私の存在

戒月冷音

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第65話

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お父様と私は、その光景を見て何もいえず、ただ黙って待つしか出来なかった。
ヘンドリック様と王妃様のやり取りは終わらず、国王様は仕方がないかのように、私達の所に来ると
「ヘンドリックは昔から、マルクスが大好きでな。
 絶対に2人で国を支えるんだと、ずっと言っていたんだ。
 まさかそれを、母親に引き離されるかもとは、
 思っても居なかったんだろうなぁ」
と、しみじみ言われた。
「あぁ、そう言うことでしたか」
お父様はやっと納得がいったようで、逆にホッとしていた。

「ですが、隣国との婚姻の申し出。
 マルクス様は同じ立場なので、どうにかなるのでしょうが、私の場合は…」
「そうかもしれんが、まだ申し込みだ。
 こちらの手違い…というか、王妃の責任で手を引いてもらう。
 そしてそれと同時に、二人の婚約を発表しようと思っていたのだが、
 この王妃が、またいらぬことをしたようでな」

「父上っ!今度は何をしたのですか?」
「あぁ…マイルズ、言わないで…」
国王陛下の声に、すぐ反応したヘンドリック様の声は、もう完全に怒気をはらんでいた。
「お見合いをさせるから、すぐにこちらによこせと…
 手紙にかいたようで、数週間後には到着するようだ」
国王陛下の返答に、ヘンドリック様の怒りが、爆発した。
「母上。
 従兄弟殿達が婚姻を結ばず、速やかにお帰りになるまで、
 私は一切、貴女の相手は致しません。
 もちろん、カサブランカもです。
 特に、彼女には話しかけたり、お茶会に招こうとした時点で
 罰は伸びますので、ご了承ください」
それを言うとヘンドリック様は、エリス様に一礼した後、くるっと背を向けて歩き出した。

「へ、ヘンドリック、まって…私は…」
話そうとしているうちに、ヘンドリック様は部屋から出ていってしまった。
王妃様はその場で放置され、誰も手を貸すことをしない。
「こういう時のヘンドリックは、徹底していてな。
 王妃に手を貸した使用人は二度と、自分の近くに置かなくなるんだ。
 使用人もそれを分かっているから、こうなる」
「「なるほど…」」
私とお父様の声が重なり、国王様の後ろに居た宰相様が、それを肯定するようにゆっくりと頷いた。


その後、私達は王妃様を放置し、応接に通されると、そこにはマルクス様が居た。
「ミシェル嬢、ごめんね。心配だったよね」
すぐに私のもとに来てくださったマルクス様は、そう声をかけてくれた。
「心配はしましたが、今マルクス様のお顔を見て、ホッといたしました」
「俺の顔?」
「はい。あの時のお茶会から、一度も会えていませんでしたから…」
「あぁ、そうだった。ごめん。色々と忙しくて…」
それを聞いた国王陛下は
「マルクス、少し息抜きに二人で話してきなさい。
 この前の庭ではなく、反対側の庭の花がきれいに咲いているよ」
そう言って、私達を2人きりにしてくださった。

私は久しぶりにマルクス様と2人でゆっくりと歩き、国王陛下おすすめのお庭まで、マルクス様との会話を楽しんだ。
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