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32. クーデター
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* * * * * *
今、王都は上へ下への大騒ぎになっていた。
それもそのはず、王都内の至る所で王家のスキャンダラスなビラがまかれ、見た事もない巨大なスクリーンにそれらの内容がストーリー仕立てで映像として流れているのだから。
「おいおい、あれは何か新しい芝居か何かか?」
「バカ野郎! 実際に王様が出てるじゃないか! 芝居にモノホンの王様が出るかよ」
「えぇ~~~! エクセルご夫妻って、本当は殺されちゃったのっ?」
「そうだよな。今の王様より賢くて、国民人気は抜群だったもんな! ありゃ、現王の陰謀だったんだな。まんまと騙されたぜ!」
「そりゃ、王太子妃が浮気だなんてありえねぇよねぁ。虫も殺せねぇようなお方だったんだぜ?」
「殺されたお方に不倫疑惑をでっち上げて、公爵家の財産を狙うなんざぁ、人として最低だぜ! なんでそんな奴のために税を納めなきゃならねぇんだ!」
「そうだ、そうだ! 現王退陣だ!」
幽霊シスターズの監修したビラや映像は、あっという間に民衆感情を煽り、王の退陣を求める声が王都中を駆け巡った。撒かれたビラを手にして王城に押し寄せ、王の退陣を求める群衆の波で王城周辺は埋め尽くされた。
「あぁ、なぜこんな事態になっているんだ! 誰の仕業だ!」
王宮にある王の間ではフェルナルド王が、大きな溜息と共に頭を抱えていた。その傍らではミリスとアステルが何食わぬ顔で困惑する王を見つめていた。
「そんなのディスモンド公爵家に決まってますわ。王家に逆らう者はたとえ誰であろうとも許してはなりません。皆殺しにしてしまえばいいのです」
「し、しかし……」
「陛下、この城には、こんな時こそ民衆を黙らせる奥の手があるのではないですか? 例えば、『聖杯』とか」
「聖杯?」
確かに、この国には『聖杯』という遺聖物がある。フェルナルド王ですらまだ実物を見た事はないが、聖教会の地下深くにある聖域に収められていると聞く。
「そういえば、この城からも聖域へ出入りできる隠し通路があったな」
「そうです。その通路から聖域に入り、聖杯を手にすれば、もう誰も陛下に逆らおうとは致しません」
「おぉ、その手があったか! だが、聖域に行くには確か条件があったはずだが」
「条件…ですか?」
「あぁ、我一人では行けんのだ。最低でも直系の王族が二名いなければ、聖域への扉が開かぬ」
フェルナルドの知るところでは、王城の通路から聖域へ入るまでは複数の扉があり、その扉を開けるのに左右両側に仕掛けが施されている。その仕掛けに王族が手をかざさねばならないのだが、そのためには王族の血を引く者が二名必要になるのだ。
「なら、王太子を連れて行けば宜しいのでは? いくら気がふれたと言っても、歩くぐらいはできるでしょう」
「おぉ、そうだな! その通りだ。誰か、オズウェルをここへ連れて参れ!」
フェルナルドが護衛にそう告げるも、不思議な事に誰一人として返事をしない。
「おい! どうした? 誰か返事をせぬか!」
王宮内のあまりの静けさにフェルナルドが怪訝な顔をしたと同時に、室内に鈴を転がすような可憐な声が響いた。
「その必要はございませんわ。今は皆様お昼寝の時間ですのよ?」
「お前はっ!」
「陛下、大変お久しゅうございます。リリスも久しぶり。ずいぶん見た目が変わりましたねぇ。あと、魔王アステル様、お初にお目にかかります」
王の間に姿を現せたのは、背後に大勢の騎士を連れたシャーロットだった。父ディスモンド公爵、義弟のリチャード、護衛のジャン、前サーフェス伯爵のロイド、そして黒龍騎士団の面々と勢ぞろいである。
「ぶ、無礼だぞ! 王の間に勝手に入り込むなど不敬だ! おい、近衛ども、何をしておる!」
近衛をはじめとした宮廷騎士も側近たちも侍女たちですら、シャーロットの黒魔法で気持ちよく眠りに着いている。誰一人としてフェルナルドの呼びかけに答える者などいなかった。
「私どもも、無益な殺生は避ける主義ですの。今この部屋で動けるのは私たちと陛下、それにリリスと魔王だけですわ。加えてお父様がこの城全体に結界をはっておりますの。いくら魔王でも、もうどこにも逃げられませんわよ?」
「くそっ! このアマがぁ!」
いの一番に本性を現してシャーロットに火魔法を放ってきたのは、他でもない姿を変えたリリスだった。巨大な炎がシャーロットに届こうとしたとき、彼女の前に固い氷の壁が出来上がる。それこそリチャードの防御魔法、氷結界である。
次の瞬間、リリスとリチャード、アステルとジャンの攻防戦が始まった。
飛び交う魔法と剣が激しくぶつかり合う音。飛び散った魔法が王宮の壁に当たり、激しい振動が起きる。美しい壁は跡形もなく崩れ、窓ガラスも粉々に砕け散った。
シャーロットは騎士たちに障壁魔法を展開しながら、被害を抑える。その後ろでディスモンド公爵であるデカルドがフェルナルド王が座る玉座へと駆け上がり、首に刃を突き付けた。
「残念だよ、フェルナルド。君には兄上のような治世は無理でも、人の痛みを知る良き王になってもらいたかった」
「デ、デカルドっ! 無礼だぞ! 我をどうするつもりだっ!」
「こうするつもりです」
ガっという鈍い音と共に、デカルドはフェルナルドの首に剣の柄を当てた。その衝撃でフェルナルドはいとも容易く気を失い、玉座から床へと崩れ落ちる。後は魔法を封じる縄で縛りあげてしまえば終わりだった。
「チッ、所詮は飾り物の王に過ぎないか」
魔王アステルがそう口汚く呟く。リチャードとリリス、アステルとジャンの戦いが続く中、リチャードの影の中から突然何者かが現れた。その姿に、アステルとリリスが驚いて目を見開く。
「そんなバカなっ! お前はっ!」
「……パパ?」
そう、そこに姿を現したのは、数年前にアステルが皆殺しにしたはずのダンピールのリーダー、シュナイダーだった。当時、シュナイダーと共に殺された娘…リリスの魔核を体内に取り込んだ彼女にとっては、まさに父親が生き返ったように見えた。
「パパ! 無事だったのね? 良かった!」
喜び勇んでシュナイダーの元に駆け寄ったリリスを、シュナイダーが両手を開いて抱きとめた。が、次の瞬間、リリスの背中から血濡れたシュナイダーの手が現れる。それは剣よりも鋭いシュナイダーの手が、リリスの身体を貫いたからだった。
「……パパ? ど、して?」
「お前のようなカイブツに父親と呼ばれる覚えはない」
「えっ?」
「娘の魔核は返してもらうぞ」
そういうが早く、シュナイダーはリリスの身体から娘の魔核を抜き取る。その瞬間、リリスの身体はみるみるうちに醜いカイブツの姿へと変わっていった。
「…あ、そっかぁ…」
カイブツは理解した。全てはまやかしであったと。目の前にいる父と思えた男は、何の繋がりもない見知らぬ男で、全ては魔王に促されて口にしてした魔核が見せた幻だったのだ。自分は『リリス』なんかじゃない。親の愛も何も知らない、美しさの欠片も持たない、醜い『カイブツ』だったのだ。
「でも、しあわせ、だったなぁ、ねぇ…パパ…」
カイブツが口から大量の血を吐きながらも最後に見せたのは、人間らしい微笑みと一筋の涙だった。そしてその両腕は命尽きてなお、シュナイダーを愛しいと言わんばかりに抱き着いたままだった。
「哀れなカイブツよ。安らかに眠れ…」
シュナイダーがその体から娘の魔核と共に己の腕を抜き取ると、カイブツの身体はサラサラと砂のように零れ落ち、その砂の中には七個の白く光る聖魔核と一つの薄汚れた魔核だけが残った。
いきなりの衝撃的な展開に、その場に居た誰もが一瞬呆気にとられた。そして、その瞬間を見逃さなかったのが魔王アステルだ。この場にいる唯一の味方を失ったと悟った彼は、敵陣営で一番鬱陶しい相手を先に始末しようと考えたのだ。その相手とは、そう、黒魔法の使い手であるシャーロットである。
「まずはお前が先だ! 死ねっ!」
「シャルっっ!!」
アステルの黒い魔剣がシャーロットの眼前へと迫る。彼の波動の強さに、シャーロットを覆っていた障壁が崩れ落ちる。
リチャードとジャンが慌ててシャーロットの元へと駆け付けようとするが、魔王の移動の速さには追い付けない。禍々しい光を放つ魔剣がシャーロットの体を貫こうとしたその瞬間だった。何処からともなく、白い物体がシャーロットと魔王の間に滑り込んだのだ。
そして魔王の剣が白い物体を貫いた時、その正体が明らかになる。
「え? …オズ?」
身体を魔剣で貫かれ、シャーロットの前でおびただしい量の血を流しているのは、北の棟で幽閉されているはずの王太子オズウェルだった。
「オズ、どうして…」
驚きで動揺を隠せないシャーロットが、オズウェルに駆け寄ってその血だらけの身体を抱き寄せる。するとオズウェルは嬉しそうな顔でシャーロットの頬に触れた。
「リア、よかった。今回は…たすけ…ら、れた…」
「オズっ!」
そう言ったと思えばすぐにオズウェルは息絶え、手をだらりと床に落とした。だが、そんな彼の魂が、今のシャーロットにははっきりと見える。
『リア、ごめんね…。私は誰よりもリアを愛している。それは何があっても変わらない。なぜリアを手にかけてしまったのか、本当にわからないんだ。愛しい我が子までこの手で殺してしまったなんて、今でも信じられない。これはその報いだよ。最後にリアを救えてよかった。リア…愛しているよ……』
優しく微笑むその姿は、オフィーリアが愛したオズウェルそのままの姿だった。白いその手が愛しそうに彼女の頬を撫でると、やがて彼の魂はゆっくりと空気に溶け込むように透き通って消えていった。
オズウェルは自分を裏切り、浮気の濡れ衣を着せた相手だ。その手で自分と腹の中の子を殺した男なのだ。憎かった。自分の何倍もの苦しみを与え、殺してやりたい相手だった。
だが、どういう訳か、その彼は魔王の刃から身を盾にして自分を守ってくれたのだ。意味が分からない。
実際は、愛する妻と子を殺めてしまったオズウェルは、精神を病み北の棟に幽閉されていた。だが、愛しいオフィーリアを思うあまり、その魂が身体を抜け出して王宮の中を彷徨っていたのだ。
夜ごと彼女の名を呼んでは探し続けるオズウェルは、実は時空魔法の使い手だった。そのため無意識に北の棟と王宮内を、自らの能力である瞬間移動を繰り返しながら彷徨い続けていたのだ。幽霊シスターズのアイリスが目撃していた白い影は、まさしく彼の姿だった。時に幽体であり時に実体である彼は、まさに得体のしれない存在であり、近づくことを許されない存在でもあったのだ。
今回、愛する妻の危険を察知して姿を現した彼は、幽体としてオフィーリアの魂をシャーロットの中に見出し、その魂を救おうと王の間に現れた。そして、その身を犠牲にしてオフィーリアの命を救ったのだった。
どうせなら憎いまま死んでほしかった。最後にその身を挺してまで、自分を救おうなどとして欲しくなかった。この期に及んで、ずっと、ずっと聞きたかった愛の告白までして、死んでほしくはなかったのに。
「最後まで、バカなんだから……」
それはオズウェルに向けてのものなのか、はたまた自分に向けての言葉なのか、シャーロット自身にも良く分からなかった。
シャーロットは血だらけのオズウェルの遺体を抱きしめて、瞳から大粒の涙を幾粒も零した。
ほんのコンマ数秒後、彼女の元に同時に駆け付けたリチャードとジャンが、アステルの前と後ろから同時に剣を突き立てる。リチャードがアステルの腹部を、ジャンがその心臓を思い切り突き破った。
「ぐうっ! ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
断末魔の叫びをあげて、魔王アステルの身体が聖なる光に包まれる。ジャンが彼の身体に突き刺した聖剣の威力で、アステルの身体は光に飲み込まれ、僅かな時間でその体を消失させた。後には魔核のひとつすら何も残らなかった。
「やったっ!」
「魔王を、リリスを、倒したぞっ!」
「おおおっ!」
アステルとリリスの消失で、王の間は勝利の歓声に包まれた。
「今、この時より、フェルナルド王の時代は終わった! 新しい時代の幕開けだっ!」
「おおおおおおぉぉぉぉぉ~っ!」
デカルドの勝鬨で黒龍騎士団は勝利の雄叫びをあげる。今、この時を以てフェルナルド王は失脚することとなった。クーデターは二四時間どころか、わずか半時足らずで終了したのだった。
カガールによる城を覆った結界も解かれ、城内で働く誰もが意識を取り戻した。目を覚ました騎士たちが大騒ぎするかと思いきや、意外にもフェルナルド王の失脚をすんなりと受け入れる者が多数を占めた。それだけ、今までの宰相デカルドの功績が大きかったのだろう。
魔王アステルが消失した王の間では、王太子オズウェルの亡骸を抱えたシャーロットを、リチャードとジャンが何とも言えない表情で見つめている。
そんな中、渦中のシャーロットが二人を見上げて爆弾を投下した。
「リチャード様、ジャン。実は、魔王はまだ死んでいないわ…」
「「えっ?」」
シャーロットの言葉に、二人が驚いて口を開ける。
「まだ、彼の心臓が残っているの…」
「心臓が? それはどこに?」
「聖域にあるのよ。聖杯の下に埋められているわ。魔王は初めから聖杯そのものが目的ではなくて、そこにある心臓を取り戻すことが目的だったのよ」
初めて聞くその衝撃の事実に、二人は顔を見合わせ、呆然とするのだった。
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