儚げ社長は一途な年下秘書に密やかに溺愛される

椿綾あこ

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2 月明りの下で

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「まだ答えてませんでしたね。どうしてLUNARIAを選んだか」
「あ、はい……けど……」

 彼が先程言葉を詰まらせた質問。掘り返すつもりはないと首を横に振る。だけど、それより前に秋月さんが一歩私に近づいた。

「――っ」

 手を伸ばせば届くほどの距離。いつもと違う空気が流れる。優しい表情のまま、唇が動く。
 
「あなたによりふさわしい男になりたかったからです」
「――え……?」

 まっすぐ、胸へと落ちて来る声。嘘ではないと分かるのに言葉の意味を理解するのには時間がかかった。
 何……? どういうこと……?

「それ……は」
「そのままの意味です」

 ふさわしい男って……秋月さんが……私に?
 アルコールが回った体はまだ熱く、ふわりと揺れる頭では、秋月さんの言葉を受け止めることも理解することもできなかった。
 
「九重社長」
「――っ」

 柔らかい声にびくりとして言葉に詰まる。心臓の鼓動が――さっきより速い。

 だって秋月さんはLUNARIAの社長秘書。

 いつもスマートに久世社長を支えていて、私や茉乃ちゃんにも紳士で優しい人。

 だけど――今は私を見つめるその瞳の奥に隠れた感情が読めない。

 夜の静寂が私と秋月さんを包み込む。

 月明かりに照らされた整った顔が、ふわりと笑みを浮かべた。軽い夜風が私と彼の間に流れて、髪と一緒に心が揺れた。

 だって――。

「俺が見てるのは――出会ってからずっと、あなただけです」

 月明かりの下、まるで愛の告白みたいな台詞を秋月さんが紡いだから。

 
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