62 / 168
第66話
しおりを挟む
「…そうだったんだ。
兄上…無茶をしないでくださいと、言ったのに…」
「無茶では、ないようでした」
「本当に?」
「はい。王妃様を、見事にコントロールされておられましたよ」
「フハハ。兄上らしいな」
「私とお父様は、初めて見ましたから、びっくりしましたけど…
この前のヘンドリック様より、怖かったです」
「そうだったのか。
兄上は何時も、俺を助けてくださるから、いつか何かでお返しせねばと
思ってはいるのだが」
「そうですね。いつか2人でお返ししましょう」
「2人で?」
「はい。ヘンドリック様も知らない、世界のもので」
「あぁ、そうだな。その手があったな」
マルクス様と私は、久しぶりに懐かしい話をたくさんした。
そしてその話の後で、今回のことにも触れた。
マルクス様は、突然の婚姻の申込みにどうすることも出来ず、何とか断ることが出来ないか、と思案していたそうだ。
「私とのお話を、無かったことには…」
「それを、一番したくなかった」
「どうして?」
「俺は…君に出逢えたことは、奇跡だと思っている。
だから君を絶対に手放したくない」
絶対に…
そう言ってもらえて、嬉しかった。
だけど私は、ただ前世が同じ日本人というだけ。
隣国の王女様のように、元から王女というわけでもなく、ただの公爵令嬢次女だ。
だから私を優先する必要はない。
「ですが、王女様のほうがマルクス様を気に入ることも、あるのでは…」
「俺と王女は対等です。
まぁ、俺は側室の子なので、少し劣るかもしれませんが…
もしそうなったとしても俺は、貴方を諦めることはしない。
俺は、貴方が良いんです」
「でも…」
こういう時、私は何故か、前世に引っ張られてしまう。
誰からも相手にされない、可愛そうな子。
そんな子を、誰も相手にしない。
そして、姉に好き勝手使われ、命を落とした次女…
そこに戻ってしまうのだ。
私はそれ以上、何もいえなかった。
マルクス様は優しいから、そう言ってくださるのかもしれない。
けれど、王女様から言われれば、変わってしまうかもしれない。
昔の…前世で、気になった同級生のように。
わたしを好きだと言っていた同級生は、たまたま一緒に帰る事になった日に姉が現れ、少し話しただけでその同級生は姉に落ちた。
次の日には、姉を絶賛し私を姉より劣るものとして。貶したのだ。
だからもし、王女様が姉と同じような人なら、私はどうしようもない。
私は、ただの公爵令嬢なのだから…
下を向き、無意識にドレスを握り締めていた私の手に、自分の手を重ねるマルクス様は私の状態を見て
「もしかして、ミシェル嬢。
貴女が心配しているのは、俺の心変わり…ですか?」
「えっ!?」
「君の家族は絶対、心変わりなんかしないだろうし、
君の知り合いの中にも居ない。となると、前世か」
その言葉に、体がビクッと反応した。
兄上…無茶をしないでくださいと、言ったのに…」
「無茶では、ないようでした」
「本当に?」
「はい。王妃様を、見事にコントロールされておられましたよ」
「フハハ。兄上らしいな」
「私とお父様は、初めて見ましたから、びっくりしましたけど…
この前のヘンドリック様より、怖かったです」
「そうだったのか。
兄上は何時も、俺を助けてくださるから、いつか何かでお返しせねばと
思ってはいるのだが」
「そうですね。いつか2人でお返ししましょう」
「2人で?」
「はい。ヘンドリック様も知らない、世界のもので」
「あぁ、そうだな。その手があったな」
マルクス様と私は、久しぶりに懐かしい話をたくさんした。
そしてその話の後で、今回のことにも触れた。
マルクス様は、突然の婚姻の申込みにどうすることも出来ず、何とか断ることが出来ないか、と思案していたそうだ。
「私とのお話を、無かったことには…」
「それを、一番したくなかった」
「どうして?」
「俺は…君に出逢えたことは、奇跡だと思っている。
だから君を絶対に手放したくない」
絶対に…
そう言ってもらえて、嬉しかった。
だけど私は、ただ前世が同じ日本人というだけ。
隣国の王女様のように、元から王女というわけでもなく、ただの公爵令嬢次女だ。
だから私を優先する必要はない。
「ですが、王女様のほうがマルクス様を気に入ることも、あるのでは…」
「俺と王女は対等です。
まぁ、俺は側室の子なので、少し劣るかもしれませんが…
もしそうなったとしても俺は、貴方を諦めることはしない。
俺は、貴方が良いんです」
「でも…」
こういう時、私は何故か、前世に引っ張られてしまう。
誰からも相手にされない、可愛そうな子。
そんな子を、誰も相手にしない。
そして、姉に好き勝手使われ、命を落とした次女…
そこに戻ってしまうのだ。
私はそれ以上、何もいえなかった。
マルクス様は優しいから、そう言ってくださるのかもしれない。
けれど、王女様から言われれば、変わってしまうかもしれない。
昔の…前世で、気になった同級生のように。
わたしを好きだと言っていた同級生は、たまたま一緒に帰る事になった日に姉が現れ、少し話しただけでその同級生は姉に落ちた。
次の日には、姉を絶賛し私を姉より劣るものとして。貶したのだ。
だからもし、王女様が姉と同じような人なら、私はどうしようもない。
私は、ただの公爵令嬢なのだから…
下を向き、無意識にドレスを握り締めていた私の手に、自分の手を重ねるマルクス様は私の状態を見て
「もしかして、ミシェル嬢。
貴女が心配しているのは、俺の心変わり…ですか?」
「えっ!?」
「君の家族は絶対、心変わりなんかしないだろうし、
君の知り合いの中にも居ない。となると、前世か」
その言葉に、体がビクッと反応した。
18
あなたにおすすめの小説
王子様の花嫁選抜
ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。
花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。
花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。
【完結】あいしていると伝えたくて
ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。
シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。
*恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
マジメにやってよ!王子様
猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。
エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。
生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。
その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。
ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。
「私は王子のサンドバッグ」
のエリックとローズの別世界バージョン。
登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる