儚げ社長は一途な年下秘書に密やかに溺愛される

椿綾あこ

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3 戸惑いの日々

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 あれから2週間。毎日のように考える。あれは一体何だったのかと。

 あの日、秋月さんはあの後、何事もないように「おやすみなさい」と一言添えて帰って行った。残された私は暫く動けなくて……頬に当たる夜風がくすぐったくて、胸の奥がじんわりと熱かったのを覚えている。

 「わかんない……」

 ふるりと首を横に振り、デスクチェアに座って呼吸を整える。
 一度思い出してしまったら――落ち着くのに時間がかかる。この2週間ずっとだ。
 思い出すたび、あの夜の月明かりまで鮮明に蘇ってしまう。だから――記憶から消えてくれない。

 秋月さんの言葉の意味を考えて、考えて、これまで想像もしていなかった可能性まで考えてしまう。

「だってあれ……普通に考えて……」

 ――告白。

 普通の女の子ならあれをそう捉えてしまうはず。だって……見てるのは私だけって……普通ならそういう意味……でしょ?

 それに秋月さんはいつもビジネスマナーとして自分のことを「私」って呼ぶ。だけどあの時は違った。彼は自分のことを「俺」と呼んだ。

 だからあの時――彼は秘書ではなかった……と思う。

 だからこそ、私は戸惑っている。

 だってこれまで彼の言葉を全部社交辞令だって思ってたから。ありがたいことに容姿について褒められることは多いし、いろんな人から同じような言葉を言われる。秋月さんはちょっと多いなって思ってたけど……それも私がLUNARIAにとって重要な取引先の社長だからこそって思ってた。

 私にとって秋月さんは久世社長の優秀な秘書。確かにその整った容姿や所作は目を惹くし、その温かさに心臓がそわそわした日はある。だけど――それだけだった。

 まさか彼が私に恋愛感情を持っているなんて……考えたこともなかった。
 
 「いや……けど、まだそうと決まったわけじゃないし……」

 ほぼ告白みたいな言葉だったけど、はっきりと「好き」って言われたわけじゃない。だから――もしかしたら勘違いかもしれないし、私が考えすぎなだけかも。

 だとしても――考えずにはいられない。

 秋月さんは私のこと……好きなのかも……って。
 そう考えるだけで、心が落ち着かない。浮ついて、くすぐったくて、胸の奥がソワソワして、いつもの私ではいられなくなる。

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