そして、夜明けが訪れた

いといしゅん

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惺の親父

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そして時間は過ぎていき、2日目の夜となった。
彼方は今、月見里さんの班の部屋に行っている。
そういえば、家では5、6時頃になると彼方はどこかへ出かけていた。
今まで、その時とかに月見里さんと会ってたのかな。と思考を巡らせていると、
ふと、僕の持っている携帯電話ガラケーが鳴った。
うちの学校では、スマホを持ってくるのは禁止だが、連絡用として、携帯電話を持ってくるのは許されている。
誰からだろうと思いつつ、画面を見るとそこには、
『親父』
と書かれてあった。
忘れている人が多いと思うが僕の親父は海外で仕事をしているため、滅多に会えない。
家に来るのはもちろん、電話で話すことすらも少ない。
そのため、このように電話がかかってくることは珍しく、何かあったのかと思って急いで電話に出る。
すると、電話越しに親父は開口一番こう言った。
「惺、お前彼女できたってほんとか⁉︎」

--------------

「は?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
いや、なんでそのこと知ってんだ⁉︎
いや、その前になんで付き合ってると誤解されている⁉︎
いや、待て。
前に誰かに、僕と彼方が付き合っている。
という嘘をついた覚えがある。
そして、その嘘をついた相手は………

アイツか…

僕が小さい頃は、まだ親父は日本に住んでおり、幼馴染のアイツの親とも関わりがあった。
電話やメールの交換をしていてもおかしくないだろう。
また、その連絡先がアイツにもアイツの親を通して伝わっている可能性は十分にある。
つまり、だ。
が情報を親父に伝えた。
ということだな。

マジか…

説明めんど…

僕の親父は確実にそのことに関してめっちゃ聞いてくる。
だから、正直、メッチャダルい。
マジかよ…
ダルすぎ…
そして、はぁとため息を漏らし、どう説明したもんか。と思考を巡らせていると、
予想外の言葉が電話越しに届いた。
「惺、本当に、彼女ができたのならよく聞きなさい。これはお前の父として言っておかなければならないことだ」
そう前置きをし、
「一生その人を愛していうと思いなさい。友情と愛情は全く持って、関係の重さが違う。自分の一つ一つの行動に細心の注意を払って、少しでも関係を良くさせなさい。これがお前の父として言っておける最大の助言だ」
何と言えばいいのだろう。
今日の父は僕の見てきた親父とはだいぶ印象が変わっていた。
いつもはどこか抜けていて、少しうざったらしい人だった親父が今日は、今日だけは、今の言葉だけは…
・・・・・・
「惺、何も言わなくていい。ただ一つだけ、絶対に守って欲しい約束がある」
いつもとは全く印象の異なる親父の言葉に僕はゴクリと唾を飲む。
しかし、さっきまでの真剣な声の親父はもういなくなったらしく、
「お前の彼女と、今度そっちに帰った時に会わせてくれ!お前と不釣り合いなほど可愛いやつだったら許さないからな!」
といつもの印象と変わらない少しうざったらしい親父の声が聞こえてきた。
僕は一瞬あっけにとられてしまったが、すぐに立て直し、
「僕がどんな可愛い子と付き合おうと関係ないだろ、このクソ親父が…」
いつもは何の躊躇もなく言っていたクソ親父という単語が
この時だけは、いうのに少し躊躇してしまった僕がいた。
「そうか、そうか。ま、惺の声が聞けたし、電話切るわ。じゃ、頑張れよ」
そう言って電話は切れた。
「やっぱ、優しいな………」

ークソ親父がー

この時僕は、あれ?僕ってもしかして、親父に対してだけ、ツンデレ⁉︎
という衝撃の事実に気づいたのだった。
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