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1 始まりの夜
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しおりを挟むまたひとつ話が終わって、会場を見渡す。今日のホストであるLUNARIAの久世社長を見つけると、美容ブランドの男性役員との挨拶を終えたところだった。
「そろそろ、久世社長のところに挨拶行こうか。少し落ち着いたみたいだし」
「あ、はい……!」
茉乃ちゃんと示し合わせて、近づくと同時に久世社長の視線が私へと向けられる。笑顔を忘れず、ゆっくりと頭を下げた。
「久世社長、本日はお招きありがとうございます」
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます」
茉乃ちゃんと揃えて招待のお礼を伝えると、堅物にも思える背の高い久世社長の低い声が響いた。
久世惟真――明日で33歳になる若手社長。LUNARIAは創業5周年を迎えたまだ新しい会社だけど、5年とは思えないぐらい急成長している業界で最も注目されている。
冷静沈着、理性的なカリスマ社長で背も高いから雰囲気だけでもかなり威圧感がある。厳しいところもあるけど、結果がついてくるから社員達の信頼も厚い。
さらには見た目も整っているから目立つ。長身で骨格も綺麗で、鍛えられた身体には上質スーツが似合う。
その見た目と冷静で淡々とした雰囲気が人によっては怖いし苦手って感じる人もいるかも。実際茉乃ちゃんは久世社長が苦手みたい。
ただ――私から言えば久世社長は怖い人じゃないし、実は付き合いも長い。
知ってる人は少ないけど、彼の弟と私は大学の同級生。異国の地で共に経営を学んだ良き友人で、そのお兄さんである久世社長を紹介してもらったのは、まだ大学を卒業する前。
日本に帰国してからも縁は続いて、今ではお互いが社長。ビジネスの話相手として、今も定期的に食事に行っている。
そしてこの縁がLUNARIAとのコラボブランド『Yorui』を生み出し、久世社長とLUNARIAは私達COCONOE化粧品にとって欠かせないものとなっている。
それもあって今日ウチの会社からは役員を始め、多くの社員が招待されている。
「こちらよろしければどうぞ」
「ありがとうございます」
挨拶を終えたところで、シャンパングラスがまた運ばれてきた。だけど今度はウェイターからではない。
スマートに私と茉乃ちゃんにグラスを差し出したのは、久世社長の秘書の秋月綴さんだった。
「今日もお綺麗です。ウチの社員達が騒いでますよ。“花園”が綺麗過ぎるって」
グラスを受け取ると同時に視線を上げる。背が高くて誰もが見とれる甘いマスクの秋月さんの柔らかくて、どこか人懐っこさを感じさせる笑顔。
「またそんな……恐縮です」
ゆるりと首を横に揺らして褒め言葉を受け取る。
秋月さんはいつ会っても、私のことを“綺麗”って褒めてくれる。大切な取引先の社長だからだろうけど、それにしても褒めすぎなくらい。
だけどまっすぐな、口から出まかせを言っているようには見えない言葉に、心なしかいつも心がそわそわしちゃうってことは……誰にも言えない。
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