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6 逃げられない記憶
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しおりを挟むありえない、ありえない! 本当にありえないんだけど!
カツカツとヒールを響かせて駅の改札を抜ける。朝一の人混みは元々好きじゃない。だけど今日は余計に嫌いだ。
「最悪……! ギリギリになっちゃう!」
急ぎ足で時間を確認。いつもならもう出社して秘書室の鏡の前で身だしなみを整えてる時間なのに、まだ駅の改札を抜けたところ。前に改札を通った人が残高不足で立ち止まらなかったらもう数秒早く駅を出られたのに。
それに今日に限ってにマーメイドスカートを選んだせいで歩きづらい。お気に入りだけど時間がない時に選ぶものじゃない。
毎晩、翌日のコーデを組んで用意してるのに昨日に限って忘れてた。慌てて選ぶのはやっぱりよくない。
「黒瀬さんおはようございます」
「おはようございます!」
駅から徒歩数分、COCONOE化粧品の本社ビルに滑り込み、エントランスを一気に抜ける。途中社員達とすれ違ったけど、いつもみたいに笑顔を振りまく余裕なんてない。
エレベーター早く来ますように!
そんな願いが通じたのか、すぐにエレベーターが開く。これはラッキーとしか言いようがなくて、一気に社長室と秘書室のあるフロアへ。廊下をヒールの音を響かせながら秘書室の扉を開けたのは、出勤時間の僅か2分前だった。
「間に合った……!」
「おはよう黒瀬さん、ギリギリだったね」
「はい、ちょっと寝坊しちゃって……!」
微かに乱れた息を整えながらデスクにバッグを置き、ほっと息を吐く。まだ仕事が始まってもないのに疲れてしまった。同僚が「珍しいね」と続けるが私も同意する。
普段、朝はもっと余裕がある。椛乃社長が出社する前に、メールやスケジュールのチェックをして、タスクを振り分けて自分自身の予定を立てる。だけど今日は……まず気持ちを落ち着けたい。
「ああ……せっかく巻いたのに……!」
仕事もだけど、身なりも確認したい。仕事を始めた同僚達をおいて秘書室の一角にある全身鏡に自分を映す。
言うまでもなく、朝から疲れた顔をしている。睡眠が足りてないのか目の下にうっすらとクマがある気がするし、急ぎ足で出社したせいで、せっかく軽く巻いた髪も乱れている。こんな状態で椛乃社長に会いたくない。
デスクに戻ってパソコンを立ち上げたあと、バッグの中から鏡と櫛を取り出し、乱れた髪を直した。見た目が整ってないとテンションが上がらない。
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