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3 戸惑いの日々
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しおりを挟む茉乃ちゃんは前から気になる人がいて、最近、その人と付き合うことになったみたい。
2週間ぐらい前から、彼女の小指にはピンキーリングが輝いていて、会社では茉乃ちゃんに男ができたってちょっとした噂になってる。
相手が誰かは知らないけど、少し前に話を聞いてから、ずっとその行方が気になっていた。
だけど無事上手くいったみたいに本当によかった。
茉乃ちゃんは可愛いし、美人だし、仕事も丁寧で秘書として優秀。きっと彼氏は茉乃ちゃんを捕まえられてラッキー。言葉足らずな人って聞いてたけど、茉乃ちゃんの様子を見る限り今は幸せいっぱいなのだろう。その証拠があのピンキーリングだ。
確か――LUNARIAの創業パーティーの日にリングはなかった。だけど週明けには付けてたから、パーティーの翌日に何かがあったのかもしれない。
茉乃ちゃん、あの日は体調が悪かったみたいだし……看病してもらったとか? そんな展開があったのかもしれない。
きっと相手は素敵な人なんだろう。その証拠に最近の茉乃ちゃんは本当に可愛いから。
「……そう言えば……」
一人になった社長室で、ふと少し前のことを思い出す。茉乃ちゃんの相談に乗った日のことを思い出したから、かもしれない。
「あの日……秋月さんのこと思い出したっけ……」
小さな声が部屋に零れ落ちた。
少し前、茉乃ちゃんは好きな人とのことで悩んでいた。相談されたあの日、彼女は私に聞いてきた。「社長の方こそ、ドキドキしたり、ときめいたりしたこと最近ないんですか?」って。
その少し前、私は休日に秋月さんと偶然出会っていて、茉乃ちゃんの質問にその時のことを思い出した。
休日の秋月さんは私服だったのもあっていつもと雰囲気が少し違って――だけどいつもと同じように私を立ててくれた。
だから茉乃ちゃんに質問に対し、名前を出さず、3つの単語でその日のことを伝えた。
確かにあの日、秋月さんと出会って心が軽くなったし、ふとした一言に……ちょっとドキってしたから。
だけどあの時は――まさか、あんな言葉を聞く日が来るなんて思ってもなかった。
『あなたによりふさわしい男になりたかったからです』
ふいに頭を過った言葉。その瞬間、急に込み上げる恥ずかしさに思わず両手で顔を覆ってしまった。
まだ耳に残っている。――茉乃ちゃんがピンキーリングをするようになった2日前……月明かりの下で紡がれた意味深な言葉。
秋月さんのまっすぐで、優しい瞳。心地いいトーンの声。それから、生暖かい夜風。――全部鮮明に覚えていて、記憶から離れてくれない。
『俺が見てるのは――出会ってからずっと、あなただけです』
あの言葉の意味を私はずっと考えている。
そして――考えるだけで、胸がソワソワして、落ち着かない。頭の中が秋月さんでいっぱいになる。
あれは……告白? それとも……いつもの社交辞令?
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