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第67話
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マルクス様は気を回し、この庭にあるガゼボまで私を誘導すると、近くに居た侍従にお父様への言伝を頼み、私の隣りに座った。
「君は、前世で何かあったのかな?
詳しくは聞こうと思わないけど、もし今の状況で、俺との婚約が
嫌になったのなら、そう言って欲しい」
マルクス様はそう言うが、私は嫌になったわけではないから、頭を横に振る。
「じゃあ、どうしてさっきから…
俺と王女が、婚約するみたいなことを、言うのかな?」
すごく落ち着いて話す、マルクス様の声が、何時もより少し低い。
怒ってしまったのかもしないと思うと、話そうとしても何を言って良いのかわからない。
私はただ、マルクス様が幸せになる道を選んでほしいだけ…
しかし、そう思っただけで、心臓がツキン…と痛んだ。
「ミシェルは、俺といるのは、いや?」
「…や、じゃ、無い」
「それじゃあ、何で?何で俺から、離れようとするの?」
「…だって」
「うん…」
「私は…好きといってもらった人に、一度も、最後まで居て…
もらったことがないから」
「ん?」
「私を好きになってくれた人は皆、姉に落ちたから」
「姉?前世の?」
私は頷く。
「前の姉は、妹の男を取ったっていうことか?」
「取ったと言うか…私の傍に来て、私と話さずその男の子と話すの。
そしたら決まって次の日には、姉を褒めて、私を蹴落とすの」
「なんだそれ。
でも…ミシェルは俺と、そいつらが同じだって言いたいのか?」
「えっ!?… あっ!ちがっ、違う。そうは、思ってない…けど」
「けど?」
「私は…ううん、多分私に、自信がないんだと思うの」
「自信、自信かぁ…それは俺もないかなぁ」
「私は、前世であまり…良いとはいえない、環境に居たの。
そこでそのまま死んで、この世界に生まれた。
今の両親も兄妹も、皆やさしくて良い方達です。
けど、前世の私が、それは嘘だと言っているようで…」
「…それはまだ、生きた時間が足りないのだろうな」
「生きた、時間?」
「うん。確か前世では、15歳だったよな」
「は、はい」
「嫌な思いは、いい思いよりも、深く残る」
「…」
「今世の15年より、前世の15年のほうが、重いってことだ。
けど、それに関しては、これから挽回すればいいよ」
「挽回?ですか?」
私は首を傾げる。
「相変わらず、可愛いな」
「か、変わっ、可愛い?」
「うん。可愛い。
よしっ!俺はこれから、君にしっかりと気持ちを伝えようと思う。
前の15年に会った男達を、思い出さないくらいいっぱい。
それくらい俺は、君が好きだから。
だから絶対に離れないよ。俺は。
あっ、でもミシェルが俺を嫌いになったら言ってね。
悪いところがあったら、教えてくれたらすぐ治すから」
「マ、マルクス様にそのようなところはありませんし、
わ、私が嫌いになるなんて、絶対にありませんから…」
「ほんとに?絶対?」
「本当です。私だって、奇跡だと思って…キャッ」
私がすべて話す前に、マルクス様は私を抱きしめた。
私は、マルクス様の胸に顔を埋め、とくんとくんと聞こえる心臓の音に、ホッと一息ついた。
「君は、前世で何かあったのかな?
詳しくは聞こうと思わないけど、もし今の状況で、俺との婚約が
嫌になったのなら、そう言って欲しい」
マルクス様はそう言うが、私は嫌になったわけではないから、頭を横に振る。
「じゃあ、どうしてさっきから…
俺と王女が、婚約するみたいなことを、言うのかな?」
すごく落ち着いて話す、マルクス様の声が、何時もより少し低い。
怒ってしまったのかもしないと思うと、話そうとしても何を言って良いのかわからない。
私はただ、マルクス様が幸せになる道を選んでほしいだけ…
しかし、そう思っただけで、心臓がツキン…と痛んだ。
「ミシェルは、俺といるのは、いや?」
「…や、じゃ、無い」
「それじゃあ、何で?何で俺から、離れようとするの?」
「…だって」
「うん…」
「私は…好きといってもらった人に、一度も、最後まで居て…
もらったことがないから」
「ん?」
「私を好きになってくれた人は皆、姉に落ちたから」
「姉?前世の?」
私は頷く。
「前の姉は、妹の男を取ったっていうことか?」
「取ったと言うか…私の傍に来て、私と話さずその男の子と話すの。
そしたら決まって次の日には、姉を褒めて、私を蹴落とすの」
「なんだそれ。
でも…ミシェルは俺と、そいつらが同じだって言いたいのか?」
「えっ!?… あっ!ちがっ、違う。そうは、思ってない…けど」
「けど?」
「私は…ううん、多分私に、自信がないんだと思うの」
「自信、自信かぁ…それは俺もないかなぁ」
「私は、前世であまり…良いとはいえない、環境に居たの。
そこでそのまま死んで、この世界に生まれた。
今の両親も兄妹も、皆やさしくて良い方達です。
けど、前世の私が、それは嘘だと言っているようで…」
「…それはまだ、生きた時間が足りないのだろうな」
「生きた、時間?」
「うん。確か前世では、15歳だったよな」
「は、はい」
「嫌な思いは、いい思いよりも、深く残る」
「…」
「今世の15年より、前世の15年のほうが、重いってことだ。
けど、それに関しては、これから挽回すればいいよ」
「挽回?ですか?」
私は首を傾げる。
「相変わらず、可愛いな」
「か、変わっ、可愛い?」
「うん。可愛い。
よしっ!俺はこれから、君にしっかりと気持ちを伝えようと思う。
前の15年に会った男達を、思い出さないくらいいっぱい。
それくらい俺は、君が好きだから。
だから絶対に離れないよ。俺は。
あっ、でもミシェルが俺を嫌いになったら言ってね。
悪いところがあったら、教えてくれたらすぐ治すから」
「マ、マルクス様にそのようなところはありませんし、
わ、私が嫌いになるなんて、絶対にありませんから…」
「ほんとに?絶対?」
「本当です。私だって、奇跡だと思って…キャッ」
私がすべて話す前に、マルクス様は私を抱きしめた。
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