私の存在

戒月冷音

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第85話

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私は、自分の部屋で休む準備をしている時、突然入口をノックされ、誰かと確認している内に、窓から入ってきた影に捉えられ、今は…王妃様の自室にいた。

「あの、何の御用でしょうか?」
「…」
「帰っても、よろしいですか?」
「駄目」
「では、何故?」
「貴女、何でそんなに私に、隠そうとするのかしら?」
「何をでしょう?」
「お菓子のこととか、料理のこととか色々をよ」
「隠してはいません。
 が、このようなことをされる方に、教えることはありません」
「貴女が、教えてくれないから…」
「こういう事をなさるから、ヘンドリック様に嫌われるのです」
「嫌われていないわ」
「これから嫌われます」


その瞬間、王妃様の自室の扉を、ドンドンドンと叩かれる。
「何なのっ!?さっさと辞めさせなさい」
王妃様の指示で影が2人、入口に向かい扉を開けると
「何故お前たちが、此処に居る?」
と、ヘンドリック様の声が響いた。
「へ、ヘンドリック様…」
「入るぞ。マルクス、来い」
「はい」
そう聞こえると、コツコツと靴音が近づくに連れ、王妃様が青ざめていく。

そして
「母上…どこまで俺を失望させれば、気が済むんですか?」
そう言いながら、顔を見せたヘンドリック様の横から、マルクス様が走ってきて
「ミシェル、大丈夫?」
と、私の傍に来てくれた。

「大丈夫…だけど、少し頭がボォっとする」
私のその言葉に
「ちょっ、ちょっとあなた達、薬を使ったの?」
と、王妃様が、影たちに確認するが
「王妃様が、静かにこっそりと…と言われましたので、少しだけ…」
と言った瞬間、王妃様はヘンドリック様の視線に気づいた。

「へ、ヘンドリック…ち、違うのよ。違うの。
 わた、私はちょっと聞いてみたかっただけで…」
「何を?」
「えっ!?えっと、それは…」
「何を聞くために、王家のの影を3名も動かしたのですか?」
「だって、メリテッサも使っているわ」
「あの方のは公爵家の影で、私欲のために使われません」
「でも、この子とハリエットに…」
「自分の家の護衛を、子女に着けることはよくあることです。
 しかも、ミシェル嬢についていることは知っておられたのですね。
 ではこの後、此処に来られると、承知でやったと…
 言うことでいいのですね」
ヘンドリック様の言葉は、そのとおりだった。

お母様は、王妃様が私に目をつけてからは、自分の影であるキリアを私につけていた。
今頃お母様に、この事が伝わり、お父様とともにお怒りのことだろう。
「く、来るの?」
「来られますね。絶対…」
そうこうしている間に、王妃様へオーギュスト家から速達が届き、それを見た王妃様はプルプルと震えた。
まぁ自分が悪いのですから、きちんと怒られてください。
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