儚げ社長は一途な年下秘書に密やかに溺愛される

椿綾あこ

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1 始まりの夜

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「九重社長、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。茉乃まのちゃんは大丈夫?」

 ようやく、息をつくことが出来ればずっと後ろに控えている秘書の黒瀬茉乃くろせまのちゃんが私の顔色を伺う。その少し心配そうな表情に笑顔で小さく頷いた。

「私も大丈夫です。先ほど、B社の方がお話ししたそうでしたので、のちほどお声掛けしますか?」
「うん、そうだね。今は取り込み中みたいだから、様子を見てこちらから声を掛けよっか」
「はい」

 茉乃ちゃんに言われて目線を動かす。パーティーも中盤だけど、まだまだ話すべき相手は沢山いる。油断すると誰と挨拶を交わしたか分からなくなっちゃうけど、茉乃ちゃんのお陰でなんとかやり過ごせている。

 私をしっかりと支えてくれる茉乃ちゃんは、社長就任前に広報部で共に働いていた後輩の1人。

 可愛くて、美人で、スタイルもよくて自分に自信がある。ちょっと小悪魔っぽい雰囲気も愛らしい。
 けど、それ以上に努力を怠らない。私の自慢の後輩。

 美容やファッションが大好きなおしゃれさんで、仕事にも一生懸命で優秀。言うまでもなく私の大好きな後輩。離れたくなくて、秘書職を打診したら二つ返事で「やります!」って言ってくれた。

 それ以来二人三脚で、社長と秘書として一緒に成長している。なんて言ったらわからないけど……私にとって茉乃ちゃんは欠かせない優秀な秘書だ。

 繰り返すけど、茉乃ちゃんは可愛い。

 今日も首元の大きなリボンが特徴的な深いネイビーのワンピースドレスを着こなしている。普段からおしゃれさんだけど、華やかな場だといつも以上に輝いて見える。きっと自己プロデュースが上手なのだろう。

 そして、そんな茉乃ちゃんの影響も多いのかもしれない。会場の視線が茉乃ちゃんに注がれているがわかる。

 誰が言い出したのかはわからないだけど、私と茉乃ちゃんは“COCONOEの花園”って呼ばれている。恐縮だけど、私と茉乃ちゃんが揃って笑うとその場がまるで花畑みたいって意味みたい。

 だから今日もちらほらと「花園だ」って声が聞こえる。

 だけど私達は気にせず、自分達に集中することにしている。

 茉乃ちゃんと一息ついてまもなく、また別の業界人に声をかけられた。いわゆる同業他社の役員で、定番の挨拶に私と茉乃ちゃんは軽く頭を下げた。
 
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