わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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14 二度目のキス

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 口には出せない。けど顔には出ちゃったのだろう。私をじっと見つめた久世社長の指先が伸びて来る。
 
 あ……触られる。

 ぐっと下唇を噛んで身構える。いつも私を翻弄する指先がそっとなぞったのは私の肌――ではなくて、貰ったばかりのヘアクリップ。

「言って欲しいのか?」
「別にそう言う訳じゃ……」

 刻まれたブランドロゴを滑る彼の低い声も近くなって、一気にまた空気が変わる。
 心臓が跳ねるように弾むと同時にビクンッと肩も跳ねた。

「生意気なやつだなお前は」
「……ッ」

 途端、囁くような声と頬を撫でる太い指。嫌でも意識してしまうのは、この指から与えられるものを身体が覚えてるせい。
 
 どうしよう……変なことにならないように気を付けてたのに。プレゼントのせいで、気が緩んで、結局いつもの雰囲気になってしまった。

「あの……この際ハッキリ言わせてもらいますけど……なんなんですか?」
「何の話だ?」

 どうにかしてこの雰囲気を壊したい。いつ頬に触れた指先が落ちて来るかわからないし、それに久世社長が私をどうしたいかわからない。
 そんな感情がつい口から零れた。

「私を調教するとか、自分のものとか……私は久世社長のものじゃありませんから」

 一方的な愛撫に調教宣言、キスに所有物宣言。たった2カ月程度の間にこの人との関係はすっかり変わった。そのせいで――こんなことになってる。
 
「お前がわがままで、生意気で――俺の目を惹くからだ」
「またそれ。だったら何なんですか? 久世社長には関係ありません」

 食事中は私の仕事ぶりを認めてくれてたのに、結局そこに戻ってしまえばますます不満が募る。

「気づいてないのか? お前がどれだけ俺を苛立たせてるか」
「だからそういうのが……!」 
「さっき聞いたな。どうして今日お前を誘ったか」
「……それは……だって久世社長なら他に誰でも誘えたのに……」
「お前が俺のものだからだ」

 はっきりとした2度目の宣言が耳に落ちてくる。低いのに、どこか甘いそんな声。この声に囁かれると金縛りのかかったみたいに動けなくなる。

「……っだから、なんですかそれ……っ!」

 頬が熱い。上質なシートに布地が滑る音が混じり、久世社長がまた近くなる。少しでも視線を動かせば、目が合って、それから――そんな妄想が頭を過った。

   息を吸って、声を落ち着かせようとする。

「私のこと都合のいい女使いしないでください……っ」
「だったら、その目はなんだ?」
「……え?」

 ドキリと一段と高く心臓が高鳴った。視線が動いてしまえば、冷たい瞳が私をじっと見てる。その目って……言われても、困る。

「頬を染めて、期待するような目をしてるのはお前だろ?」
「……っしてないです」

 目が逸らせない。じっと見つめられて、頬に触れた指先が私を捉えて、正常な判断を見失わせる。なんなのこの人……。
 欲しい言葉は何ひとつ言ってくれない。私の質問にも答えてくれない。

 なのに……抵抗できない。わかってるのに、逃げられない。この指も、声も、もう身体が覚えてしまってるから。

 
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