わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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 自分が用意したコーヒーを紙コップに注ぎながらランチ会の様子を見守る。まだ恋バナで盛り上がっている。
 
 もしも――こんな状態じゃなかったら私も積極的に話に参加していたと思う。だけど……今は出来ない。

「……あの人との関係って……一体何なんだろう」

 キスをして、それ以上もした。けど――付き合ってる訳じゃない。告白もされてないし、大体あの人は私のことを「わがまま秘書」と言う。明らかに私に好意があるとは思えない。
 
 確かに始まりは私があの人の言葉を真に受けて挑発したことだけど……。まさかこんなことになるなんて思ってもなかった。

 あの冷徹社長に抱かれたって思い出すだけでも身体が疼くし、あの夜が頭から離れない。だけどこの反応だってきっと久世社長は楽しんでいる。

 調教とか、俺のものとか、独占するようなことばかり言ってくるけど、あの人が考えていることは何もわからない。

 付き合ってもいないのに、身体の関係を持ってる。普通に言えばセックスフレンド――つまりセフレ。けどセフレってお互いが同意してなるものじゃないの? 私は――同意してない。いや、あの夜は同意したってことになるのかな?

 ああもう! 全然わからない!
 
 何を考えているかわからない久世社長のせいで、こんなにも悩んでいる。

「けど……次は絶対断らないと……」

 だってセフレでもないし、恋人でもない。久世社長から一方的に手を出されている。こんなの――まるで都合のいい女になってるみたい。

 私が一番なりたくないもの……私はなってしまったのかもしれない。

 頭の中の久世社長が消えて、代わりにあの人を思い浮かべる。過去に私を都合のいい女扱いしたあの男。

 あの人と久世社長は違う。あの人は平気で嘘を重ねてた。私のことを弄んだ。

 だけど……久世社長はきっと嘘をつかない。そう言う人じゃない。思ったことは正直にいう。だからこそ冷徹で、理性的で、そこが久世社長の魅力の人だと思う。
 
「……もうわかんないって……」

 苦手な人に抱かれた。それを後悔してない。けど、セフレじゃない。付き合ってもない。
 ……それに、私だって久世社長は好きじゃない……よね?

「これがあの人じゃなかったら……椛乃社長に聞いてもらえるのに」

 ちらりと椛乃社長へと視線を向ける。女性社員と談笑している椛乃社長は私がもっとも信頼出来る人。もしも相談するならやっぱり椛乃社長しかいない。

 それでも――今は難しそうだ。

 美味しいご飯を食べたばっかりなのに、身体がちょっと重い。心なしか頭もさっきより痛くなって来た。早めに風邪薬、飲んでおこう。

 そんなことを考えながら、コーヒー片手に席へと戻る。ようやく話題が恋バナから変わったことに気づけば、ふっと息が漏れた。
 
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