わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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16 この関係の名前

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 抱き寄せられて、キスされて、セックスをした。
 この関係をなんと呼べばいいの? その答えが今すぐ欲しい。



「黒瀬さん」
「……」
「黒瀬さん」
「……」
「黒瀬秘書!」
「――っはい!」

 耳元で聞こえた大きな声にビクンと肩が跳ねる。一気に背筋に冷や汗が浮かんで、目の前の景色が鮮明になれば、真っ白なパソコン画面が飛び込んで来た。

「すみません! ちょっとぼーっとしてしまって……」
「……ったく、大丈夫ですか? 先程から仕事が進んでないようですが」
「……すみません」

 桐嶋室長の指摘に平謝りすることしか出来ない。チラリと視線を斜め上――桐嶋室長へと向けると厳しい瞳が私をじっと見ている。
 やばい……怒られるかも。そんな予感は見事に当たった。

「あなたの作る議事録は社長にとって、とても大切なものです。忘れない為にも会議後すぐに取り掛かるのが秘書としてのあなたの仕事です。この会議は午前中にあったもので、午後のあなたの大きな仕事はこれのみですよね。それが間もなく定時だというのに白紙とは……」
「……」

 その通り過ぎて言い訳が全くできない。

 パソコン画面には議事録のタイトルと日付のみ。本来ならもう出来ているはずの議事録が全く出来てない。桐嶋室長の言う通り、今日は比較的椛乃社長のスケジュールもゆるく、私は議事録作りに集中できる――予定だった。

「すみません……すぐ終わらせます」
「あなたが本気になれば1時間もあれば終わるはずです。定時までには仕上げてくださいね」
「かしこまりました」

 背筋をピンと伸ばして、それから深く頭を下げる。秘書になった頃、こうやって何度も桐嶋室長に頭を下げた。最近はなかった分、久しぶりにお灸を据えられて心臓が嫌な意味でドキドキしている。
 お願いしますね、と念を押すと桐嶋室長が一度秘書室から出て行く。ドアがパタンと閉まって数秒後、一気に身体の力が抜けた。

「はあ……やっちゃった……」
「大丈夫? 必要なら議事録作り手伝おうか?」

 反省していると一連のやり取りを見ていた香澄さんからの提案が飛んで来る。正直、かなりありがたい。今日はずっと集中出来てないから、多分今から取り組んでも簡単には終わらないはず。――けど、それじゃダメだよね。

「大丈夫です。ちゃちゃっと終わらせちゃいますね!」
「わかった。何かあったら言って。私今日の仕事終わってるから」
「ありがとうございます」

 にっこりと笑って、お礼をひとつ。
 すごい、香澄さんもう今日の仕事終わってるんだ。さすがというべきかもしれない。何があっても仕事はちゃんとする、それが香澄さん。私なんかまだまだ足元にも及ばない。

 だけど……これも全部――久世社長のせいなのに。
 
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