人の心の裏表

第44話

「はい？人口？」
「当たり前でしょ。領主が領地を守り育てる事で、領民は領主を慕い、税を託す。
　領主がその税を使い土地を豊かにする。
　その為にはどれだけの民が居るのか知っておかねばいけません。
　もちろん、ご存じですね」
確認するかのような問いに伯父様の脂汗が止まらない。
伯母様はきょとんとした顔をして頭をかしげている。

「自分が守るものを理解していない者が、何を守るのか分かりかねます」
宰相様はそう言って机の上に置いてあった書類に伯父の眼の前で印を押し国王陛下に渡す。
国王陛下はそれを読み王印を押した。

「本日より、ミラーは子爵となる。領地は没収し、お主に民を任せない事とする」
国王陛下の宣言により伯父様は領地なしの子爵となった。
領地からの収入が無くなるので大変だが、私達に出来たのだから大丈夫だろう。

「こ、国王陛下。何故？」
「何故じゃと？では聞こう。お主は何の為に貴族を続けておる」
「何の、為…」
「それも答えられぬ者に、儂の民を任せる気はない」
そう言うと国王陛下と王妃様は、後を宰相に任せ部屋を出ていってしまった。
一度も振り返らぬ姿を見ていた伯父様は、その場の崩れ落ちる。
伯母様は、何が起きたか分からないかのような動きをしていた。

その後宰相様の処理により伯父様は子爵になった。
今までの収入は今日をもって終わりとなり、後は自分達で稼げと言われた。
「どうやって？」
伯母様が聞くが宰相様は何も言わない。
自力で探せという事だ。