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第十四話:ウカノミタマ。

09ウカノミタマ。

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「……ミタマさんの部屋もいつも使ってる位置ですかね?」


紗紀が何となくそう聞くと、ミタマが言葉に詰まり視線をらした。

それがあからさま過ぎて、紗紀は怪訝けげんに思う。

振り向いたウカノが不思議そうに首をかしげて紗紀を見やった。


いつわりの世界も同じ感じなのですか?」

「はい。本当にこのままで」

「へぇ……。それで?兄様はどの部屋をお使いに?」


ウカノが一変いっぺん、小悪魔のような笑みを浮かべてミタマをのぞき見た。

微塵みじんも視線を合わせられないミタマにウカノは言葉を続ける。


「まさか、とは思いますが……ウカノミタマ様のお部屋、本殿ほんでんを使ってたりだなんて……」

「……そ、れは……!他の輩に使われたくは無いだろう?」


しどろもどろになりながらもそう弁解するミタマにああ、やっぱり……と何となく予想していた事が的中する紗紀。

言葉に詰まった時の顔や、視線を#逸__そ_#らした事から何となくさっしが付いていた。


「兄様はつくづく阿呆あほうですね」


ウカノはあきれきったように溜め息を吐き出すと、やれやれと頭を左右へと振った。


「さて、と。……わたしはうたげの準備があるのでこれにて。後は兄様が詳しいのでお聞きになってください」

「あ、はい!……ありがとうございます」


紗紀のお礼にウカノはにっこり優しい笑みを浮かべると去って行った。

部屋では紗紀とミタマの二人きり。

謎の沈黙が訪れていた。


「えぇっと、紗紀?」

「何でしょうか?」

「その、怒ってるかい?」

「それは、何故ですか?怒らせるような事を何かしたんですか?」


気まずさを何とかしようとミタマは口を開くが、どこか距離のある物言いをされてまた言葉にまってしまう。

紗紀に触れたいと思うけれど許されない空気がそこにはあった。


「……紗紀……」

「……あの、宴の準備ってウカノさんが一人でされてるんじゃ?……私、お手伝いがしたいです」


紗紀もミタマとの二人きりに堪え兼ねて、それ以上に自分達が来たばかりにウカノに負担が増えた事が申し訳なくもあり提案をする。

ミタマはああ、と思い頷いてみせた。


「確かにその通りだね。俺が行くとしよう。紗紀は少し休んでいたらどうだい?」

「そんな、私だけ休んでなんていられません」


ミタマの提案に紗紀は首を横に振る。

休めと言われて休めるはずもない。

ミタマは紗紀の身を気にしつつも二人で手伝いに向かう事にした。


◇◆◇


居間へと向かえば下拵したごしらえをしているウカノの姿が目に入った。

見知った割烹着かっぽうぎを身に付けている。


「あら?どうかなさいました?」

「いいや。それが、紗紀が手伝いをしたいと言ってね」

「何をおっしゃいますか。お客様でしょう?兄様、しっかりもてなしてください」


ウカノが溜め息混じりにミタマをたしなめる。

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