短編集

いといしゅん

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桜と恋

間接キス

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僕は待ち合わせ場所であるバス停の前に立っていた。
「あっつ~」
あまりの暑さにそう言葉をこぼす。
さすが七月と言いたくなるような暑さだ。
「やべっ、水分持ってくんの忘れた」
独り言のつもりでそう呟いくと
「これ飲む?」
と後ろから聞きなれた声がした。
瞬発的に後ろを振り返る。
そこには恵奈先輩がペットボトルを持って立っていた。
「うわぁ、び、びっくりしましたよ先輩」
「そんな驚く?」
「独り言として呟いたら反応されたのですごいびっくりしましたよ」
ふふっと先輩は笑ってから
「それで、水分忘れたんでしょ?これ飲む?」
先輩が持っているペットボトルはフルーツの味がついた水のラベルが貼ってある。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
そう言って先輩からペットボトルを貰う。
そして、蓋を開け、飲み口を口に触れさせる。
その瞬間なぜか先輩は頰を赤らめ、深呼吸をして何かを覚悟したような表情をしていた。
そんな様子を目の端で捉えながら僕はペットボトルから口を離す。
そして、蓋を閉めて
「このペットボトルどうしますかね?」
と中身が半分ほど残っているペットボトルを先輩の方に持って行きながら先輩に声をかける。
「ん。じゃあ私が持ってるね」
そう言い、先輩は僕からペットボトルを受け取り、
頰を赤らめながらペットボトルの蓋を開け、

……………………え?
今、目の前で何が起きている?
情報を整理しよう。
深呼吸をし、心を落ち着かせる。
僕は先輩からペットボトルを受け取って
僕はそれに口をつけた。
そのあと、そのペットボトルを先輩に返したら
先輩もペットボトルに口をつけた。
………これっていわゆる間接キス?
その事実を飲み込むと同時に顔が焼けるように熱くなる。
「ちょぉ、えぇ?せぇ……先輩ぃ?」
なんか恥ずかしすぎて喋り方おかしくなってるんだけど。
すると、先輩が頰を赤らめ、にやにやとしながらこちらを向き。
「ねぇ、間接キス、嬉しい?」
と聞いてきた。
えっ?
まさか先輩僕の気持ちに気付いてる⁉︎
と焦ったが
「………やっぱ涼くんからかうの楽しいわ」
という先輩の一言でまだ気づかれてないな。と安堵した。
しかし、安堵するのもつかの間、先輩がからかいを続けてきた。
「……で、間接キス嬉しかった?」
「っ………………」
僕が無言を貫いていると、タイミングを見計らってくれたかのようにバスが来た。
そして、僕は先輩のからかいから逃げるようにバスに駆け込んだのだった。
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