人の心の裏表

戒月冷音

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第53話

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ジャネット様を見た瞬間、レイノルズ様はスッと私の前に出た。
彼女に私が見えないようにしたのだと思う。
「レイノルズ様。貴方のジャネットが参りましたわ」
ニッコリと微笑み、ドレスの裾を持って挨拶をする。
「…」
「わたくしアナタのために来ましたのよ。そこのメス猫には公爵の妻は務まりません。
 わたくしのような良き女がなれるのです。どうか目を覚ましてくださいませ」
ジャネット様は使ったこともないような言葉遣いでレイノルズ様に懇願した。

そして手を取ろうとした瞬間、
「触らないでくれないか」
と感情もなにもない冷たい声が響いた。
「レ、レイノルズ、様?」
何も言わない相手に戸惑い、不安そうに見上げるジャネット様を見ているレイノルズ様のお顔は私には見えない。
しかし、その先に居る街の人達の様子から分かるのは、多分すっごく怖い顔をしている。
そのまま無言ってもっと怖いと思う。
「あの、わたくしこれから色々頑張るので…あの…」
ジャネット様は尻すぼみになりながら必死に話そうとしていた。

「今から常識を学んでも意味はありません。子供の頃から積み上げてやっとモノになるんです。
 それにアンタはルキアのもんだ。俺は要らない」
「いいえ違いますわ。わたくしは貴方の「ルキアのが気持ちいいんだろ。
 赤の他人の家で咥えるくらい。それでよく俺の前に立てるよなぁ」
レイノルズ様の言葉がだんだん苛ついてきている。
こんな大来で言うことではないし、お店の前を占拠していると店の方に迷惑がかかる。
「あの、レイノルズ様。場所を変えませんか?」
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