様がピシャリといった。
「貴男もいい加減にしてください。まだ子供達のほうがしっかりしていますわ」
その言葉にお父様は顔を上げると、眼の前では子供5人が嬉しそうに話していた。

「マルクスやったな」
「兄上とカサンドラ様のような関係を、築けるよう頑張ります」
「俺の妹を、大切にしろよ」
「アクイラスが、義兄になるのか…」
「何だよ」
「お兄様は、ミシェルに甘いのですわ」
「ハリエットもだろ」
「私には、たった一人の妹ですもの。大切ですわ」
私の兄姉は本当に、優しい人。
私にはもったいないくらい、素晴らしい人。
私の大好きな、お兄様とお姉様…
そう思った瞬間、私は2人を抱きしめていた。
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