「NO TITLE」

susugi

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「あら~っ!朔ちゃん久しぶりぃ~~~!最近見ないから、イイ人見つかったのかと思っちゃったわよ~!」
 行きつけのバーに二週間ぶりに顔を出すと、半分女性の道に足を踏み入れているオーナーから挨拶が飛んできた。
 それも予想通りのもので、苦笑いを漏らしながら返すしかない。
「久しぶりってほどでもないと思うけど……」
「オーナーお気に入りのコ?」
 見慣れない客に愛想笑いをしながら、ひとつ席を空けて腰を下ろした。
「そうよ!カワイイ顔してるでしょ~!これでももう二十五になるんだから!」
「オーナーが言っちゃうんだ」
「ふうん。でもほんとに整ってるね。女顔だってよく言われない?」
 ずいっとオレの顔を覗き込む男は、それが嫌味に聞こえるくらい端正な顔立ちをしている。
 背広を椅子の背もたれにかけ、ネクタイは肩に回してグラスを揺らす姿はとてもさまになっているので、だいたいの人が持っていかれるだろうなと容易に想像できた。
「言われますよ。オーナー、いつものひとつ」
 わざわざ席を空けて座ったのに、近寄って来る男は酔っているわけではないらしい。
 顔の間に距離を取りながらも話を続けるけど、今日は長居出来なさそうだな……。
「彼女は?いるの?」
「いません」
「ハハッ!じゃあ彼氏とか?」
 何がおもしろいのかわからない。名前も知らないその男はきれいな顔のままくしゃっと笑う。芸能人みたいに雰囲気がある人だ。
「いませんね」
「……ふーん。キミ男もイケるんだ」
 ……あー、適当に答えたから、妙に勘づかれたか。
 そもそも見慣れない客の時点で、話す必要性もなかったのに。そう思うけれどもう後の祭りだ。
 まあでもほんとのことだし、別にいい。
 誰にどう思われようが、どうでもいいんだ。
「チョット!朔ちゃんをいじめないでちょうだい!いまは幸せを見つけるための準備期間なの!少し羽を休めるんだから余計なことは言わないで!」
 紅白にでも出ていそうなくらい煌やかな服が、オレが回したグラスに光ってさらに眩しくなる。
 丸い氷が音をたててゆっくりとまわった。
「ありがと。だけど、休みすぎて次の人が見つからないだけなんだけどね」
 オーナーの気遣いの言葉に、笑みを浮かべるも苦い表情になっているに違いない。もういい歳なのに、オレは愛想笑いや嘘がヘタだ。
「ふうん。どれくらい休んでるの?」
「……一年半くらいかな」
 女性と違って、男なんて自分の体を大切になんてしない。少なくとも、オレはそう。
 だから、一日だけの相手で何度も夜を過ごしたけど……。もう燃え上がるような感情なんてどこかに忘れてきてしまった。
 休んでいるのは心だけ。それだって夜になったら決壊するからこうして紛らわそうとしているわけで。
「そのときの相手は?」
「……男だけど」
「そう。でもしっくりくるね。だってキミそれくらい可愛い顔してるもん」
「どうも」
 ……狙われてるんだろうけど……、なんか乗り気になれない。
 別に本気で嫌なわけじゃないけど、面倒そうで。
 見た感じしっかりしている人なのに、話しかけてくるあたり軽薄だ。なのに、なぜかオレは口軽く話していた。
「あ、面倒だって思ったね?」
「ん……、否定はしない」
「あっそう。じゃ、今夜は俺でいい?」
 「じゃ」の意味がわからないし、もうすでに面倒だよ。
 でも、たまにはいいかなあ、こういうのも。
「ワタシの前でそんなコト決めないでくれる?!ほら、出た出た!」
 ……って、オーナーに追い出されてしまったけど、そしたら本気でそういうことになっちゃうんだけど……。


「……で?何がいやとかある?」
「べつに」
 てかめっちゃいい体してる……。
 シャツを脱ぐ男を見ながら、そんなことを考えてた。
 最近の行為の中で、なにかを感じたり思ったりすることはない。
 ただ時間が過ぎるのを待っているだけ。
「べつにって……。あるでしょ、キスだけはいやとか」
「いいよ。アンタがしたいならしても」
「…………」
 オレの答えに眉をひそめる。切れ長の目にまつ毛が覆った。
 でも、我慢しているわけではない。それをどう伝えればいい。
「ほんとうになんでもいいよ。どうでもいいし、なんでもいい」
 ……誰となにをしても時間が過ぎる速度は同じだった。
「じゃあやめた」
「えっ!?」
 この状態で!?ふたりともパンツ一枚だけなんだけど!
 このときに断られたのは初めてで、オレは心からの驚いた声をあげてしまった。
 男は笑いながらベッドに大きく寝転んでオレを見ている。
「めちゃくちゃしたいわけでもなさそうだし。それよりキミのこと教えて。俺はアンリ」
 ……とてもいまさらな質問に小さくため息をついた。
 ワンナイトなら名前なんてべつに要らないのに。でも、ん?アンリ?目の前の人はどう見ても男に見えるんだけど。
「アンリ?苗字?どんな字書くの?」
「ハハッ!そんなとこには興味あるんだ」
 コイツの笑うツボがわかんないんだけど……。
 本名なのかなってちょっと気になっただけだし。
 ちょっとばかにされた気がして、唇を軽く尖らせた。
蝶野杏里ちょうのあんり。バタフライの蝶に、野原の野、あんずの杏にさと」
 この人は、すごく穏やかな話しかたをする。
 雰囲気もそうだけど、ゆっくりと優しい。過度に深い追及がないから、こぼれ落ちるように話してしまうんだ。
「女みたいな名前ってよく言われない?」
「さっきの仕返し?言われるよ、名前だけ見ると女性的だしね」
 仕返ししたつもりはなかったけど、それならそれでいいと思った。
「歳は?」
「二十七。キミは……って二十五だったね。名前は?」
 ……ふたつ上か。もう少し上だと思ってた。
 黒髪にスーツがよく似合って、妖艶な大人ってカンジだったから。
 ……今の姿を見たら年相応って思うけど……。
「……朔。古谷朔」
「さく、ね。漢字は?」
「遡るって漢字わかる?あれの辶(しんにょう)がないやつ。古谷はそのまんま、ふるいたに」
 クスクス笑うアンリは、まるで恋人を愛でるようにオレの髪を撫でた。
「わかった。ねえ、たくさん話をしよう」
 このときから、わかっていたのかもしれない。
「……は?一日だけの相手に話すことなんてないよ」
「だからだよ。朔がどんなにすごい過去を持っていても、俺たちは他人。気軽だろ?」
「だからって話さないよ」
 なにかが始まってしまうかもって。
「そう。じゃあ今まではどんなふうに呼ばれてきた?俺は重ならないようにしてみるよ」
 ……コイツはなんなんだ?
 よくわからないヤツなのに、なんでこんなに泣きたい気持ちになるんだろう。
 太陽じゃなくて、ひだまりみたいに温かい。
「……アンリ、そっち行っていい?」
「……いいよ。おいで」
 自分でもわからないうちに、この男にのまれたのかな。
 コイツだって、どんな過去があるのかわからないのに。
 それでも、まわしてくれる腕は確かに温かいから、突き放すことなんてできない。
 こうして抱きしめてくれた人なんていなかった。
 抱きしめてほしいとも言わなかったから。
「……サキって呼ばれたことはあるよ。メアドを間違えてsakiにしてて……。そのまんまサキって」
「そう。じゃあ俺はそう呼ばない。ほかは?」
「サキか、朔くんかな……。オーナーは朔ちゃんだけど」
「”朔”は?」
 
 ――――――――――朔、大好きだよ。朔。

「ひ、ひとりだけ……」
「どうしてそんなに怯えるの?なにも怒ってないのに」
 抱きしめているアンリにはわかってしまうんだ。
「怯えてないよ……」
 オレの全身が震えていること、ごまかしきれない。
「……元彼?」
 ……触れてほしくなかったけど、打ち明けたい気持ちの方が大きかった。
「……うん。優しい人だったけど、だんだん変わっていって、怒鳴り声しか聞こえないようになっていった」
 少し離れて、アンリの胸に両の拳を軽くぶつけた。
「うん」
「それで……、なにが悪いのかわからなかったんだけど、謝り続けて……」
 それでも、まだ龍ちゃんを求めてる。
 きっとオレはダメなヤツだ。誰に言われなくてもわかってる。
「うん」
「殴られ続けても、笑うか謝るかしかできなくて……。でもある日、急にいなくなったんだ。もう要らないって言われたみたいだった……」
 元の龍ちゃんに戻るって信じてた。信じることしかしてなかった。待ってただけだった。
 負けることわかってて、殴り返していれば今も一緒にいられたのかな。
 こうして話していると、悪いのは龍ちゃんだけに見える。
 オレが震えているのは、悲しいからだけじゃない。龍ちゃんをそう思われることもいやだったからだ。けれど、たくさん言葉を連ねれば連ねるほど、それを認めてしまう気がして。

「龍、なんで……?オレ、ずっと……」
〈我慢してたのに〉

 そんなことを思ってしまった。
 そうだ、殴られながらずっと「我慢だ、我慢だ」って頭の中で繰り返してた。
「ずっと、殴られ続けたんだね」
 アンリはオレの腕に触れながら言った。
「…………」
 オレの腕の半分はあざが広がって紫がかった黒で染まっている。
「顔をかばうようにしてたから、残ってるんだね。痛かっただろう」
「あんまり見ないで。気持ちのいいものじゃないでしょ」
 痛いとか、怖いとか、途中からわからなかったよ。最後まで信じてたつもりだった。
 でも涙が出るのは、必死にもがいてたんだろうな。
「ごめん、愛してるよ」って抱きしめてほしかったんだろうな。
 我慢と同じくらい、期待もしていた。
 だけど、龍ちゃんは偽善でもそんなことしなかった。
 哀れに思うのは自分だった。
「朔の過去はよくわかったよ」
 ゲンメツされるかな、なんとなく後ろめたさがある。
「だけど、俺は今の朔に会えたんだね」
「……な、」
 なにを言ってるんだ……?
 まるで、恋人みたいなこと……。
 三時間前に初めて会ったばかりで、名前だってさっき知ったところだ。
 オレは、大事になんかされていい人間じゃないのに……!
 「触るな!」
 急いで腕を振り払う。
 同情なんてほしくないんだ、なにも要らないんだ。
 散々話を聞かせたくせに、触れさせたくせに、なにを言ってるんだ。わかってる、矛盾した行動をとっていることなんて。
 だけど、過去のオレに同情なんてしてほしくない!
「触るな……!これはオレの過去だ!オレの思い出だ!オレだけのコンプレックスだ!!」
 ヒステリックもいいところにわめき散らしたところで、オレは顔が上げられない。
「うん。俺は朔のことなんてほとんど知らないよ。だから警戒しないで、怖がらないで」
「は……っ」
 ……なにを言ってるんだ?おかしいのはアンタも同じなのか。
 知らないから怖いんだろう、知らないから恐れるんだろう。
 生きてきた中で培ってきた知識は正解じゃなかったのか?
 余計な詮索をしないアンタが怖くて、心地よくて……。
「アンリ、アンタが怖いよ。どうしたって優しいんだ」
 どうして、不可侵のテリトリーに入ってくる?
「そう?まあ朔に興味があるからね。優しくしたつもりはないけど、そう思ってくれたならそれでいいか」
 にっこりと優しく微笑むこの男は、ほんとうに警戒心を解かせる天才だ。
 ……バカじゃないのか。きっとこんなの、一夜で終わるはずがない。
 始まってもいないのに。
「知りたいと思うよ。想像でしか埋め尽くせないからね。だけどこれで終わると思う?」
 ……同じこと考えてたなんて絶対言わないけど。
「思わない」
「だよね。また会おうよ」
「うん。……オレ、普段の相手にはこんなこと言わないから。アンリだけ」
「え……って、なんでそんな顔で言ってるの?天然って言われない?」
「よく言われる」
 どうしてわかったんだろう。というかどんな顔しているんだろう。きっと、ぐしゃぐしゃな表情かな。
 アンリと始まるとか、未来なんてわからないけど、時間を共有したいと思った人は短い人生のなかで二人目だった。
 
 オレを可愛いと言って頬に触れるけど、アンリだって整っている顔立ちだ。
 体だって鍛えているだろうし、モデルだと言われても不思議じゃないスタイル。
「アンリも男が好きなの?」
「いや、男に興味を持ったのは二度目。もちろん、一人目は元彼になるよ」
 迷う素振りもなくサラッと答えた。
 飄々として見えて、優しいオーラを纏っている。
 「……いまさらだけど、アンリって攻めたいほう?」
 「……逆に見える?」
 「見えない」
 「アタリ」
 そんなナリと顔で受けだったらどうしようかと思った。
 煙草に火をつけたアンリは、きっと元彼を思い出しているんだろう。
 直感でわかってしまった。
 そういう顔って、誰でも同じだよ。
「……」
 初めて距離をとったアンリは、真上に上った月を眺めてた。
 こんな真冬にわざわざベランダへ出て。
「さむっ……!アンリ、オレ別に煙草大丈夫だよ」
 窓を開けると、二月の風そのものがあたる。
 もしかして、ひとりになりたい時間だったのかもしれないけど、そんなカッコで出られたらこっちが心配する。
「うん。でももう終わった。……朔は優しいね」
 たった数秒しかふかしていない煙草をじゅっと押し当て、すぐさま室内に戻ってきた。
 笑っているその顔は全然楽しくなさそうだ。
「優しくないよ。人に優しくできたことなんてない」
「……朔の話を聞かせてもらったから、俺の話も聞いてくれる?」
「前の人の話?」
「うん、そう」
 単純に、興味がわいた。
 この人が愛した人ってどんな人?
 素敵な人?見捨てられなくて愛しちゃった?それとも泣き別れ?
ほたるって言ってね。朔みたいに可愛い子だったよ」
「ほたる?名前までかわいいね」
「さっき、朔に呼び方の話をしたけど、俺はね、杏、杏くん、杏ちゃん、杏里くん……とかたくさんあったよ」
「アンタはたくさん呼ばれてるんじゃないか。………アンリ」
 オレは、「アンリ」でいこう。
 べつに、被ったってどうも思わないけど、アンリがああやって言ったから。
「いや………、ひとりだけだよ。俺をこっちの世界に連れてきた、俺の初めての人だった」
「その人がほたる?」
「そう、蛍。かわいくて、女の子みたいに細くてね。俺と恋愛をしたけど、蛍は自分が男と付き合ってることを隠してた。蛍がいいならそれでいいと思ってた。だけど、最悪のかたちでバレたんだ」
「最悪のかたち?……なんで自分の好きな人を好きって言わないんだろう。オレたちの世界で想いが通じ合えるなんて奇跡みたいなものなのに」
 限られた相手しか振り向いてもらえない。すれ違った相手と恋に落ちるなんて奇跡、ありはしない。
 オレもこうだからそいつが言いたいことはわかるよ。でも、その奇跡が目の前に転がっているのに蓋をできるうほど大人じゃない。
「……蛍はそう思ってても、言えなかったんだろうね。女顔も、コンプレックスだったみたいだ。蛍のことを初めて好きだと言ってくれた女の子に、俺たちが手を繋いでるところを見られて……、そこからは階段から転げ落ちるように蛍は崩れていった」
 ほたるってやつは、自分の方が大事だったのかな。
 愛する人を前にして、世間に振り返るのか。
 ……まあ、普通だったらそれが正しいんだろうな……。
「その女の子はね、俺たちの前に来て笑って動画を撮りながら言った。「アンタたちじゃ子どもも作れない。結婚もできない。未来もないのにおてて繋いで楽しいね」って」
「……」
 聞いたこともない声なのに、頭の中で容易に再生できてしまった。
「ひいた?」
「ひかない。オレだってその世界で生きてるよ。後悔も未練も切れないけど、ここがオレの世界だよ」
 その人が言ったことだって、間違いじゃない。
「……そう、朔は強いね。……その言葉を聞いてから、蛍はおかしくなった。毎日泣いて謝って、最後には人形を俺に手渡した。「この子、僕たちの子」って泣きながら笑ったとき、ああ、もう俺のことさえ見えてないなって思ったんだ」
 ……違うよ、きっと。
 アンリのことしか見えてなかったんだ。
 アンタは優しいから、余計に苦しんだんだろうな。“ほたる”って人は。
 龍ちゃんもアンリも、オレとは違う愛しかたで守ろうとしてたんだってわかるよ。わかるけど、なんで置いてくのって気持ちの方が勝っちゃうんだ。
 どうしても嫌いになれないから愛してた。
 ただそれだけなのに。
 始めるのはふたりなのに、終わるのはひとりでいいなんてずるいよ……。
「……オレがほたるを見つけて幸せにするよ」
 ほたるって人の気持ちは痛いほどわかるから、少し皮肉めいて言ったつもりだけど、アンリはすごく嬉しそうに笑った。
「ハハハ!!随分突飛だなぁ。駄目だよ、俺はキミの前に元彼が現れても背中を押してあげない」
「なんで。べつに押してくれなくていいよ」
 ……自分で歩いて行く。
「キミの未来はこれからだから、だよ。とりあえず俺が隣に居る今は、過去を過去にしてみない?」
「……」
 アンリと始まるかなんてわからない。
 だけど、きっと誰かに言って欲しかった言葉。
「今日でわかったことがあるよ。朔は強くて、泣き虫だね」
「…………っ」
 泣いても殴られないこと、罵声じゃなくて、あやすような声に心から安堵した。
 きっと、ずっと怖かった。
 慣れたけど、慣れてない。
 振り上げられた拳はやっぱり痛くて、惨めな涙は隠せないけど、それでも縋っていたい初恋。
 大好きだよ、愛してるよ。
 龍ちゃん、ごめんね。今も好きだよ。
 だけど、ちょっとアンタを過去にしてみたくなったんだ。

「朔!」
 太陽みたいに笑う龍ちゃんが好きだったよ。

「消えろ、カスが」
 助けたいと、思ったよ。

「……っ、あ……っ、ああ…………っ!」
 泣きながら殴っていたこと知ってるから。

 あんな生活に変わってから、愛の言葉はくれなくなったよね。
 偽善者にならなくてずるいなあなんておもうけど、オレを愛してくれたことを知ってるから。
 もう傷つけないために別れを選んだのかなってうぬぼれてもいいかな。
 それと、この優しい人のもとへいくこと許してほしい。
「朔、もう寝ようか」
 ほんとうになにもせず、ただ温かい体温に包まれながら目を瞑った。
 久しぶりに誰かを隣に感じながら眠りにつく。それだけで少し、胸が熱くなった。
「アンリ、ありがとう」
 きっと上手な恋愛なんてできないや。オレは龍ちゃんへの愛しかたしかわからなかったから。
 だけど、アンリがそばにいてくれるんだって。背伸びしないで、ゆっくりしてみようと思う。
 龍ちゃんへ、初めて愛した人へ。
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